57話 sideカンダイ
俺はカンダイ、カイ様の私兵だ。
もともとは違う領地に仕えていたが、マギラワシ町に紛れ込もうとして、捕らえられた。
いつ攻撃を受けたのかまったくわからなかった。
その後尋問を受け、なぜか全てを暴露してしまった。それこそ、受けた命令の内容や家族構成、自身の性癖までペラペラずっと喋ってた。
もうカイ様に逆らおうなんて、これっぽっちも思えない。ここに集まってる他の奴等もそうだろう。
カイ様は全員分、一言一句間違えなく覚えてる。
そんな気がする。
「ネバリーたちと協力して、森の住民たちに避難するように通達してくれ。それから、木や鉱物などできる限り森から移しておくように」
カイ様の命令通り住民たちを探す。
『あ、いたいた1匹目』
…え?人じゃないの?
どうみてもスッパイダラだよね。…住民なの?
『あ、あっちにもいた』
こっちはハニトロンだよな。
『カイが新しい住処作るから一旦移ってほしいって。グッドラッグの畑でいい?』
『わかった〜』
飛んでった。
「え〜と、住民って人じゃないの?」
『森の中に人間なんかいるわけないじゃん。いたらあやしいってカイに刺されちゃうよ』
へ〜…その情報もっと早く知りたかったな…
そしたら街道から入ってきたよね…
あっちの方では足がガクガク、目や鼻などあらゆる穴から何かが出ている奴等が、限界超えて不眠不休で木材運んでる。
『カイ〜、終わったよ〜』
カイ様がやってきた。
木など、1本も残らず運び終わった山をグルリと見渡すと
「ん、いい働きだな」
って。 なんだか、そのひとことで報われる。泣き出した奴もいる。
「少し危険だから、あそこまで下がってろ」
100ミートルほどさがる。
するとカイ様が剣を抜くのと同時に、黒い炎が噴き出した。腰を落とし、構えたと思ったら一振り。
次の瞬間山が燃えて溶け、なくなってた。
身体中震えが止まらない。間違いなく歴史的瞬間に立合った俺たち。
人間離れしたカイ様の勇姿。おステキです、て誰かつぶやいた。
言われた期日いっぱいいっぱい働いた俺たちは、最後にとっておきのご褒美を貰ったのだ。




