76話 山ですな
雪が積もって冬ごもり。
フンドシ1番隊から5番隊までが、交代で線路の伸びた村々の整備をしてくれている。
私はリンジー先生のお手伝い。
マギラワシ町が大きくなって、先生だけでは税のアレコレを処理できなくなった。
マギラワシ町では卒業する子が何人かいて、そのままリンジー先生のところに就職したから普段は人手があるのだけど、1年の総まとめをする冬の間だけどうしても足りないのだ。
冬の間にまとめて、春からの予定を全員にお知らせしないといけないからね。
「リーナさんはこちらをお願いしますね」
ドン、と置かれた書類の数、おかしくないかな。
他の子たち、決してこちらを見ない。下手につっこんで自分に回ってきても困るからな。
そして、私からも見ない。いや、見えない。
…書類の数おかしくないかな?向こう側見えないとかさ。
まあ、仕方ないか。
ソロバンを出して計算をはじめる。
このソロバン、コウロ村で作って貰ったの。冬がはじまるな〜って思って、ダメ元で
「できる?」
って聞いたら、次の日にはできてた。
あ、自分で作る予定だった物とは違うよ。
それはもうちょっと秘密なのだ。ふふっ。
私、前世で段持ちだったんだ〜。
習ってるときは早くやめたいな〜って思ってたけど、まさか来世で役に立つなんて、あの時には考えてもいなかったな〜。
みるみる山を崩していくと、やっと向こう側の景色が見えるようになった。
あれ?みんなどうした?
静止画みたいに時が止まってるよ。
急いでるんじゃなかったのかな?
手が止まってるよ。
うん、まず目と口、1回閉じようか。




