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第1話 拉致と女神と異世界転移

 はじめまして、畑 雨印というものです。一応、初投稿の作品となります。出来る限り間を空けないように投稿するつもりですので、感想とか書いてくれると嬉しいです。

 「〜〜〜〜♪〜〜♪」


 人気のない草原、いや道があるのを見るに街道だろうか、その道を鼻歌を歌いながら歩いている1人の少年がいた。


 その身なりは軽装。ブレザータイプの学生服を身に纏い、それ以外は何も所持していない。


 大抵の人間ならばまず思うだろう。『こいつは何をやっているんだ?』と。


 それはそうだ。その少年は学生服を纏っていながら鞄なんかは持っておらず、またさっきも描写したように、周りには人気はおろか建物1つも見当たらない訳で。


 少なくとも、現代日本じゃまず見かけないレベルの街道(コンクリートなんかの舗装は一切されていない)を1人で歩いていることには、違和感しか感じるものは無い。


 そして、違和感を覚える点がもう1点。


 その少年の右の手の平の上、そこに炎の玉が浮かんでいるのである。さらには、左の手の平の上にはバチバチと小さな電撃が発生しているのも見て取れる。


 現代日本じゃまず見かけない、というか有り得ない光景。こんなの、違和感どころの騒ぎではなかった。


 「お、やっと景色が変わってきたかな?流石に何もない草原だけだと気が滅入っちゃうからなぁ」


 そう言った少年の視界の先、右には鬱蒼とした森。そして、真っ直ぐ先には街が見えた。


 「いやー、女神様も酷いね。俺を転移させるのは向こうの人に配慮して秘密裏に〜みたいなこと言って、こんなだだっ広い草原に送るか?普通」


 少年は1人で愚痴を言い続ける。


 「そもそも、チートな能力とか与えられても対処出来ることと出来ないことがあるでしょ。それに、曰くチートを与える代わりの代償だってあったんだしさ」


 手の平の上の炎がゆらりと揺れる。


 「いくらチートな俺でも不安になったわー」


 そう言ってる少年は終始、まるで『してやったり』といった顔でニヤニヤと笑っていた。


 「さて、街に入ったらテンプレートに冒険者ギルドにでも行ってみるかな?はたまた、美少女との出会いのフラグを建てるのもいいかもしれない!」


 そう言うと、少年は少し立ち止まり。自分の左手、だだっ広く広がった草原を見遣る。


 「……そうだな。こんなだだっ広い草原、少なくとも元の世界、それも東京なんかじゃ滅多に見なかったし、少しカッコつけて、昼寝でもするかな」


 太陽は見た感じ南中したてで、時間で言えば1時にもなっていないだろう。


 そして少年は、もしかしたら美少女に起こされたりするかもだし、と土が露出した街道から草の生えた所へ歩いていくと、羽織っていたブレザーを枕替わりに草原でスヤスヤと昼寝を始めたのだった。


 ◇◆◇


 俺にとって、人生ってのはどうしようもないヌルゲーだった。


 勉強、運動は人並み以上、それどころか人間という種のなかでもかなりの実力を誇っていたと思う。いや、うぬぼれとかじゃなくてマジで。


 学校、俺が通っていた高校は有名な進学校だったけど、そこじゃあテストなんてほぼほぼ満点だったし、全国模試なんかも信じられないだろうが、受けた分では全てトップを走っていた。


 運動だってそうだ。元々部活には入らず、帰宅部だった俺を色んな部活の人達が、やれ助っ人に〜だのなんだのと流れ流れて色んな競技で全国1位をもぎ取った。


 自覚は無いが、容姿も良いらしく、告白なんかもかなり受けた。


 そんな俺を、俺の友人なんかはこぞってチートだなんだとはやし立て、そして事実俺もその事を肯定していた。


 ────俺は生まれる世界を間違えたのかなぁ


 ある日ふと思った、そんなバカみたいな考えの結果が、


 「さて、字見(あざみ) (ゆう)君。結論は出た?」


 「……いや、もう少し待てよ女神様」


 自称女神を名乗るよく分からん女に拉致される、というとんでもない状況を生み出してしまったのかもしれない。


 「まだなのー?決めるの遅くない?」


 「いやいやいや、いやいやいやいや。ちょっと待ておいこらふざけんなよ!?いきなりこんな方向感覚狂いそうな真っ白な空間に拉致したくせに何が、遅くない?だよ!」


 まだ混乱した思考の中、俺はそう叫んだ。


 「とは言っても、あなたは異世界に行きたいですか?なんて質問、『はい』か『いいえ』で答えられる簡単な質問でしょ」


 「はいそれ、お前馬鹿だろ!状況が唐突過ぎんだよ。この真っ白な空間に来て1秒もしない内にした質問だろうが!そんな質問にすぐになんて答えられるか!」


 もう何個の!マークが付くかわからないレベルで叫ぶ。普段の俺ならもっと冷静だっただろうが状況が状況過ぎる。


 何故なら、訳分からん真っ白な空間で、現在俺は椅子に鎖で縛られている、という望みもしない緊縛プレーの真っ最中だからである。


 「うるさいなぁ。いつもの君ならもっと冷静じゃないの?」


 「訳分からん空間で拘束されて、挙句訳分からん女から訳分からん質問されたからだよ!!」


 ゼーゼー、と息を吐く。椅子をガタガタと揺らし鎖から抜け出そうとしているせいで体力が一気に無くなった。体力に自信はあるが、やっぱり状況が悪かった。


 「でも、君は思ったでしょ?『俺は生まれる世界を間違えた』って」


 「やめろよ。改めて聞くと死ぬほど恥ずかしい」


 高校生活最大の黒歴史かもしれない。


 出来ることならすぐに忘れ去りたいね!


 「で、もっかい聞くけど、君は異世界に行きたいですか、行きたくないですか?」


 「………………」


 「まだダンマリー?」


 「……はぁ、まぁ、行きたいよ」


 しぶしぶといった口調で、俺はそう言った。


 「ほら、行きたいんじゃん」


 「そうだな」


 先程までの叫びまくっていた頃から打って変わっての静かな状態。冷静さを取り戻した、って所かな。


 「で、それを聞いて女神様はどうするわけ?『はい、じゃあ質問は終わり。帰っていいよ』とでも言って、俺をさっきまでの、下校途中の道に戻してくれるのか?」


 「まさか。行きたいって言ってるんだから、行かせてあげるよ。異世界にね」


 「だろ?それだよ、俺が答えを渋った理由」


 ガタガタと椅子を揺らし、拘束から逃れようともがいていたのも、今では止め、椅子に座り、鎖で縛られながら、ただ上を、何も無い真っ白な上を見上げ、ため息を1つ。


 「ハァー」


 「あんまり嬉しそうじゃないね」


 「あのさ、世界は小説の中のお話みたいに上手くはいくものじゃないだろ。だから、『異世界に行きたいですか?』、『はい、行きたいです』、『ではいってらっしゃい』、みたいに話はトントン拍子に進まない。それくらいわかるだろ?仮にも女神を自称するんだからさ」


 「じゃあ、君がそうやって答えを渋った理由っていうのは何?」


 「普通に考えりゃ、まず頭に思いつくだろ。人間関係だよ、人間関係」


 目の前にはこれまたさっきまでのふざけた態度とは打って変わった穏やかな笑みを浮かべた自称女神。


 「俺だって、チートだなんだと言われるけど、人の子だ。家族だっているし、友人だっている。それ全部ぶん投げて、異世界に行きますなんて、俺には言えないね」


 頭にふと妹のことが浮かんだ。


 我が家の両親は共働きであり、小学生である俺の妹は今頃1人で俺の帰りを待っている頃だろう。


 「そっか、君が気にしているのは人間関係か」


 すると、自称女神はさっきまでとは違ったゾッとするような笑みを浮かべて、こう続けた。


 「じゃあ、地球上の君に関する記憶を全部消してあげるよ」


 「………………」


 「これなら君が気にすることはないよね」


 「……ハァー。何?女神って皆こんななの?言ってることが狂ってるだろ」


 正直、ドン引きである。


 そもそも前提として、拉致とか女神の所業じゃないだろ。


 「じゃあ、どうすれば君は異世界に行くの?」


 行かせる気満々かよ……。


 「あ、そうだ。ちなみに────」


 「「君に関する記憶はもう全部消去済みだよ」」


 「!?」


 被せてやった台詞(セリフ)、驚く自称女神。


 「はいはい、びっくりびっくり。そんなの簡単に読めるって」


 少なくとも、この女神が異世界に人間を送るというのは俺が初めてではないはずだ。


 だったら、前もって俺が異世界に行かざるを得ない状況を創り出すことだってするだろう。


 「これで俺がやっぱり行かない、って言ったらどうするんだ?捨てたものを拾うかのように、また記憶を戻してくれんのか?」


 「無理だね」


 やっぱりな。


 「ま、そうだろうとは思ったよ」


 ルート分岐なんてなし、『はい』か『いいえ』の選択肢が用意されてはいるものの、結局ルートは固定だったってオチだ。


 「ショック?絶望したかな?」


 「いや、別に。どうせ、俺はこの程度じゃなんとも思わないって知っててやったんだろ?」


 「まあねー」


 飄々と返答する女神。ったく、掴みどころのない奴。


 「ただまぁ、なんとも思わないとは言ったけど、実際は結構辛いものがあるな」


 家族や友人が俺を忘れた、なんてあまり考えたくはないし。ましてや、俺を慕っていたお兄ちゃん子な妹は今、どうしているのだろうか。


 そう考えると、心が少し痛んだ。


 「で、君は結局自分が絶対に異世界に送られるってことが分かったとは思うけど、どうするの?」


 「そりゃあ、異世界に行くんだろうな」


 「じゃあ────」


 「ただし」


 自称女神の言葉を遮るように、俺は言葉を続けた。


 「テンプレートに、チートな能力とかは寄越してもらうぞ?」


 俺はニヤリと笑ってそう言った。


 「へぇ」


 そして、自称女神もまた、笑った。


 「俺だって、見ず知らずの土地で生活するのは怖いんだ。それに、行き先は異世界。何があっても不思議じゃない、だろ?」


 「まぁ、君のことだろうからそう言うと思って、きちんと準備はしてるんだけどね」


 「へぇ、じゃあ早速────」


 「ただし」


 自称女神は俺が先程やったように、俺の言葉を遮るように言葉を続けた。


 「君のそのチートじみた才能をもらうよ?」


 「……マジか」


 「マジです」


 えー、そんなギブアンドテイクなの?チートって。


 「はいはーい、チートじみた才能を奪われた俺はどうなるんですか?」


 拘束されて手は挙がらないが、質問するためふざけたような声を出す。


 「はい、いい質問ですね。具体的にはチートじみた少年のままです」


 あ、そうなの。


 「ただし」


 「何、ハマったの?その言い方」


 勿体ぶった言い方やめてー。


 「あなたは向こうの世界で一切の魔法が使用出来なくなります」


 「なん……だと……?」


 え、割と笑えないんですが。


 「まぁ、その分強力な能力なんだよ」


 「えー、じゃあもらわないとか出来んの?」


 「出来るよ」


 ふむ、チート能力振りかざして手っ取り早く俺TUEEEEするか、地道に魔法とか覚えて俺TUEEEEするかの違いか。


 まず前提として俺TUEEEE出来ると考えている時点で、俺は相当なナルシストなのかもしれない。


 まったく、『世界は小説の中のお話みたいに上手くはいくものじゃない』とか言っときながら、1番上手くいくって考えてたのは俺だったのかー。


 「じゃあさ、試しになんか普通の魔法使ってみてよ。火の玉出したりとか」


 「えー」


 うわー、露骨に嫌そうな顔するなぁ。


 「あのね、私は女神な訳。それも世界から1人の人間の記憶を消したりするのも造作もない位に凄い女神な訳。それで普通の魔法を使ってみてよとか、達人に素人と同じことをしろって言ってるようなものよ?」


 「出来ないの?」


 「出来る」


 そう言うと、女神は自分の手の平の上に火の玉を発現させた。


 「おー、ちょっと感動。今の俺には使えないの?」


 「無理。まずはステータスを見なきゃね」


 「お、いいね。異世界っぽくなってきた」


 ちょっと楽しくなってきた。やばい。


 「はい、じゃあお姉さんと一緒に、せーの【確認(オープン)】」


 「お、【確認(オープン)】」


 は、恥ずかしっ!


 だが、すると驚き。俺の目の前に、ホログラムのようなものが浮かび上がった。


 「お、おお。これが、俺の能力か」


 浮き上がったホログラムに書かれている文字を読む。


 「どうだった?」


 「まぁ、なんというか……」


 俺のステータスをある程度眺め、俺は顔を上げる。


 「……ちょっとびっくりした」


 俺の能力、ステータスはこんな感じだった。


──────────────────────


 【ステータス】

 Name:ユウ・アザミ  Age:17


 LV:1


 力:S

 魔力:S

 耐久:A

 敏捷:S

 器用:S

 生命:A

 精神:S


 《保有属性》【────】

 

 《魔法》【固有魔法】:『思うがままの世界(パーフェクトワールド)


 《スキル》【────】


──────────────────────


 ごめん、今日1番訳分かんない。


 主人公はチート人間という前提からして俺TUEEEEの匂いしかしないゼ!


 

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