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田中省三 70歳 美佐子

作者: 鬼瓦熊吉

 「美佐子今帰ったぞ」」


 「お帰りなさい。お疲れ様です」

 

 「ニャーン」


 「おお、リリ子もお出迎えか。いつもありがとね」


 「私にありがとうはないのですか」


 「何だそれは。今日は刺身にしたからな」


 「あなたは生ものは鮮度が命とか言って私がさばいたアジとかイワシくらいしか食べなかったではないですか。さすがの私もマグロはさばけませんから」


 「だけどお前はマグロが好きではないか。スーパーだがなかなかいい中トロだぞ。後はおすましでもあればいい」


 「そんなわけにはいきませんよ。何か作りますから」


 「吸い物はインスタントでもいいんだぞ」


 何だか気持ち悪いんだけれど。


 「優しいところもあるんですね。見合いでしたが、それなりでしたね」


 「あの見合いはひどかった。お前は晴れ着が全く似合っていなかった。だいたい地味な顔立ちなのにピンクだのオレンジだの満載の振袖で、俺はチンドン屋かと思ったぞ。馬子にも衣装と言う格言が通用しない女がいることを初めて知った」」


 「ななな、何を言うんですが」


 「だけどなあ、行きがかり上付き合い始めたではないか」


 「行きがかり上・・・」


 「しかしお前の家に遊びに行った時エプロンをしている姿がまことによくてなあ。しかも買ったばかりエプロンではなく洗濯したてでノリがピリッと聞いているところがまたよかった」


「わかりましたよ。すみませんね振袖が似合わなくて」


「あれは壊滅的な光景だったな。喪服をの方がまだマシだと思ったくらいだ」


「ウギャー。どうせ私は洗いざらしのエプロンが一番似合う女ですよ。そんなにブスだと思ったなら嫁にしなければよかったではないですか」


「俺はブスだなんて一言も言っていないぞ。大体馬子にも衣装のあの女たちが今同じ格好をしたらどうなるんだ。チンドン屋ならまだいいけれど、へたをすれば認知症と間違えられて警察沙汰だぞ。

 だけどお前は今でも綺麗だし、年よりずっと若く見えるではないか。妖怪みたいのが多いのだから」


 いつから中条きよしになったのよ。

 

                   完






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