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午前二時十七分

作者: aaaa

 イヤフォンから流れる音楽が止まったので、ゲームをいったん中止し、別の曲をかけようとパソコンを操作する。なんとなく右下の時計を見ると時刻は午前二時十七分だった。

 もうこんな時間かと思いながら、どの曲を次に聞こうか考える。ぼんやりとプレイリストをスクロールするが、これという曲を見つけられない。思考がほとんど停止した頭でなにを聴こうか考えていると、なぜこんな時間まで起きているのかという小さな疑問が湧いた。

 だが一瞬で頭から考えを消し、気にすることなくリストを下へ下へとスクロールする。すぐにリストの底にあたり、画面が動かなくなる。どの曲も聞きたいとまで思えなかったので、また頭から眺めることにした。

 すると、どうして起きているのだろうかという思いがまた浮かぶ。今度はそこで消えることなく、ぽつぽつと思考が進んでいく。

 まず次に浮かんだのは、安っぽい油の味だ。ファーストフードの揚げ物の衣に含まれる、じわっと溢れてくるあの不快な油の味を思い出した。こんな深夜までゲームをしていると、自分の頭が安っぽい油にゆっくり侵されて行くような気がするのだ。下の方から徐々に漬かり、機能を停止していく。思い浮かべただけで気分が悪くなる。

 もう考えることを辞めたいのに、止めることができない。今度は将来のことが頭に浮かぶ。きっとこんなことをしている僕はどうしようもない人間になるのだろう。すべきことをせず快楽の身に溺れた人間に。いや、あいつよりはマシじゃないかと、人を二、三人思い浮かべ比較した。

次の瞬間、激しく自分を嫌悪する。どうして他人を比べ、下を作る事しかできないのか。自分の将来は他人とは関係なくて、他人の成功などこれっぽっちも気にする必要はないのに。自分を強く殴りたいという衝動にすら陥ってしまう。

 早く別のことを考えたくて、適当に曲を選びゲームに戻る。

 ああ違う。こうすべきじゃないことは分ってるんだ。でもどうすればいいのか分からないんだ。考えたくないんだ。

 結局僕はどうすることも出来ずに、ゲームの再開ボタンをクリックした。

 ふと気づくと、頭の中でぐるぐる回っていた思考もいつのまにか終わっている。僕は安心して思考を殺し、ゲームを続けた。


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