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栽培女神! ~理想郷を修復しよう~  作者: すずの木くろ


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125話:ロリババアアイドル

 その瞬間、プリシラちゃんの杖が触れている地面が盛り上がった。

 土が勢いよく形を変え、あっという間に巨大なかまどが出来上がる。

 土でできているとは思えないほどに重厚な造りで、上部は格子状になっていた。


「さて、火を焚くかの。皆の者、薪を集めてくるがよい」


 プリシラちゃんが杖を振ると、地面に置かれていた巨大魚の周囲に風が巻き起こった。

 巨大魚がふわりと浮かび、かまどの上に載る。


「す、すげえ……」


「あっという間にかまどが出来上がったのですよ……魔法というものは本当に便利ですね……」


 おー、と感心する俺とノルンちゃん。

 他の皆も、同じように驚きの声を漏らしている。

 ネイリーさんもすごい魔法使いだとは思うけど、プリシラちゃんは桁違いだ。

 この力、神にも匹敵するのではないかと思えてしまう。


「ふふん。この程度、造作もないことじゃ。私にかかれば、ちょちょいのちょいじゃ!」


 プリシラちゃんが誇らしげに、ぺたんこな胸を張る。

 俺は、これはもしや、と昔ネイリーさんの星占い魔法を初めて見た時のことを思い出した。


「マジですか! プリシラちゃん、すごい大魔法使いなんですね! かっこいいです!」


「だろう!? もっと褒めていいんだぞ!?」


 おだてる俺に、プリシラちゃんが頬を紅潮させて目を輝かせる。

 弟子と同じく、褒めてもらいたがり屋さんらしい。


「超かっこいい! 最高!」


「もっと! もっと言って!」


「よっ! 超絶天才魔法使い!」


「うひひ! もっと言ってくれえええ!」


「え、ええと。あとはコウジさんに任せて、薪を集めましょうか?」


 ノルンちゃんがやや引き気味に、ネイリーさんを見る。


「うん、そうしよ。お師匠様、褒められるの大好きだから」


 苦笑しながら言うネイリーさん。

 いや、お前もだよと思ったけど、俺はプリシラちゃんをおだてるので忙しいから突っ込まないでおこう。

 盛り上がる俺たちふたりを残して、皆はそそくさと薪集めに森へと入って行った。




 パチパチと燃えるかまどの火に巨大魚が炙られ、ジュウジュウといい音を立てている。 

 あれからプリシラちゃんは、同じようにしてかまどを追加で4つ作ってくれて、5匹の巨大魚すべてが焼かれている状況だ。

 そのたびに俺が褒め称えたので、彼女はものすごく上機嫌だ。

 フェルルさんはひととおり集落を見て回ったようで、満足げに魚が焼けるのを待っている。


「あちちっ。焼けたみたいだぞ」


 ナイフを魚に突き刺して焼け具合を確認したカルバンさんが、身を切り取った。

 すかさずチキちゃんが突き出した紙皿に、切り身を載せる。


「はい。ノルン様」


「ありがとうございます! これは美味しそうですね!」


 ノルンちゃんが紙皿を受け取り、ホクホク顔になる。

 カルバンさんが皮の内側の肉だけを取ってくれたので、とても食べやすそうだ。

 巨大なだけあって骨も極太のようだけど、現世で食べていた魚のような小骨がないのがありがたい。

 カルバンさんとチキちゃんの連係プレーで、皆に魚が行きわたる。

 モーラさんたち巨人組も集まって来ていて、彼女たちは巨大な葉っぱの上に魚を手掴みで移動させ、皆でわしわしと肉をむしりながら食べ始めた。

 まったく熱がる様子がないのだけど、手の皮が厚いのだろうか。

 いただきます、と俺たちは手を合わせ、割り箸で魚をいただく。

 味付けは醤油だ。


「おっ、なかなか美味い」


 一口咀嚼してみると、さっぱりとした味が口いっぱいに広がった。

 若干パサついているようにも感じるが、旨味が出ていてとても美味い。


「むぐむぐ……ずいぶんと淡泊な味わいですが、美味しいですね。鳥肉みたいな味です。カルバンさん、おかわりください!」


 一瞬で平らげたノルンちゃんが、カルバンさんに皿を突き出す。


「おう、どんどん食え。いくらでもあるぞ」


「いひひ。お腹いっぱいいただくのですよ」


 これ以上乗らないというくらいに盛られた焼き魚をノルンちゃんは受け取り、再びもっしゃもっしゃと食べ始めた。

 相変わらず、見ていて気持ちのいい食いっぷりだ。

 チキちゃんもほっぺをぱんぱんにして食べていて、自分でおかわりを切り取っている。


「コウジも、おかわりいる?」


「うん、もらおうかな。って、あっちはもうなくなりそうだ」


 巨人ウサンチュたちを見てみると、早くも4匹の魚がほとんど骨だけになっていた。

 見たところ数十人いるみたいだし、彼女たちにしてみれば大した量はないのだろう。


「んー、もっと獲ってくればよかったなぁ。恐竜の肉も、もうないし」


 モーラさんが指を舐めながらぼやく。

 捕まえた恐竜の肉も集落内にあったらしいのだけど、プリシラちゃんの魔法実験用のもの以外はすべて食べてしまったらしい。

 魔法実験用の肉は、少し小さくしたうえで別の時代に飛ばしてしまったとのことだ。

 俺たちがワサビ農園で見た大きな歯は、きっとそれだったのだろう。


「なら、今から小さくしてしまおうか」


 プリシラちゃんが立ち上がる。


「注目! 皆、その場から動かぬようにな!」


 プリシラちゃんはそう言うと、杖を両手で握ってくるくると回し始めた。


「きゃー! お師匠様、頑張ってー!」


 ネイリーさんが手拍子をしながら大声で応援する。

 杖を振りかざし、空一杯に無数の小ぶりな火球を発射して爆発させた。

 ドンドン、と花火のように火球が飛び散りる。

 おー、と俺たちが見惚れていると、ネイリーさんはちらりと俺たちを見た。

 口パクで、「ほら、一緒に!」と言っている。

 だんだん、プリシラちゃんがどんな人なのか分かってきた気がするぞ。

 プリシラちゃんは、謎のステップを踏みながら杖をくるくる回し続けている。

 俺は立ち上がり、両手を口元に添えて息を吸い込んだ。


「プリシラちゃーん! 頑張れー! ほら、ノルンちゃんたちも!」


「えっ!? あ、はい! プリシラちゃん頑張るのですよー!」


「が、頑張ってー!」


 ノルンちゃんとチキちゃんも手拍子をしながら応援する。

 俺はガチファンになったつもりで、プリシラちゃんに声援を送り続ける。

 学生時代に、秋葉原のメイドカフェで学んだ技術だ。

 メイドさんと一緒に、全身全霊でオムライスに「美味しくなあれ」の魔法をかけたのが懐かしい。


「お師匠様かわいー! こっち向いて―! ほら、ふたりも!」


 ノルンちゃんとチキちゃんに続いて黄色い声を上げたネイリーさんが、小声でカルバンさんとフェルルさんを急かす。


「か、かわいいぞー!」


「す、素敵ですー!」


 声援を受け、プリシラちゃんは得意げにステップを踏んでリズムを刻みながら、両手で器用に杖を回し続けた。

 空中に無数の水の球体が出現し、パンパン、と音を鳴らして飛び散る。

 頭上には光の玉が何個も現れ、地面から舞い上がった落ち葉がそれの周囲をモザイク状に取り囲んで回転し始めた。

 巨人ウサンチュたちは大盛り上がりで、手を振ったり声援を送っている。

 ネイリーさんは今度は風の魔法で辺り一帯につむじ風を起こした。

 地面から舞い上がった木の葉が10人ほどの人型になり、プリシラちゃんの後ろでバックダンサーよろしく踊り始める。

 俺たちはいったい、何を見せられているのだろうか。


「みんなー、応援ありがとー! とびきりの魔法、いっちゃうぞー!」


 プリシラちゃんが左手を横Vサインにして目元に添え、ばちっとポーズを決める。

 魔法で音が大きくされているのか、まるでマイクでしゃべっているような声量だ。


「小さくなーれ、小さくなーれ! えんりこげれげれらんぱっぱ!」


 ネイリーさんとおそろいの掛け声とともに、プリシラちゃんが杖を振るう。

 すると、モーラさんたちの体が光り輝いた。

 ぐぐっと、あっという間に彼女たちの体が俺たちと同じサイズにまで縮む。

 モーラさんたち元巨人たちが、ぎょっとした顔で自身の体を見た。


「皆の応援のおかげで上手くいったよ! ありがとー!」


 プリシラちゃんは眩しい笑顔で叫ぶと、大きく手を振った。

 ぼん、と彼女の足元から煙が発生し、その姿が掻き消える。

 ネイリーさん以外が、唖然とした顔になった。


「え。き、消え――」


「はあ、はあ……とまあ、こんなもんじゃろうか」


「うわあ!?」


 突然真横から響いた声に、俺は思いっきり仰け反った。


「い、いつの間に!?」


「ぜえ、ぜえ……け、煙に視線が集まっている間に、地面を潜って移動したのじゃ。見事だったじゃろ? おっとと」


 プリシラちゃんはそう言いながらよろめいた。

 俺は慌てて、彼女の腕を掴んで引き寄せる。


「あぶなっ、大丈夫ですか?」


「す、すまん。調子に乗って魔力を使いすぎてしまったようじゃ」


 プリシラちゃんが肩で息をしながら謝る。

 集落の巨人をすべて一気に小さくした魔法で、かなり消耗してしまったようだ。

 今まで散々すごい魔法を見せられてきたので、この人は魔力が無限大なのかと思っていたけど違うみたいだ。

 小さくなった元巨人たちは、わあわあと大騒ぎして喜んでいる。


「はあっ、はあっ、お師匠様、素敵でしたよ! かっこよかったです!」


 ネイリーさんが息を荒げながら駆け寄り、俺の腕の中にいるプリシラちゃんを褒め称える。


「いやぁ、面白いもん見せてもらったぜ。あとは皆で元の時代に帰るだけだな」


 カルバンさんが言うと、プリシラちゃんは申し訳なさそうな顔になった。


「すまん。魔力がからっぽになってしもうた。明日でもよいかの?」


「ああ、もちろんいいぜ。こんなにちっこいのに、大したもんだ」


 カルバンさんがプリシラちゃんの頭を撫でる。

 彼女は、にへら、と表情を崩して喜んでいる。

 本当に褒められるのが好きなんだな。


「んふふ。ところでお主、いい体してるのう」


「ん? そうかい?」


「うむ! やはり男というのは、がっしりした体つきがよい。顔も渋くて私好みじゃ。お主、彼女はおるのかの?」


「い、いや、彼女はいねぇが――」


 流し目を送るプリシラちゃんにカルバンさんが答えかけた時、少し離れた場所から、ズズン、と地響きが起こった。

 木々の間からティラノが顔を覗かせていて、俺たちを凝視している。

 そして、ニイッ、と口角を上げた。

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