表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/20

第16話 専属職員

 本当に、消えるのは勘弁してほしい。というわけで16話です。


 見たら、色んな方が評価してくれたようで嬉しかったです。

 いつも通り5時に起床。


 疲れてすぐに寝た俺だが、それに乗じて魔剣が動いた様子はない。


 やっぱり死んでるわ、これ。


 顔を洗いに廊下に出ると、今日も寝ぼけ眼のユーナに出会った。低血圧なんだなぁ。


 眼福眼福。


 その後、身なりを整えて1階へ。


 ユーナと2人で1階で話し、何分か経つと、ゼルバさんとセユナさんが起きてきた。


 2人共、昨日は何事も無かったかのように接してくるし、特にすることもあるまい。


 強いて言うなら、セユナさんが若干黒いオーラをチラつかせていた気がするが、気のせいとしよう。


 普通の奥さんからはオーラなんか見えない。黒いオーラなんて尚更だ。


 その後、冒険者に出す朝食の準備なんかを手伝っていると、ちょっと違和感。


 「ユーナ、仕事は?」


 そう、昨日ならユーナは朝食を食べて早々にギルドに向かったはずなのだが、今日はその様子が見受けられなかった。


 休日、なのだろうか?


 「あ、ユウさんにはまだ説明していませんでしたね。私、ユウさんの専属職員になりました」


 「うん。ごめん、全然わかんない」


 俺の専属職員?ナニソレ。


 ……すごく嫌な予感がするぞぉ?


 「ユウさん……。自分が冒険者ギルドに席を置いて2日でAランクになった異例の人材、というのは自覚してますか?」


 「あー、まぁね」


 自分でも、割とぶっ飛んでるとは思うよ。


 「ギルド側としてはそんな実力のある方には多くの依頼を受けて欲しいわけですが、この街近隣の魔物はあまり凶暴なものもいないため、そこまでギルド側から斡旋したい依頼があるわけではないのも事実なのです」


 「なるほど」


 この街の冒険者が受ける依頼といえば、ハインの森やロウンの森の魔物の数を減らすことくらいだ。それくらいなら、街にいる冒険者だけでことが足りる。


 要は、余程のことがない限り、高ランクの冒険者が動くような依頼が来ることは無いということだ。


 高ランクの冒険者には個人からの依頼があるとのことだが、この街ではそれもほとんどない。


 何か必要な物があれば、バリスの店に言えば手に入るからだ。


 グリエール商店凄い。


 「ですが、ギルドとしては万が一に備えて、そんな方には戦力として街に滞在して欲しいわけです」


 「つまりは、近隣で強い魔物が出たときにぶつけられる人材を確保したいと」


 「そういうことです」


 まぁ、あくまで冒険者は、冒険をする者だからな。ある1つの街にずっと滞在することはそうそうないだろう。高ランクなら尚更だ。


 だが、有能な人材が次から次へと抜けていけばその街も困るわけで、街から離さないように手を打たなければいけない。


 つまりは、


 「専属職員ってのは、ギルドと高ランク冒険者のパイプ役ってことか」


 「はい、理解が早くて助かります」


 少し早すぎる気もしますが、とユーナは苦笑する。


 「ギルドとしては、これから私を通してユウさんに優先的に割のいい依頼を斡旋することになるでしょうね」


 「へぇ、それはそれは」


 なんとまぁ、偉く待遇がいいな。


 この街から離したくないなら、そいつがこの街にいたくなるような特典を付ければいい。


 冒険者も人間だ。割のいい依頼なんかがあれば、「お、ラッキー」とでも言って受けるのは当然。楽に稼げるなら断る必要もない。


 だから、ギルド側は高ランク冒険者に対して、そんな『割のいい依頼』を斡旋する。


 そのパイプ役にギルド職員を配置し、職員がそれを伝える。


 冒険者からすれば『割のいい依頼』が自らやって来てラッキーだし、ギルドは冒険者が街に滞在してくれて助かる。


 それに、おそらく、受けるも受けないも自由だろうから、冒険者にはかなり利があるはずだ。


 「そもそも、王都や東西南北の国では高ランクの冒険者に専属職員が付くのは普通なんです。ですが、この街はそもそも高ランクの冒険者の方がいませんからね」


 確保した人材は逃がしたくない、と。


 「わざわざオプション付けて職員を寄越すわけだ」


 依頼の斡旋やらと良いオプションだよ。


 「で、ユーナが俺の専属職員になったのはわかったけど、ギルドに向かわないのはなんで?」


 これ。


 これがわからない。


 別に斡旋するなら、ギルドに顔を出したときだけで充分だよな?


 「ギルドマスターから、ユウさんに付きっきりになれ、と指示がありまして」


 「え」


 「ユウさんは一応、ギルドに席を置いて2日なわけですから。ギルド側としては、ユウさんには色々知っておいて欲しいこともありますので」


 「えと、つまり、ユーナの今の仕事は俺の付き人、とは言わないがそれにかなり近しいってことか?」


 「簡単に言えばそうなりますね」


 「………………」


 つまりなんだ?俺はユーナを独占する権利を得たも同然ということか?


 ………………。


 いや、嬉しい。この上なく嬉しいよ?ユーナ綺麗だし可愛いしね?


 たださ、


 「どうかしましたか?」


 キョトンとしながらユーナが首をかしげる。可愛い。


 ただこれ、俺、また火種を掴んだよな?


 正直、ユーナはこの街でずば抜けて綺麗だ。最早、言わずもがなだろう。


 そんなユーナを独占って……。


 軽く戦争でも起こってもおかしくないよな?


 「あぁ……」


 「?」


 わからんか。わからんよな。ユーナ、そういうの鈍いもんね。知ってたさ。


 この街の男共がこの現状を見たらどうなるだろうか……。


 「ええと、とりあえずガレスさんの話もありますし、ギルドに向かいませんか?」


 急に黙った俺に対して、ユーナは困ったようにそう言った。


 いや、そのつもりはもちろんある。だがな、


 「ユーナ」


 「はい?」


 「お前、宿にいろよ?」


 「え?」


 わかんないよね。知ってた。


 じゃあ、教えてやろう。


 「……ユーナは男の目を惹くんだよ。綺麗だし、可愛いから。で、今そのユーナを俺はほぼ独占してるわけだ」


 「え、え?」


 「そんな状況を男共が知ったら、俺の命が危ないの。戦争が起こりかねないの、わかる?」


 「え、えと」


 あーもう。アタフタして可愛いな、おい。


 「もう1度言います。宿で、待っててくれますか?」


 「はい……」


 距離を詰め、若干顔を近づけたことでユーナは俯き、顔を真っ赤にしながら了承した。


 お兄さん、ユーナが男に対して免疫なさすぎて心配だよ……。


 「はぁ、そんなわけで朝食の手伝い終わったらいってきます」


 ゼルバさんとセユナさんにそう言うと、セユナさんが意味ありげな笑みを浮かべていた気がするが、気のせいだと信じたい。


 ◇◆◇


 で、現在に至る。


 「なぁ、ユーナ」


 「……はい」


 「どうしてこうなったと思う?」


 「どうしてでしょうか……」


 俺は今、ゼルバさんの宿にいる。


 別に、朝食の準備を終えてからもずっといたわけでは無い。ちゃんと、ギルドへは向かったのだ。


 「なんで、俺の情報が大々的に公開されちゃったかな」


 ギルドに着いて見たのは、大きく張り出された、『異例の2日でAランク』の文字。


 俺の昨日の出来事が張り出されていたのだ。


 ハインウルフを大量に狩ったこと、変異体オークを瞬殺したこと、ガレスと戦ってAランクになったこと。


 ガレスとの試験の内容については詳しく書かれてはいなかったが、それでも俺という人間を知らしめるには十分だったようで、


 「お、あれじゃないか?」

  「ユウ・アザミだ!」

 「あいつが……」


 などと、ギルドの建物に入ったときにはもう俺の周囲には人だかりが完成していた。


 ガレスを探そうにも、人だかりのせいで出来ず、かといって人だかりを除けようとしてもそうもいかなかった。


 挙句の果てには俺と戦いたいというやつも出る始末。


 そんな面倒なことをするわけもなく、俺はこうして宿に戻ってきたわけだ。


 なんだって、血気盛んな男共と朝から戦わなきゃいけないんだよ。


 「ギルドは秘匿してくれるんじゃないのか?」


 「そのはずなんですけど……」


 これに関してはユーナは知らない、と。


 これ以上ユーナを困らせるのも可哀想だな。


 「まぁ、理由はわかるんだよ」


 「理由、ですか?」


 「そう。ギルド側がこんなことをした理由」


 俺はあくまでも、異例の2日でAランクになった人間だ。そんな人間を純粋に凄いと賞賛する者はそれなりにいるだろうが、逆に不正なんかを疑うような人間も多く出てくるだろう。


 つまりは、俺を認めたくない人間。


 ギルドがやったのは、要はそんな奴らへの布石だ。


 なにやら、ガレス曰く、この街に何か良からぬことが起こるみたいだしな。その時に先頭に立つのは、間違いなく俺やガレスなんかの高ランク冒険者だ。


 ギルド側が俺についての情報を秘匿して、いざとなったときに俺の情報を開示してもそれじゃあ遅い。反発が起こるのは目に見えている。


 「……なるほど」


 「ま、ここら辺は改めてガレスから説明があるだろ」


 俺が質問して俺が答えるという、なんとも奇妙な図になったが、まぁ別に気にすることはないか。


 「でも、今日1日は特に何も出来なさそうだな」


 ギルドは俺の話題で持ちきりなせいで近づけないし。


 ギルドに近づけないから、地下の書庫にも行けやしない。今日も今日とて、魔法について勉強しようと思ってたのだが。


 どうやらユーナも魔法が使えるようだが、本人は隠したいみたいだしな。下手に聞いたりするつもりもない。


 「今日は部屋でゴロゴロするしかない、か」


 シユがいたら、遊んでやるなりしてやるんだが、今はいない。メユと一緒に遊びに出掛けてしまったしな。


 どうやら、この世界にも一応学舎なんかはあるらしい。メユもその生徒なのだとか。


 でも今日はお休みで、今日は姉妹仲良く遊びに行った、と。


 とはいえ、どこで遊ぶんだろうか?


 そんなことをふと考えた時だった。


 ガチャン!!と勢いよく扉が開いたと思うと、そこには息を切らし、肩を揺らすメユの姿があった。


 「……どうしよう!……シユが、……シユがいなくなっちゃった……!」


 はい?


 あまりの唐突な出来事に、俺の頭は疑問符を浮かべるだけだった。


 私の投稿ペースについてですが、「遅い」とか、「もっと頻繁に出して欲しい」、という意見があれば、遠慮なく感想に書いてください。


 作者のやる気とかが上がります。


 次話投稿は2日以内を考えてます……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ