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第6話 RPGもびっくりな報酬

 今回は少し短めです。それも中途半端……。

 冒険者の心得として、まず大切なことは如何に自らの命を守れるかである。


 そのために必要なことは、ひとえに状況を理解し、それをどう打破するかを考えることだ。


 自分達じゃあ倒すことの出来ない相手に遭遇した場合は可及的速やかに撤退し、対策をたて、改めてのぞんだり、または他パーティーに任せるのがベストだ。


 それでも状況が状況であり、撤退出来ない場合や、どうしてもやらなければならない場合がある。


 となるとやはり、結局1番大切なことは如何に強くなるか、これに限る……って、言ってること変わってんじゃねぇか。あ?黙って聞けって、……はぁー、わかったわかった。


 で、その強さを表すのがギルドランクであり、その強さを考慮して、ギルドの職員は冒険者に依頼を紹介する。


 ギルドランクは上から順に、SSS、SS、S+、S、A、B、C、D、E、F、G、とわけられる。ああもう、わかったよ。お前はSランクなのな。はいはいわかったから。


 SランクだけS+という区分があるのは、S以上のランクの区分は極端に難しく、はっきり言ってSS以上はほぼほぼ人外であり、S+が人としての最高区分であるからであると。


 じゃあ、おっさんは人間でも上から2番目ってことか。……なんだよ、そう睨むなよ。


 でもって、俺はCランク。冒険者の中でいえば中級者の位置にあり、それでもCともなればほぼそこで壁を見るやつがいる。


 要は成長の打ち止め。どんな奴でも、努力じゃ才能にはほとんど勝てない訳か。だから、Aランク以上の人間はかなり腕が立つし、Sランクなんていくと、固有魔法の保有者が必然的に多くなる。


 ん?固有魔法?……ああ、いや続けてくれ。


 で、ランクがS+の奴とSの奴の違いはそこにあると言っても過言ではないと。


 まぁ、大抵の高ランク冒険者は東西南北にある各国や、この人間国の中心にある王都にいる。だから、おっさんみたいな奴は珍しいと。へー。


 じゃあ、ここみたいな街が危険になった場合はどうするかっていうと、それは最初に言ったように、状況を理解する。つまりは、周辺環境の変化を察知する能力が必要になると。


 ああ、おっさんがこの街にいるのもそこら辺の理由が大きい訳か。


 ……それじゃあ、突発的な事象に対処出来なくないかね?……いいや、こっちの話だ。


 まぁ、冒険者ってのは大体こんなものなのな?


 結局、死なない様に頑張って、ランク上げて、世のため、国のため、街のため、人のために働くのが冒険者であり、冒険者ってのはそんなものだというわけか。


 以上が、おっさん冒険者ガレスによる冒険者のイロハである。


 ◇◆◇


 まぁ、なんというかテンプレだなぁというのが第1の感想だった。


 「なるほどね。まぁ、理解したよ」


 「ま、あとのことはユーナが話してくれるだろ。それでも残ってるのは諸注意くらいで、残りは全部俺が言ったがな!」


 「ああ、うん」


 今のこと全部記憶から洗い流して、改めてユーナさんの清廉なボイスで補完することにするかな。


 そんなこんなでレクチャーが終わり暇になる。ステーキに関しては話している最中に食べ終えてしまった。


 話している最中にテリアが汲んできてくれた氷水の中の余った氷をカランカランと鳴らしていると、


 「おう、坊主悪いな。探し物に手間取っちまってな」


 と言って、バリスのおっさんが登場した。


 「おお、バリス。久しぶりだな。東国はどうだったよ」


 「ガレスか。なに、商談は無事に終了したよ。その上で、色んな拾い物をしたがな」


 バリスは俺を見ながらそう言った。


 はいはい、拾い物ね。


 「ああ、そうだ。坊主に、これをやろう」


 そう言ってバリスは俺に結構膨らんだ麻袋を手渡してくる。


 「今回の報酬だ。まぁ、お前はまだ正式に冒険者になっていないから個人によるギルドを媒介としない依頼になるがな」


 依頼なんて受けた覚えはないがな。


 「そうか、なら貰っておく」


 中身を見ると、金、銀、銅色、の硬貨が入っているのがわかった。よく見ると、金銀貨には大小の区分があるらしく、それが混ざって少々判別するのが面倒になっていた。


 やっぱり、こういうのは性格がでるよな。


 しみじみ思う。


 「ああ、一応言っておくと────」


 「銅貨1枚1エルム、そこから小銀貨大銀貨、小金貨大金貨の順に10倍ずつ価値が高くなる、だろ?」


 「お、おう。知ってたか」


 食堂のカウンターでお金を払ってる人を遠目で見てたしな。


 それとまぁ、そんな態度から、俺を異世界の人間だと認識している事ぐらいなら、生憎俺なら造作もなくわかる。


 「でも、だいぶ多いな」


 おそらくは10万エルム以上はあるだろう。

ステーキの値段から考えて、物価は元いた世界とそんな変わらないだろうし、そう考えるとゴブリン10匹程度で随分と色付けてくれたものだ。


 RPGもびっくりの報酬だよ。


 「じゃあまぁ、とりあえずこの報酬で服でも買うかな。どうにも俺の見た目は人目をひくらしいし」


 ガレスをチラリと見やると、ガレスは小さく肩を竦めた。


 「あんたら、何か話すことがあるんだろ?じゃあ、俺は席を外すよ。ギルドカードもまだ出来ないだろうしな。あとこれ、推薦状は返しとくよ」


 そう言って、バリスの名前の書かれた紙を返す。もう必要はないだろうし。


 それに、さっさと今日泊まる宿も見つけなければならない。まぁ、ここに来るまでに宿は結構あったから、簡単に見つかるだろう。


 あと、単純に街を探索したいしな。


 「……あー、参考までに聞くが、なんで俺がガレスに用があると思ったんだ?」


 俺は立ち上がり背を向けて、


 「見りゃわかる」


 そう告げて、冒険者ギルドを後にした。


 ◇◆◇


 「ったく、おっかねぇ奴だ」


 ユウが冒険者ギルドから出た後、バリス・グリエールはそう呟く。


 「お前の推薦状を持ってるからどんな奴かと思えば、とんだ化物を連れてきやがって」


 その呟きを聞いたガレス、ガレス・ギルバートは皮肉げに言った。


 「俺達があいつをこの世界の人間じゃないと判断していることも筒抜けみたいだしな。ずば抜けた観察力だ。それに、あの掴みどころのねぇあの態度。ありゃ、どんな質問投げかけてもすんなり躱されるだろうな」


 そう言うガレスの口には笑みが浮かんでいた。


 「まぁ、俺もあいつのあの底の見えない様子と、ゴブリン10体を瞬殺したところを見て判断したんだがな。まさか、ここまでとは」


 対するバリスの表情には呆れにも似た笑いが浮かんでいる。


 「ゴブリン?一体どこで?」


 「ハインの森だ。信じられないだろうがな」


 一応説明しておくと、ハインの森はユウがゴブリン10体を蹂躙した所であり、軽い火事を起こしかけた場所である。


 「あの森からは、そもそも魔物が出てくることはないだろ。少なくとも、街道側なんて特にだ」


 「そうだ。それをお前に相談しに来たんだよ」


 バリスがそう言うと、ガレスは立ち上がる。


 「場所を変えるか」


 そう言って2人は歩いていった。


 ◇◆◇


 「で、続けるが普段魔物なんざそう出てこないはずのハインの森。そこからゴブリンが10体出てきたと、お前はそう言う訳だ」


 「疑ってんのか?」


 「いいや。だが、ほとんど前例が無いからな」


 「だが、無いわけじゃないだろ」


 バリスがそう言うと、ガレスは苦虫を噛み潰したような顔をした。


 「侵攻の夜か」


 ガレスが言った『侵攻の夜』という単語にバリスは頷く。


 「だとしたら、早急に王都に連絡を入れなきゃいけねぇな」


 「ああ、少なくとも今の街の戦力であれが起これば手がつけられねぇ。何せ、森の魔物が一斉に街に向けて侵攻してくる訳だからな。それも、2箇所(・・・)から」


 「となると、北東のハインの森の監視もしつつ、南西のロウンの森の監視もしなきゃだな。ロウンの森からもそう言った斥候みたいなのが現れかねない」


 ここで、この街、グリエラの街に周辺の地理についての補足をしておこう。


 グリエラの街の東、つまりはユウがいた場所だが、そこにはただ広い草原以外は何も存在しない。だが、そして街に近づくと、街の北東から北方向に向かって広がるハインの森が見えてくる。つまり、ゴブリンが現れた場所はハインの森の南端であるということだ。


 ロウンの森は街の南西に位置している、ハインの森を縮小したような所であり、ハインの森に比べて街に近づく魔物の出現数もあまり多くはない。


 また、これも補足だが、街の北から西にかけては畑が広がっていて、この街の冒険者はハインの森、それからロウンの森から魔物が作物に手を出さないように、依頼として森の中に入り、魔物を狩るのだ。


 ただ、ハインの森の奥、北の方向には多くの魔物が存在しており、それがグリエラの街の悩みの種になっているという訳だ。


 当然、ロウンの森も同様に北とは逆の南の方向に多くの魔物が存在している。


 そして、『侵攻の夜』とはその魔物の大群が一気にグリエラの街を攻めてきたという、過去の災害のことなののであった。


 「はぁ、全く悩みの種が増えたぞ」


 「まるで元から何か悩み事があったかのような言い方だな」


 皮肉った言い方のバリス。


 「そりゃそうだ。俺は一応(・・)この街最高のSランク冒険者だ。悩みなんざ腐るほどある」


 一応、という言葉を強調してガレスがそれに応ずる。


 「どうだかな」


 2人の話は続く。


 バリスは、じゃあ、と一間置いてこう言った。


 「お前の悩みの種ってのには、あいつも含まれてんのか?」


 含みを持って告げられた、『あいつ』の言葉に、


 「ああ、だがな。それは解消されつつあるさ」


 期待の新人のお陰でな。


 ガレスは先程とは違った笑みを浮かべて、そう言った。


 おっさん達の話は続く。

 本当に、解説回としか言えない話。


 次話投稿は、その前に若干この話を調整してからになると思います。あ、普通に明日出しますが。

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