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小さな戦士たち

作者:キュウ
3分程で読めるミニ短編です。
コーヒーやお茶を一杯飲む傍らにサッとどうぞ♪
 今日もまた戦いは終わり、彼等はやれやれとばかりに寝床へと向かう。
 しかし私は、その地上から奈落へと転落してもう誰の目にも留まらない。もはや自らの意思で体を動かすことなど到底できない。無能な兵士一人の命など誰も惜しまないのが無情な世の習わしだ。新米の私は瞬く間に忘れ去られ、おめおめと掃き溜めの肥やしとなろう。
 今や何もかもが懐かしい。まだ死んでしまったわけでもないのに、勝手に脳裏をよぎる景色を走馬燈などと呼んでしまう。
 ああ、ついさっきまで、みなと共に肩を並べていたというのに。
 それは一時間ほど前の景色だった。
 ――小さな息遣いだけが、小隊の隙間を縫って渡り歩く。張りつめた緊張感と、独特の身震いは、未だに慣れたものではない。千々に乱れる胸中のせめてもの慰みにと、戦を前にし、私は改めて隊員の顔を伺った。
 先頭を行くのは我等の隊長である。度重なる戦において最も長期間に渡り働き続けるのは他でもない彼なのだ。それにも関わらず、彼の気の緩んだ様子を誰も見たことが無いという。内に秘めた疲労も、物足りないくらいの歓喜も含めて、彼の冷血にして剛結なその雄姿に、私達は絶えず尊敬の眼差しを向ける。
 隊長の隣には、彼の右腕とも言うべき副隊長の姿がある。微かに伺える傷だらけの頬と鈍色の瞳が、私達には知る由もない彼だけの戦果を匂わせる。自らの命が擦り減っていくのを誰よりも身に染みて感じながら、日々隊長の傍らで戦い続けた歴戦の勇者。彼の存在無くして、同胞たちに路が拓かれることも無い。
 その時私の肩に手が置かれた。それが誰のものかはすぐに判った。皺に満ちたその手は紛れも無く補佐官のそれだ。若き時も老いし時も何ら変わり無く、隊長、副隊長と共に数多の戦場を生き抜いた最年長の猛者だ。私のような新米にも向ける分け隔てない柔らかな笑顔を真摯な面持ちへと変えて、彼は戦を前にした私の背中を静かに押してくれる。私達の雇い主が最も信頼を置くのが彼だろう。
 他にも数多くの仲間と洗練された武器が、今か今かと法螺の音を待ち続けている。どこか不快なこの静寂すらも、じきに否応無しに消え去ってしまう。そうなったら最後、全く同じ顔触れがこの場に揃うとも限らない。
 彼等は言う。「我等は運命を分かち合う。行き着く場所はみな同じ!」
 最後に私は視線を落とし、この暗い大地を見つめた。
 戦に必要なのは、屈強な戦士でも有能な指揮官でも、優れた武器でもない。彼等の物語を支えるこの大地に讃頌せよ。
 私もまた呟いた。「我等は運命を分かち合う。行き着く場所はみな同じ」
 その瞬間、遂に開戦を告げる仰々しい音が響き渡った。それからのことは本当に一瞬だった。
 様々な思いが駆け巡る。どうして私はこの身に生まれたのだろう、どうして私はこんなところに無様に転がっているのだろう。どうして私はこんなにも無力でちっぽけなのだろう。
 そう悲嘆に暮れているときだった。私は、優しい笑顔の新たな雇い主と、出逢ったのだった。
 御仁の言葉は今でも忘れない。私は一生ついていくと決心した。たとえそれが独りよがりな決意だったのだとしても、私は決して後悔などしないだろう。
 彼はこう言った。
「あれ。この鉛筆キャップまだ使えそうだぞ」
お疲れ様でした♪
HP(→http://kyunote.blog.fc2.com/)にて
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