第3話 初戦闘
昔から出来ないことは無かった。
いや、厳密にはやろうと思えばなんでも出来た、というのが正しいだろうか。
昔から、誰かが何かをしているのを見れば、自然と『これを行うにはどうすればいいか』、『これをこうすればもっと良くなる』、なんて風に頭が自然とそれを理解出来た。
要は、見るだけでなんでも出来たのだ。
百聞は一見にしかずというが、それでも俺の一見は他者の百見にも勝っていた。
そんなチート人間な俺にとっては、周りの人間はあまりにもくだらない存在だったのは言うまでもないだろう。
そんなふざけた考えを持った俺を変えてくれたのが俺の祖父、字見 誠だった。
俺の祖父も、俺と同じチート人間だったのだ。
いつも何もかもがくだらなそうに生きていた俺を見かねた祖父は、そんな俺に生き方を教えてくれた。
『優、お前は強い。だから、お前は誰かを守れる人間になれ』
祖父が死ぬ前に俺とした最後の約束。
俺と祖父はそんな約束をいくつもしていた。中には、嫁には可愛い女の子を、みたいな約束もあったが。
祖父は約束を違えない人だった。名前の如く誠実な人だった。そんな人がいて、色んなことを教えてくれたから、今の俺はあるのだろう。
たくさんの友人と馬鹿みたいな話をして笑って。そんな俺がいるのはあの人のおかげだ。
ただ、その祖父も3日前に亡くなった。
祖父が死んだ後、俺はまるで抜け殻にでもなったかのように無気力に生きていた。
学校でも友人の話がとてつもなくくだらなく聞こえる。そう、まるで祖父に生き方を教えてもらった前に戻ったかのように。
そして、それはある日の学校からの帰り道だった。
『本当にくだらない。何が楽しくて、こんな生活を送っているんだか』
ふと、自分の中の『ナニカ』がそう、 吐き捨てるように言った。
『結局は爺さんが居たから渋々付き合ってただけで、本心から友達として付き合ってた訳じゃないんだよな』
それは、鏡に映った自分と話しているような感覚。
『ま、つまりは、爺さんとの約束も、それこそ爺さんだってそんなに大切な存在じゃなかったって────』
「それは違うだろ」
気付けば、俺はそう呟いていた。
「いきなり俺の中に現れたかと思えば好き勝手言ってんなよ。そんなの違うに決まってる」
独り言を、淡々と呟くように続ける。
「爺さんが居なかったら、今俺は生きていないだろ。この世のくだらなさに、つまらなさに、取るに足らない状況に絶望して自殺でもしてたよ。そんな俺を救ってくれたのがあの人だ。『俺』のくせに間違えた回答なんてしてんなよ。みっともない」
所詮はただの自問自答だ。
くだらないと吐き捨てたのは俺で、爺さんや爺さんとの約束が大切な存在だって思うのは俺の本心だ。
ただ、爺さんが大切ではなかったなんてことは断じてない。
『はっ。なんだ、抜け殻みたいだったくせに随分覇気を持って反論するじゃないか。なんて、これを考えてるのも自分であって、要はただの一人芝居な訳だけどさ』
そう、これはただの一人芝居だ。
まぁ、正直完璧無意識なんだけどな。びっくりしたけどな。
それでも、抜け殻みたいだった自分がまた元の自分に戻れたのはこの『俺』のおかげだろう。
『ま、ただ爺さんが大切じゃない、なんてのは嘘っぱちだが、友人関係がくだらないと感じていたのは事実だろ?』
「それでも普通に接するんだよ。それが爺さんとの約束なんだから」
そう言って、俺は空を見上げる。
もう1人の『俺』の声はもう聞こえなかった。
「それでもやっぱり」
俺は生まれた世界を間違えたのかなぁ。
ポツリと思ったそんなこと。
そんなことを思ったが矢先、俺は、
「はい、字見 優君。君は異世界に行きたい?行きたくない?」
女神に拉致された。
◇◆◇
ムクリと起き上がる。
体感での経過時間、それから太陽の傾きからいって、おそらくは昼寝を決め込んでから2~3時間といったところだろうか。
そういや、この世界の太陽も元いた世界と同じだよなぁ。
なんてことを考えながら、目の前をじっと見遣る。
「お、おお。びっくりしたなぁ。生きてんのかよ」
目の前にいたのは40代後半位の結構な部分が白髪で染まった茶色い髪のおっさんだった。
「ちっ。美少女じゃねぇのかよ」
「ん?なんか言ったか?」
「いや別に」
割と美少女に起こされるとかいう夢みたいな話を期待していたから目の前にいたのがおっさんで結構ショックだった。
俺は元いた世界では可愛い女の子に告白されることは幾度もあったが、付き合うことはなかった。なにせ、家で可愛い妹が待っていたもんで。
だから、元いた世界じゃ彼女を作る気はなかった。
ただし、今では話は別だ。
夢に夢見た異世界ライフ!可愛い異世界美少女とキャッキャウフフな生活を夢見るのは健全な男子としては普通な発想だろう?
だから、当面の目標は異世界美少女との遭遇。これで決定していた。
あー、やべぇ!凄い楽しみだわ!
とまぁ、そんなアホみたいなことを考えつつ、地面に座り込む俺を見下ろすおっさんに声をかける。
「こんな所で昼寝決め込む不思議な少年になんのようだ?」
そう言っておっさんを観察する。
身なり、それから街道の方に停まっている馬車、おそらくは荷馬車を見るに、盗賊とかそういった物取りのような存在ではないだろう。
「いやなに、商品の運送がてら馬車を走らせてたは、こんな草原で倒れてる奴がいたもんだから野垂れ死んでんのかと思ってな。まぁ、放置するにも忍びねぇし、供養でもしてやろうかと思ったんだ」
ま、昼寝してるとは思わなかったがな、とおっさんはガハハと笑った。
なるほど、商品の運送か。
「で、だが。お前さん、何者だ?身なりを見るに、旅人には見えないが」
おっと、どうやら怪しまれているようだ。
そりゃそうか。手ぶらでこんな所で昼寝してる奴見たら誰だって怪しむだろうしな。それに、明らかにここは向こうの街から遠い。怪しまれるには十分だ。
「人を見た目で判断するなよ、おっさん。俺はれっきとした旅人だよ」
身なりからおっさんについての判別をしたくせにこの発言である。
「ほぅ。じゃあお前さんどっから来たんだ?」
あちゃー、これは困ったなぁ。
異世界から来ました!なんて言っていいんかな?
「あー、まぁかぁなり遠くのどっかだな。うん」
馬鹿みたいにぼかして言ったが、うんもっと怪しまれても文句言えない。
するとおっさんはしばらく俺を見下ろし続けると、ニヤリと笑って、
「なるほど訳アリか。なら、無理には聞かねぇよ」
そう言っておっさんは身を翻すと馬車の方まで歩いていく。
「おい坊主。偶然出会ったよしみだ。街まで乗せてってやるよ」
「お、それは助かるなぁ」
長い距離歩いて結構疲れてたんだよな。
この世界に来たときが朝方だったのに今が昼過ぎなのがいい証拠だ。
何時間歩いたんだろうな、俺。
そういや、こっちの世界に来る前は学校からの下校途中だったんだよな。女神の真っ白な空間を経由したとはいえ、あっちとこっちじゃ時間の流れが違うのかもしれない。
それと、腹も減っていた。
今日の食事どうしようか。あとは宿も。
そこでやっと美少女とか言っている場合じゃないと気づいた。
「あー、荷物で埋まってるが何とか乗り込んでくれ。あと、色々と危ねぇ物もあるからあんま触んじゃねぇぞ?」
荷馬車に近づき中を見遣る。
馬車の中に積まれていたのは剣や槍なんかの武器、それから鎧やら盾やらと防具が多く積まれていた。しかもその奥には家具のような物があったりと、訳がわからなかった。
「おっさん、商人かなんかなの?」
御者台に乗ったおっさんに声をかける。
「あ?坊主、俺を知らんのか?」
「知らん」
「お、おう。即答か」
知らんものは知らんしなぁ。
「俺はグリエール商会の会長、バリス・グリエールだ。割と有名人なんだぞ?」
「へぇ、有名なのか。悪いが世俗には疎いんでね。あぁ、あと名乗られたんでこちらも名乗っとく。俺はアザ、いや、ユウ・アザミだ」
正直、世俗には疎いとかじゃ済まないよなぁ、なんて考えながら名乗る。名乗られたからにはこちらも名乗る。当然である。
ただ、この世界は基本、名・姓での呼びらしい。注意しなくては。
にしても、異世界での人との初遭遇が商会の会長とは、俺もなかなかツイているかもだな。出来るなら、ここで仲良くなっておきたいものだ。
「へぇ、ユウ・アザミか。珍しい名だな」
「ま、そうだろうな」
そんな返答を返し、そして馬車は動き出した。
ガタガタ、ガタガタと揺れる馬車。数分経ってとりあえず思った。
乗り心地悪過ぎ!
そういや、馬車とか乗るの初めてだったな。ましてや、荷馬車の空きスペースに乗ってんだから当然っちゃ当然なのかもしれない。
ガタガタと揺れる馬車、暇潰しに属性魔法を手の上で操っていると(とはいえ炎と雷だけだが)目の前に白い布みたいなものに巻かれた剣のような物を見つけた。
剣だとわかったのは布の合間合間から刃が見えていたからだ。
その刃はそれに巻きついた布とは真逆で真っ黒であり、いかにもといった禍々しいオーラを放っていた。
数時間前なら露知らず、今ならわかる。このオーラはおそらくは魔力だろう。となると、この剣はおそらく魔剣とか、そういった類のものだろうと、俺は判別した。
うん!厨二精神が刺激されるね!
「なぁ、おっさん。荷物の中にある白い布で巻かれた黒い剣、これなんだ?」
確認がてらおっさんに質問。
「坊主、それには絶対触んじゃねぇぞ」
返ってきたのはそんな答えだった。
「そいつは魔剣だ。触れたら最後、意識を持ってかれて化物に成り果てるぞ」
「へー、そりゃおっかない」
だったら、触れない方がいいな。触らぬ神に祟りなしだ。うん。
「よっと」
そう言って俺は剣に触れた。
「………………」
何もないジャンスカ。
ちょっと拍子抜けした。見た目からしても、おっさんのあの口調にしても、それっぽいと思ったんだがなぁ。
「なぁ、おっさん」
剣を片手に持ちながら、再度おっさんに話しかける。そういや、馬を操ってる訳だし話しかけない方がいいかと思ったが、
「そろそろおっさんはやめろ。俺はバリスだ。で、何だ?」
なんて別に平気そうだったから気にしない。
「なんで、こんな怪しい俺にこんな親切してるんだ?」
それは、さっきからずっと気になっていた疑問。
荷物も何も無い、更には訳わからん服装に、黒髪黒目、そして珍しい名前。異世界テンプレから考えて、怪しい所は腐るほどある。
それなのに、俺に親切をかけるおっさんが俺は少し不思議だった。いや、不思議というよりは疑っていたに近い。裏があるんじゃないかなぁ、と。
だが、返ってきた回答は、
「感だよ、感」
そんなものだった。
「言ったろ、俺は商人なんだ。だから、職業柄人を見る目はある。んで、お前からはなんとなく面白そうな感じがした。だから拾った。それだけだ」
「へー」
なるほどね。
そう言って、俺は荷物で塞がりながらも辛うじて見える窓から外を見る。
すると、だだっ広い草原を過ぎたようで、右手の景色は鬱蒼とした森に変わっていた。
なんか、魔物とかいそうだなぁ。
と、そんな風に思った時だった。
ヒヒーン、という馬の嘶きが聞こえると同時に、馬車が急停止する。
先程まで動いていた物体が急に停止した訳で、慣性に従い荷物が俺の座っていた元に押し寄せる。
「危っ、重っ、危ねぇ!」
刃が剥き出しになった槍が飛んできた。危ねぇ、マジで危ねぇよ。
「おい、おっさんどうしたんだ?」
生憎窓からしか景色が見えない俺には状況が全くわからなかった。まぁ、荷物で見づらくなっていたのだから尚更だ。
「まずいことになった」
深刻そうに告げるおっさん。
一体なんだっていうんだ。
「魔物が出やがった」
魔物だって?
そこからの行動は迅速だった。
黒い剣片手に荷馬車の扉を蹴り開け外に飛び出す。そして、馬車の進行方向に目を向ける。
そこにいたのは、とても人とは言い難い体色、顔を中心とした醜悪な身なり。
「ゴブリンだ」
そう、異世界系のお話では超テンプレのゴブリンであった。
「1、2、3、4、5、まだ居るな。10体位か」
森の中からぞろぞろと現れたゴブリンはこちらを見ながら訳の分からない言葉で会話を始めた。
「なぁ、おっさん。剣借りたから」
「あ?ああ、って、あ!?お前、それ」
「曰く、魔剣?だろ?」
驚いた顔のおっさん。1番驚いたのは俺ね。これ、驚くことなの?めっちゃ普通に触れたけど。
「お前、なんともねぇのか?」
「別に」
そう言って剣を振ってみる。うん、この直剣で剣道っぽい振り方はないな。ダサい。
ただ、そもそもとしてお話での知識は持っているが、それだけじゃこういった剣をいきなりはまともには振れないよな。
だから、試しに振った剣はいかにも素人といった風になってしまう。
だがまぁ、叩きつけるだけでも十分致命傷は与えられるだろう。
乱暴に扱っても大丈夫だろ。だって、魔剣なんでしょう?
「なぁ、おっさん。このゴブリン退治したらさ、食事を奢ってくれ、報酬としてさ」
「俺はバリスだ。だが坊主、この数だぞ?なんとか出来るのか?」
おっさんの顔から察するに、俺には無理だろうと言いたい様子。
だが、生憎こちらはステータスの大半をSで染め、チート魔法を所持したチート人間だ。ゴブリン程度、
「わけないね」
そう言って、俺はゴブリンの元へ歩いていった。
◇◆◇
とまぁ、カッコよく決めたものの、どうしたものか。
正直な話、『思うがままの世界』を使えば早々に終わらせれるだろう。だって、使い方を完璧に心得た今、しょっぱい魔法だなんて口が裂けても言えないしね、あれ。
だが、魔法だって、女神がやったのを見た手の上で炎を浮かせることと、街道を歩いている中で偶然出来た手の上で電撃を発生させることくらいしか出来ない。
つまるところ、俺は自分の戦闘経験を積むため、魔法無しの戦いをせざるを得ないわけだ。
今ある武器は剣のみ。それも使えない。
じゃあどうやって戦うかなぁ、と思った時だった。
「キシャアアアア!」
と声を上げ、棍棒片手にゴブリンが飛びかかってきたのだ。
身長140センチ後半ぐらいの体格、そしてそれが飛びかかって来ているわけだから、振り下ろされる棍棒の威力はそれなりのものだろう。
少なくとも、骨がひしゃげる。
だから、
「────ふっ!」
空中でたたき落とす。
慣れない剣は使わない。行うのは渾身の蹴り。
現段階で空中にいるゴブリンの胸部付近にめがけて回し蹴りを放った。
放たれた蹴りは俺の動体視力、そしてその上で感覚的に計算した蹴りの速さもあって、見事つま先からゴブリンの左の肋骨へと吸い込まれていった。
べキッ、という音と共に左方向へと『く』の字になって吹き飛ぶゴブリン。
そして、無様に地面に落下する。
ビクビクと痙攣し、まともに動けない様を見るに、もう戦闘参加は不可能だろう。
「さて、次はお前らの番だ」
そう言って俺はニヤリと笑うと、
「まずはお前だ」
1番手前のゴブリンに向かって駆け出す。
見た感じ統率の取れたゴブリン達だったが、さっきのゴブリンがやられたのを見て動揺したようだ。なら、その隙を突かない手はない。
「くら────え!」
先程とは違う、左足での蹴りは身長140センチ程のゴブリンの側頭部を薙ぐ。結果として、蹴りの当たった部分を支点にゴブリンは身体を半回転させる。
下手すれば殺しかねない躊躇のない攻撃だが、俺には罪悪感やら、命を奪うことへの嫌悪感なんかの善人ぶった感情は湧かない。
半回転し地面に倒れ伏したゴブリンはそのまま動かない。死んだか、脳震盪でも引き起こしているのだろう。
2体目を無力化した所で他のゴブリンも動揺から回復し、こちらへの敵意を表す。
3体同時の突撃、1体は飛びかかり、残り2体は地を駆けながら。
だが、
「………………」
何も言わず、ただ投擲した剣はゴブリンの腹部を貫き、そのまま剣先を地面に向け落下する。
こいつらも学ばない。空中からの攻撃なんて別に有効でもなんでもないのに。
空中に飛んでしまった時点で自分の狙った所に着地するまで自由な身動きが取れないなど当たり前だ。だが、このゴブリン達は知ってか知らずか、わざわざ跳躍して攻撃を仕掛ける。
地面を駆けて来たゴブリン2体による棍棒の振り下ろしを後ろへ向かって跳躍し、スレスレで回避する。
ゴブリンが振り下ろした棍棒は躱されたことで力のぶつける先を見失い地面へ。
そして、俺はその隙を見逃さない。
わざわざ両手で棍棒を振り下ろしていた一方のゴブリンの棍棒を持ち上げられる前に踏みつける。すると、ガッチリと棍棒を掴んでいたゴブリンは腕にかかった力によりうつ伏せに倒れ込む。
俺はその背中を踏みつけると、体勢を立て直したもう一方のゴブリンの棍棒による横薙ぎを身体を反らして回避。
そして、そのままガラ空きの顎につま先を叩き込んだ。
「ふう」
息をついたその時だった。
「坊主、魔法が来るぞ!」
おっさんのその言葉を聞き、森に目を向けると、杖を持ったゴブリンの手に炎の玉が浮かんでいるのが見えた。
そして、
「ギシャァァァァ!」
という掛け声と共に炎の玉が発射する。
「ちっ」
意外と速い炎の玉。このままじゃ当たる!
「坊主!!」
バリスが叫んだ。
そして、そのまま炎玉は俺に直撃し────
◇◆◇
「坊主!!」
俺がそう叫んでももう遅かった。
次の瞬間、ゴブリンメイジが放った炎玉はユウに直撃すると、爆発した。
だが、おかしい。あんな爆発だ。ユウの身体は吹っ飛んで行くのが普通のはずだ。少なくとも、ユウの身体が消えて無くなるなんてレベルではなかっただろう。
じゃあ、ユウはどこに。
そう考えた時だった。
「やっぱり俺にぴったりの魔法だな」
その声と共に、ゆらりとユウの身体が現れる。その姿には炎玉を受けた形跡は無く、全くの無傷だ。
だが、現れた場所。そこは、ゴブリンメイジのすぐ目の前だった。
「キシャアアアア!」
と声を上げ、ゴブリン式の詠唱を始めるゴブリンメイジ。しかも、今気づいたが、あれは変異体だ。詠唱による魔法の発動があまりにも速すぎる。
このままでは、ユウは今度こそまともに魔法を食らうことになる。
危ねぇ!、そう叫ぼうとした、その時だった。
「それはもう見た」
そう言ったユウはゴブリンメイジに右手を向けると────
「だから、」
なんの詠唱もせずにゴブリンメイジの変異体が放ったものの数倍の威力の炎玉を放ち────
「それはもう使える」
その炎玉は、ゴブリンメイジの周囲に展開していた他のゴブリンをも────
「失せろよ。雑魚」
────蹂躙し尽くした。
初の戦闘描写でしたがどうでしたか?こうした方がいいよ、みたいなのがあれば教えてもらえると嬉しいです。
次話は明日午前7時です。あ、午前7時投稿は毎話固定です。なんとなくですが。