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すみません結構かかってしまいました。納得していない部分もあるので改稿するはずです。

次回はしばらくかかります


 「なんじゃこりゃあああああああああっ!」


 妙に可愛らしい叫び声が広場を掛け巡っていった。

 周りには男性プレイヤーや女性プレイヤーが入り交じり賑わっている。

 確かにこのゲームは凄い、遥花が俺にしつこく言って来ただけあって現実のようにしか見えない。ただ違うと言えるのは、視界の左上に自分の安易的なステータスが表示され、プレイヤーの頭上で縦長の正四面体状のカーソルが浮遊している事か。

 手を握る感触は勿論、周りに見える街並みにその絶えずに聞こえる人々の喧騒、空気の匂いも口の中の唾液までもがあるとはっきりと分かる。

 だが、この状況はなんだ?

 俺が視線を下に向けると、そこにあってはならない二つの膨らみが谷間を作っている。

 それを包んでいるのが水着のような物だが、それにしては独特なコスチューム。

 髪の色や身長は設定した通りだが、腰まで届くサラリとした黒髪、出ているところは出ていて、引き締まるところはきっちりと引き締まっている。

 言ってしまうと俺は女になっていた。


 「って、どうしてこうなった!」


 俺は間違いなく男だ、決して女などではないなどではない。確か外見撮影で異性にはなれない筈では?『XZERTA』の説明書には「十万人のデータを元に性別を完璧に判断する最新の技術を搭載!」と、太鼓判を押して記載されていた筈だ。

 そこで俺は信じたくもない可能性が頭に浮かんだ。

 (もしかして俺の顔が女みたいだからか······)

 さすがに十万人ものデータを前にしながら誤認という事はないだろう······か······?

 そう言い切りたいが、言い切れない自分が悲しい。

 俺がプチパニックになりながら思考していると、周囲が騒がしくなっていることに気がついた。

 ん?なんか騒がしいな、なんかあったんか?

 何事かと俺は周囲に気を向けると、俺の事を見て顔を赤くしている人や鼻の下を伸ばしている人などそれぞれ顔をこちらに向けて何やら話しているようだ。

 「なにあの子、めちゃくちゃ可愛いんだけど······ヒソヒソ」

 「大胆なコスチュームね······ヒソヒソ」

 ······っ!?忘れてた!俺今めちゃくちゃ恥ずかしい格好しているんだった!

 俺は急にこの場にいるのが恥ずかしくなり、そのまま胸の辺りを腕で覆いしゃがみ込む。

 咄嗟のことで何故か女みたいな動きになってしまった。なぜだろう?

 先ほどから自分が女になっている事ばかり考えて、迂闊にも自分の服装までは頭が回らなかったようだ。見直すと結構際どいデザインだ。 

 みるみる内に俺を取り囲むように野次馬が増えていく。

 ヤバい!めちゃくちゃ恥ずかしい!

 この格好は男の俺でも恥ずかしいものがあり、この場にいるのも耐えられそうにない。

俺はとにかくこの場を離れようと素早く立ち上がると、人垣の中に飛び込こむ。

 幸いことに、俺が注目を浴びてから間もないようで人の数はそれほど多くはなく、直ぐに人垣を抜けだす事に成功した。


 ★☆★☆★


 その後俺は醜態をさらしながら街中を無我夢中で走り、人通りが少なそうな路地裏へと駆け込んだ。

 何一つない細い道、薄暗く普通の人なら絶対に入り込もうとはしないだろう薄気味悪い場所だ。

 俺はまず息を整えて、壁に寄りかかりながらゆっくりと座る。

 直後、俺が座るのを見計らったかのようなタイミングで、遥花から音声チャット通信は入った。


 「お兄ちゃーん、今どこー?待っても全く来ないんだけどー?」


 俺が通信をオンにすると、頭に直接遥花らしいまぬけな声が聞こえてきた。


 「遥花すまん、俺もよくわからないんだがちょっと俺の来てくれないか?どこかの路地裏なんだが、道が分からないというのもあるがここから出たくないんだ」

 「出たくないってどういう意味なの?」

 「それは俺のところに来れば直ぐにわかるだから来てくれ」

 「来てって言われてもどこなの?理由は後で聞くとして、それだったら近くに目印になりそうな建物がないか見て。当てもなく探すのは無理だよ」


 遥花は「広過ぎるんだし」と付け足す。

 確かにこの世界は広いのだろう。説明書には街の面積は東京ドーム50個分はあるそうだ。広い過ぎると思うが、ここに一度に1000万人全員がログインすることはないだろうが最高瞬間ログイン数は100万人超える事はあるというので納得だ。

 俺は言われたとうりその場を立ち上がり路地に顔を出す。今は人が点々といるが気にするほどではない、そのまま路地に出て周りを見渡す。

 ここは先ほどの大広場から差ほど離れてはいないのか、目印になる建物は直ぐ見つかった。


 「あ、それなら近くに【鉄ちゃんの酒場】っていうのがあるな、そこの近くの路地裏だ、路地に顔出しとくから見つけたら来てくれ」

 「そこだったらそんなに離れてないじゃん、十分くらいで着くと思うからそこにいて、事情はわからないけどまずはそっちに行くよ」


 遥花はそう言うと一方的に通信を切ってしまった。もうこちらに向かっているのだろう、ありがたいことこの上ない。

 俺は安堵し、そのまま路地裏から体を出す形で座り込み目を瞑った。



 それからどのくらい経っただろう、俺に向かって来る足音が聞こえて来た。

 (遥花か?随分早いな、もう少し遅く着くと思ったのに)

 遥花が来たと思い目を開けそちらに顔を向ける。


 「早かったなはる······か······?」


 が、そこにいたのは遥花ではなく感じの悪い三人組の男達だった。

 俺は嫌な予感がし色々な意味で背筋が震える。

 それも仕方ないだろう精神が男の俺に色目を使い、その男達は下卑た笑みを浮かべこちらに迫ってきているのだから。

 ソッチ系の趣味があったらまだしも、生憎俺にはそういう趣味はない。

 それに男は武器を所持しているのに対し、俺はなにも持ち合わせていない。これでは相手から逃げる事も儘ならないだろう。

 痛みを一切感じないならまだしも、痛いは一定以上にならないようだが、それでも痛いものは痛いらしい。嫌じゃない筈がない。


 「ねーねー君?俺らと一緒に遊ばない?良いアイテムとか一杯出すからさー」

 「すみません私は人を待っているので······」


 俺は極力男だと感ずかれないように女の口調にする。

 小中学と女子の真似された事が幸いしたのか悟られている様子はない。

 こんなところで活躍するとは、嬉しいのやら悲しいやら······


 「いいよそんこと、そんな事ほっといて俺らと遊ぼぜー」

 「いえ、ですから私は結構ですので······」


 俺はやりたくもない女の口調を、顔をひきつらせるながらする。

 

 「だからさーそういうの良いから俺達と一緒に遊ぼってんだよー」

 「本当に良いんです遠慮します」

 「ちっ、おいサエジマ、コイツ無理やり連れて行かないと絶対来ないぜ」

 「へへッ確かにな、こいつならちょっと遊んだだけで堕ちそうだ」

 「ああ、確かにな、コイツ武器も持ってないしちょうど良い、おい!コイツ連れて帰る、引きずってでも連れて帰るぞ!」


 堕ちるってなんだよ、堕ちるって。俺は意味深な単語を耳にし鳥肌が立つのを感じた。

 俺が拒否してもなかなか諦めてくれない男達は、痺れを切らしたのか俺の腕を力ずくで掴み引っ張ってきた。


 「や、止めて下さ······っ!?」


 俺が手を振りほどこうとした瞬間、男の一人が俺を痛めつけようとする為か腕を振り上げた。

 俺は瞬間的に頭を庇いながら目を瞑る。


 「······」

 

 しかし数秒経っても衝撃が来なかった。

 その代わりパン!という乾いた音が辺りに響いた。

 変だと思い顔を上げるとそこには、薄暗い路地裏に全くそぐわない可憐な少女が、今にも腕を振り下ろそうとしている男の腕を掴みそれを阻止している。


 「あなた大丈夫?」


 体には初心者用の軽装を身に付けている。

 鎧から伸びるしなやかな肢体は見とれてしまう程に美しい。

 可憐で繊細な体に不釣り合いな鎧は、自己主張を忘れていない胸を抑え込んでいる。

 腰まで届くスラリと伸びた銀髪は、達人が研ぐ銀色に輝く剣にも劣らない。

 十人いたら十人全員が振り向いてしまうような美少女、端正な顔立ちだが歳は自分と同じくらいと童顔である。

 下から覗いた瞳は快晴の空を思い出す空色。

 少女は俺の腕を掴んでいた男の腕を払い除ける。


 「あなた達!この腕で今何をしようとしたのかしら!」


 しかし、男達は臆した様子はなくヘラヘラと笑っていて、少女の怒声を鼻であしらった。

 相変わらず下卑た笑みで少女を見ている。


 「なに?君も一緒に俺らと遊びたいの?いいぜ大歓迎だぜ」


 少女はめんどくさそうな顔をし、男を無視すると俺に視線を向ける。


 「あなた大丈夫?あなたもあなたで悪いのよ、こんな所にいたらあんな奴らに絡まれるのも仕方ないわ。しかもそのコスチューム、誘っているようにしか見えないわよ」

 「······」


 少女は視線を三人組に戻し数瞬相手を睨んだが、次の瞬間俺の手を掴み引っ張りながら脇の路地裏へと駆けた。


 「付いてきてっ!!」

 「えっでも······」

 「いいから、ほら早く!」


 俺は遥花とここで待ち合わせしているのでここを極力離れたくないのだが、理由が理由なだけに俺は少女に手を引かれながらも付いて行くことにした。

 三人組の男達は俺達を逃がすまいと追って来る。レベルが俺達よりもだいぶ上なのだろう、徐々に距離が縮まっていく。

 しかし、路地裏だけに道が複雑な為、俺達はそれを利用し三人組からの追跡をかろうじて逃れる。


 「こっちよ!」


 曲がり角で少女を見失ったかと思った瞬間、突如少女は腕を強引に引っ張り俺を引き寄せた。

 俺は体勢を崩しながらも人が一人通れるかどうかの狭い道に入る。

 どうやら三人組は俺達を見失ったようで、悪態をつきながらも走って通り過ぎて行ったようだ。

 俺は一度息を大きく吸い少女に声をかける。


 「なあ?どうして助けてくれたんだ?」


 そう、これは先ほどからずっと気になっていた事である。わざわざ面倒事に巻き込まれるような事はしなくて良い筈だ。そのお陰で助かったのだから感謝はしているが。


 少女は大きくため息をすると、露骨にめんどくさいというような顔をし、しかし少し照れながら。


 「私はたまたまあそこを通りかかっただけ、助ける気は毛頭なかったわ。ただ私もそう言う経験があってあなたのことが見てないふりが出来なかっただけ、他意はないわ」


 彼女は「わかった!?」と付け足すとそのまま顔を背ける腕を組んだ。

 しかし彼女は何か思い出したのか再び俺の方を向くと俺の顔をじっと見詰め、


 「あなた女よね?さっき男みたいな喋り方だったような······?」


 彼女は小首を傾げながら聞いてきた。

 (······っ!?やってしまった!なにやってんだ俺!)

 俺は心の中で毒づくと汗を滝のように流す。


 「なにか怪しいわね······」

 「いや······だから······その······ちょっ、ちょっと暑いなーって······」

 「この世界今、冬よ」


 彼女はジト目になり俺にジリジリと迫ってくる。

 俺は言葉を濁すがますます疑いは深くなるばかりだ。

 今俺は先ほど彼女から引っ張られたまま腕を捕まれたままの状態だ、こんな狭い場所で逃げ出す事は困難極まりない。

 俺は年貢の納め時なのかと心の中で諦めかけていると、


 (お兄ちゃんどこにいるの!どこにもいないよ!)


 ······忘れてたー!!完全に忘れてたー!

 遥花からの怒りの音声チャットが頭の中に直接響いてきた。大声というオマケ付きで······

 逃げ出す前はきちんと覚えていたのに逃げる事に夢中で完全に忘れていた。

 今回ばかりは俺が悪い、俺は顔が目に見えて真っ青になる。

 勿論音声チャットは他人には聞こえないので、目の前の彼女は突然顔色を変えた俺を不思議そうに見ている。

 しかしこれは話題を変える為のチャンスでもある。この期を逃してはたまったものではない。


 「すっすみません!私、今しがたチャットが音声チャットが来まして用事が出来ましたのっ、先ほどはありがとうございます。では良い冒険を――······」


 俺はそそくさとこの場を立ち去ろうとさりげなく腕を解くと、カニ歩きになりこの細い道を抜け出そうとする。


 「なに話反らそうとしてんのよ、だったら私も付いて行くわ」


 

 ······は?いやいやいや······そんなことしたら俺の計画は成功しないじゃないか。

 俺は早くも自分の計画が頓挫してしまう事態に焦る。

 しかし彼女は強引にでも付いてくるようだ、掴む手を一層強くしてくる。正直かなり痛いので止めて頂きたい。


 「私も連れて行きなさい!付いて行くだけなんだから良いでしょ!」


 確かに付いて行くだけなら問題ない。普通はだが。

 しかし彼女は絶対に付いて行くと心に誓ったようだ。興味が尽きないらしい、完全に行く気満々だ。


 「はぁ······わかったよ、勝手にしてくれ······」


 少女は可愛らしくガッツポーズをとる。

 俺はもう諦めるしかないようなので、この事は先ほどの場所に戻る途中にでも考えるとにし、彼女の同行をなし崩し的に許可した。

 俺は先が思いやられると天を仰ぎながらため息をつくのだった。

 


 


 


 

 


 

 

 


 



 

 



 

 

 





 

次回もよろしくお願いします。すみません次回はしばらくかかります

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