84話 3枚おろし
少年、シャークっていうんだって。
なんか懐かれた。
「姉ちゃん、すごいんだな〜」
「私がすごいんじゃないよ。この竿がすごいんだよ」
ふふん、会心の出来なのだ。
「シャークにも1本あげるよ」
「本当?ありがとう!僕、あっちで姉ちゃんより大きいの釣ってくる!」
おお、行ってこい、行ってこい。
「ところでリーナ、その手に持ってる紐はなんだい?」
「これ?さっき仕掛けたウネギとる罠だよ」
…なんだかイヤな予感がする、
ボソって駅員、何かつぶやいてる。
網がないから、パイプの両側どうやっておさえようかな。
一層のこと、結界でパイプ覆っちゃおうかな。そしたら逃げられないもんね。
よ〜し、結界網発動!引っ張るよ!
「ん〜しょ、ん〜しょ」
お、重いな。消雪パイプ5本しか仕掛けてないはずなんだけど。結界の中に海水いっぱい入っちゃったのかな。
「それ、引きあげればいいの?」
「うん、思ってたよりも重いんだよ」
カイに紐を渡すと、一気にセイヤって引きあげて、仕掛けが砂浜に飛んでった。柔道の一本背負いみたいだったよ。
…飛んでった仕掛け、黒いウネウネの塊に見えるの、私だけでしょうか?
なんで、ウネギ、結界に食いついてるの?!
ウネギ、怖いんですけど。
『リーナの魔力おいしいから噛みついたんじゃない?』
なに、それ!海の中で結界張ったらウネギに囲まれるってこと?!怖いんですけど!
「姉ちゃんすごいな〜、大漁だ〜」
他の村の人が遠巻きにする中、近づいてきてくれるシャークって優しいよね。
さみしくなんかないよ!泣いてなんかいないよ!
「そうだ。シャークさっきウネギ欲しがってたでしよ?捌いてあげるよ」
カイセン村のウネギは背開きかな?腹開きかな?
「シャーク、見本見せて」
「いいよ〜」
ふむ、3枚おろしであったか。
私も参戦するぜよ!
指に結界纏わせて、包丁の代わりにする。ウネギの歯は鈎の代わりになるから回収したいな。
頭、落としちゃうか。
素手でどんどん捌いていく。あっという間に終わったね。
ようし、落とした頭から歯もバンバン抜いていこ~。大量、大量、ふふふ~ふふ~ん。
あ、そういえばカーブリもあった。
私の手を広げたくらいあるんだよ。150シンチミートルくらいかな。大きいよね。
「カイ、頭落として〜」
カイが空中にカーブリ放ったと思ったら、頭落としてババッと3枚にしちゃった。剣筋見えなかったわ〜。
あれ?シャークのアゴむっちゃ落ちてるよ?
私とカイ交互に見てる。
おおう、
リュックの中からナイフ出してやればよかったな〜と今気がつきました。




