98話 試されてたの
春になってヤマノナカ村にやってきた。
あんなこと言ってたから、カイに行ったらダメって言われるかと思ってたけど
「チバ様を見ないと」
ってカイが一緒に行くことになった。
チバ様いないけどね。
ヤマノナカ村について、村の人にカイが
「チバ様にお会いしたい」
って言った時はビックリしちゃった。
いないよ!チバ様。
そしたら村の人が誰か連れてきた。
「ワシがチーバじゃが、何か用け?」
おおう、まさかのチーバ様いたよ。
オン歳120才超えしてそうな、ツルピカおじいちゃん。
「俺、リーナの趣味がよくわかんない」
って言ってるけど、チーバ様じゃないよ!
私が言ってたの、チバ様だよ!私の趣味と違うよ!
シワのなかに目が埋まってて、見えてるんだか見えてないんだかのチーバ様。
一瞬キランってシワの中が光ったと思ったら、指の長さ程のナイフが結界に弾かれた。
カイに一応結界発動しとけって言われて、しといてよかったよ。こわ〜ぃ。
カイは剣で受けてるね。すごいよ。
んでもってむっちゃ黒いの出てるよ。
「試すなら、俺だけでじゅ〜う〜ぶ〜んだるぉおがあぁ!」
って舌巻いて声出してるよ。キレてるカイってはじめてみたかも。
「試されてたの?」
「殺気は無かったからな」
カイからは確かな殺気を感じます、はい。
「もし殺気があったら、今頃村ごと潰してる」
今度は静かにお怒りです、はい。
私とチーバ様抱き合ってプルプルです。
「な、なんかごめんよ。嬢ちゃん」
「だ、大丈夫ですよ、私は」
私は、ね!
「ウワサには聞いとったからね。腕試ししたくなったんじゃよ。坊も嬢も」
ふ〜、と息を吐くとカイから黒いのなくなった。
「で、なんでリーナは好きなの?」
チーバ様から私をベリベリっと引き剝がしながら聞いてきたカイに、なんて言ったらいいのかな。
この空気の中、違いますとは言いにくいぞ。
前世のことなんかわかるわけないしなあ。
う〜む。
共通点、共通点。
あ、あった!
「普段は強そうなとこ見せないのに、いざって時には戦ってくれたり強かったりするところ、かな?」
あれ?でもそれって
「カイもだね」
ふふふって笑ってカイみたら、真っ赤になった。
うん、カイのこと好きだもんね。




