序章 ~むかしばなし はじまり~
文章作りのブランク対策に、思いつくままに書き連ねるお話です。
基本、章毎に完結。不定期更新。
むかしむかし、世界には今よりももっとたくさんの魔王たちが居ました。
その誰もが大きな力を持っていて、天上の神様も困る程でした。
その中でも、最も力をもった魔王がいました。
その力は神様の王様にも届きそうな程で、その恐ろしさに誰もが怯えていました。
ある時、魔王は気まぐれに御触れを出しました。
あらゆる町に村は、次の満月の夜に魔王の城へきて、貢物をさし出すようにと。
貢物を気にいれば褒美を、さし出さぬ者、気に入らぬモノを出したならば、呪いを、それぞれ与えよう、と。
町は村は人々は、それぞれに精一杯の貢物をさし出しました。
ある町はたくさんの宝石で飾られた魔王の彫像をさし出しました。
魔王は、宝石の種類が気に入らぬと、その町に呪いをかけて町と人を石にしてしまいました。
ある村は、山奥の森でしか捕まらない、貴重な動物の毛皮を差し出しました。
魔王は、毛皮の色合いが気に入らぬと、その村に呪いをかけて、村人を動物にしてしまいました。
魔王は少しでも気に入らないと、呪いをかけるのです。
褒美は未だ誰ももらえません。
そんな中、魔王の前に 一人の少年がやってきました。
少年は、魔王が御触れを出した町や村の中で、とくに貧しい村からやってきました。
村には、さし出せるようなモノは何もありません。
魔王にさし出せるような宝や素晴らしいモノは、何一つとしてありませんでした。
でも、何も出せなくても呪いをかけられてしまうのです。
どうしよう?
村の大人たちは悩みましたが、答えは出ませんでした。
そんな大人たちを、ある少年が一人じっと見ていました。
そして、誰にもなにも言わずに、魔王の城へむかったのです。
魔王は、目の前にやってきた少年に尋ねます。
お前は何を差し出すのかと。
少年は言いました。
ぼくを
恐ろしい魔王を必死に見上げながら、少年は答えます。
ぼくは、ぼくをさしだします。
少年は、ひとつ前の冬に、父と母をうしなっていました。
みなしごとなった少年を、村は貧しいながらも育ててくれました。
その恩返しののために、少年は自分を魔王にさし出したのです。
魔王は笑いました。
少年は、貧しい村で育ったために、ひどく痩せてみすぼらしいのです。
家来にするにはみすぼらしすぎます。
食べてしまうには、痩せていてちっとも美味しそうではありません。。
ひとしきり笑ったあと、魔王は呪いをかけ始めました。
お前のような不味そうな者、食べても仕方がない。そんなお前をさし出した村など呪いをかけて滅ぼしてやろう。と。
そんな魔王に少年は首をかしげました。
魔王さまはすごい力を持っているのに、ぼくを美味しくすることは出来ないのですか?
魔王はこたえます。
そんな訳があるものか。我が力を以てすれば、お前を最高の味を持った料理にすることもできるのだ。
そう言った魔王は、少年に魔法をかけると、その腕を引きちぎり食べてしまいました。
そして、目を見張ります。
魔王が賭けた魔法の味以上に、少年は美味しかったのです。
魔王は、腕を失い、気を失った少年をじっと見つめました。
そして面白い、と思ったのです。
実は、この満月の夜は、魔王達の宴の始まりの日でした。
御触れを出した、最も大きな力を持つ魔王以外にも、たくさんの魔王がこの城に集まって、宴をしているのです。
この御触れは、その宴の出し物の一つだったのです。
そして、その宴の主となる料理を何にするか、まだ決められていなかったのです。
よかろう。お前を受け取ろう。お前は我が料理となるのだ。
魔王は宣言し、更なる魔法を駆けました。すると、見る間に少年の腕が元通りになり、少年は目を覚まします。
不思議そうな少年に、魔王は告げます。
お前の味は、褒美に値する。だから、いくら傷ついても元通りになる身体をやろう。
そして、お前を我が宴の主品としよう。もし、数多の魔王たちをその味で楽しませたのなら、更なる褒美も約束しよう。
何か望みはあるか?
魔王の問いに少年は答えます。
村を、ぼくの村をまもってください。
魔王は頷き、少年への褒美として、一つの魔法を駆けました。
それはとても恐ろしい呪いの魔法。
誓いを鍵に、それを破った者達に大きな災いをもたらす呪い。
それは確かにかけられたのです。