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サクッと読める短編はこちらから♪

ねこもり

作者: 紫生サラ

 泣いたり、笑ったり、いたずらしたり、赤い服着た元気な赤ちゃん。お母さんは忙しくて一人ぼっち。

 青い風そよそよ、カーテンふわふわ、緑の畳の上で赤ちゃんはつまらなそう。

 ぱっと赤ちゃんが笑いました。

 白い布団の海に黒い島。

 夜の空より夜の海より、ずっと黒い、黒い猫。夜空に浮かぶ満月のような黄色い瞳が赤ちゃんのことを見ていたからです。

 赤ちゃんは猫を見つけて大喜び。黒猫に近づき、頭を撫でたり叩いたり、耳を裏返したり引っ張ったり、乗りかかったり、猫の自慢の毛並みはもみくちゃです。

 けれども猫は気にしません。それどころか、月の瞳はすっかり隠れ、いつのまにか猫は寝てしまいました。

 なんで、どうして寝ちゃうの?

 赤ちゃんは気に入りません。赤ちゃんは猫とじゃれあったりして遊びたかったのに寝てしまうなんて。

 猫の自慢の長いしっぽがゆれると、赤ちゃんは猫を起こそうとしっぽを握ったりかんだりひっぱったり。

 それでも猫は起きません。

 猫のしっぽで遊んでいた赤ちゃんも何だか眠くなってきたみたい。しっぽを握ったまま布団の波に揺られてユラユラウトウト、赤ちゃんも白い海に浮かんで夢心地。

 猫と赤ちゃんは夢の中。赤ちゃんは夢の中で猫と遊んで上機嫌。

 突然、窓から見ていた風を押しのけ、大きな暗くて冷たい塊が窓の外から赤ちゃんと猫を覗いています。


 大きな体に大きな手足、鋭い爪に濡れた牙、冷たい塊が窓に手をかけ、無理矢理部屋へと入ってきます。

 それを外で見ていた鳥達はおしゃべりをやめて逃げ出しました。冷たい塊を好きな者などいないのです。

 鳥達は言い合いました。猫も赤ちゃんも早く逃げないと大変なことになるぞ。

 きっと、猫は気がつくだろう。猫は逃げるぞ、猫は助かる。

 赤ちゃんは大変なことになるな、お母さんがそばにいなかったからだ、かわいそうに。 

 のっしのっしと歩く冷たい塊は大きな目で猫と赤ちゃんを見下ろしました。

 ピンと猫の耳が立ち、黒い島に月が出ました。月は冷たい塊と赤ちゃんを見ました。

 白い海で浮かぶ赤ちゃんの小さな体はすぅすぅと膨らんだり、しぼんだり。

 冷たい塊が顔を近づけると、猫と赤ちゃんの体が冷えていきます。

 猫は寝ている赤ちゃんの体を抱きしめました。

 冷たい塊の爪が猫の背中を引っかきます。

 赤ちゃんは猫に抱かれてポカポカいい気持ち。

 冷たい塊が大きな口を開けて、猫と赤ちゃんを飲み込みました。

 猫は冷たい塊をにらみながら、しっぽを赤ちゃんの体に巻きつけました。

 すると、赤ちゃんが目を開け、猫と目が合いました。猫は赤ちゃんの顔をペロペロと舐めます。すると赤ちゃんは笑顔になりました。猫がそばにいて赤ちゃんはうれしくなったのです。

 夢の中と同じ。

 赤ちゃんも猫を抱きしめ、温かくて、いい気持ちでそのまままた寝てしまいました。

 赤ちゃんは夢心地。

 夢の中で猫と遊びます。

 温かくて、柔らかくて……。

 冷たい塊が猫と赤ちゃんにあきらめて帰った頃。猫は別の足音を聞いていました。

 赤ちゃんが目を覚ますと、赤ちゃんはお母さんに抱っこされていました。

 赤ちゃんがねこを探すと、猫はしっぽを揺らしながら毛繕いをして、今度は本当に眠りました。



                                            おわり

絵本を意識して書いてみました。誰か絵をつけてくれるとうれしいですね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 優しい絵本のイメージですね! 柔らかい文章が、猫と赤ちゃんの交流を描き、なんだか心が癒されました(*^^*) 「ねこもり」というタイトルもなるほど的を射てます。 赤ちゃんの気づかぬうちに、…
[良い点] 文章にリズムがあって、とても読みやすかったです。 お話もどこか不思議なところがあって、それでいてあったかい雰囲気があって好きです。ありがとうございました。 [一言] 先ほどは感想をありがと…
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