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遠藤織枝とろくでもないクラスメイト



 今朝は、空がうっとうしい。

 灰色の雲が、重くのしかかってくるような錯覚を覚える。



 ――この時期、どうもすっきりした気分で出かけるってことがないなあ。



 家を出たところで、空を仰ぎながら、そんなことを考える。

 考えながら、駅に向けて歩き出す。学生の朝だ。それほど時間に余裕はない。


 そのまま、なに気なく。

 隣家を通り過ぎようとした、ちょうどその時。幼馴染おさななじみが出てきた。

 平塚平太郎ひらつかへいたろう。私服の学校だというのに黒の学生服を着た、歳不相応としふそうおうに落ち着いた雰囲気の少年だ。ちなみに、わたしの片恋かたこい相手である。



織枝おりえか。おはよう」



 平太郎は無感動な表情で、手を上げる。


 すこしおかしい。

 いつもより少しだけ、急いだ雰囲気だ。


 そういえば。と、思いつく。

 いつもなら、そろって学校に行くはずのミラが居ない。

 あのお邪魔虫な金髪美少女顔の少年を待たずに出かけるのは、すこし変だ。



「おはよ、平太郎。ミラは?」


「今日は、先に行った」



 わたしの疑問に、淡々とした口調で答える平太郎。


 気のせいではない。

 他の人が気づかなくとも、わたしにはわかる。

 平太郎は間違いなく、落ち込んでいた。それも、相当。









 平太郎のことが気になったが、時間は待ってくれない。

 あとで聞こうと決めてから、彼と別れて学校へと向かった。


 わたしの通う蘭陵らんりょう女子高等学校は、有名なお嬢様学校だ。

 そのため、学内の雰囲気ふんいきは、他校に比べてひどく落ち着いている。

 というより、落ち着いていることを求められている、と言うべきか。

 はしゃいだ会話などしているところを先生に見つかれば、それだけで注意を受ける。礼儀作法にひどく厳しい校風なのだ。


 だから、たとえば休み時間なども、ワイワイ騒ぐ、というより、いくつかのグループに別れて、優雅に談笑する。さながらサロンのような雰囲気ふんいきになる。


 もちろん、クラスにも一般生徒は少なくない。

 しかし彼女たちも、うまくお嬢様グループに入りこんだり、内輪で固まったり、そんな感じでまとまっている。わたしもそれにならっている口。


 だから。

 このクラスで孤高を保っている彼女は、ひどく目立つ。

 腰まで伸びた、つややかな髪。目鼻立ちの整った、国際的な容貌ようぼう。仕草にいちいち華がある、超然とした少女。


 九条佐緒実くじょうさおみ

 お嬢様学校にあってなお高嶺たかねの花。お嬢様の中のお嬢様だ。


 そんな彼女が、昼休み、唐突に声をかけてきた。



「遠藤さん。わたくし、あなたに相談がありますの」



 いきなりのことに、わたしは目をぱちくりさせた。

 彼女が他人に相談事など、いまだ聞いたことがない。

 一緒に昼食をとっていた、友人の三木みきさんなどは、驚きからだろう。度の強い眼鏡をずり落としてしまっている。



「なんでしょう」



 思わず背筋を伸ばし、敬語で返してしまう。



「恋愛相談です」



 彼女は堂々と言った。

 クラスがひと時、ざわめいた。

 当然だ。この超然とした少女の恋愛事など、聞いたことがない。



「……場所、変えようか?」


「なぜですか? わたくしは、わたくしに関する何事も、恥じるものではありません。こちらで結構」



 わたしが気を使って提案すると、彼女はそう言って胸を張った。

 なんだこの人。男前すぎる。



「じゃあ、聞きますけど、なぜわたしに?」


「わたくし、心を許せる友人がおりませんの」



 唐突な告白に、一瞬意味が理解できなかった。

 というか、なぜそんな悲しいことを自信満々に言うのか。



「ちょ、え、いいの? というかいきなりナニを告白してるの?」


「気遣い無用。恥じるようなことではありません」



 そうだろうか。

 ちょっと自分について考えた方がいい事案ではなかろうか。

 というか、どれだけ自分に自信があるのだろう、このお嬢様は。


 お嬢様は構わず続ける。



「――それで、わたくし、相談させていただこうと思いましたの。わたくしの想い人の――幼馴染であるあなたに」



 一瞬、頭が真っ白になった。

 異性の幼馴染といえば二人いるが、わたしが真っ先に思い浮かべたのは、片恋相手の平太郎だ。


 目の前の美少女を見る。

 顔の造作。スタイル。教養。女らしさ。どれをとっても勝てる見込みがない。

 とくに胸は絶望的だ。圧倒的な存在感を主張しながら、細身な体との調和をまったく崩していない。そんな理不尽な美巨乳を、彼女は備えている。



「え? ちょ、どっち? どっちの幼馴染? そこ重要なんだけど!」



 がたり、と席を立ってしまった無作法を、優しくとがめるように。

 わたしの唇に、そっと人差し指を置いて、九条佐緒実は優雅に言った。



「滝本ミラさんですわ」



 見惚れるような仕草だった。

 なぜか横で見ている三木さんが、頬を染めている。



「……九条さんは、ミラとどうやって知りあったの?」


「ひと目惚れです」



 尋ねると、彼女はためらう様子もなく、はっきりと言った。



「昨日、車ですれ違った時、欲しいと思いまして……父に頼んで調べてもらいました。

 滝本ミラ。椿山つばきやま高校二年生。住所はあなたの家のご近所。幼稚園から中学校まで、あなたは一緒の学校でしたわね」



 半日でこれか。

 わたしは戦慄した。

 金のある人間が本気出すと怖すぎる。

 というか。ミラのこと、よくひと目で男とわかったものだ。



「でも、どうしてわたしに相談を? 九条さんだったら、迷わずそのまま告白しそうなのに」



 彼女の言動を見ていれば、むしろそうしない方がおかしい。

 わたしの質問に、彼女は優しく笑いながら答えた。



「わたくしは、わたくしのあらゆるものを恥じるつもりはありませんが、同時に相手を気遣いもいたします。不躾ぶしつけな告白は、自重すべきだと判断いたしました」



 すごい。気づかいのできる人だ。

 これが本物のお嬢様か。ちょっと男前すぎる気もするけれど。



「なにより、これが初恋でもありますし。わたくしに多少の物怖じが、無かったとは申しません」



 だから。

 と、九条佐緒実は、わたしの手を取り、目をまっすぐに向けて言った。



「わたくしが告白するための場所と時間を、あなたにセッティングしていただきたいのです」



 真摯しんしであり、抗いがたい力のこもった言葉だった。

 だけど。わたしの言うべき言葉は、すでに決まっている。



「ごめん、それ無理」



 言った瞬間、空気が凍りついた。

 周囲だけではない、クラス中巻き込んで凍りつかせるような、無形の圧力。

 それが、表情一つ動かさない九条佐緒実から発せられたものだというのは、疑いようがない。



「……なぜ、と聞いてもよろしいでしょうか?」


「わたしには、仲のいい後輩がいる。その子が、ミラのこと好きだから」



 わたしははっきりと理由を言った。

 この件に関しては、先約があるのだ。そちらを反故ほごにするわけにはいかない。たとえ目の前の彼女を敵に回したとしてもだ。


 視殺戦しさつせんのような視線のやり取りをすることしばし。

 九条佐緒実は音を上げたようにため息をついた。



「よろしい。あなたはこう言いたいんですわね? わたくしより後輩のほうが大切だから、わたくしにミラさんを紹介できない、と」


「ええ」



 彼女の言葉に、うなずく。



「――ならば、わたくしのすべきことは簡単です」



 にやり、と、肉食獣のような笑みを浮かべて、彼女は宣言した。



「わたくしが、あなたにとって、その後輩よりも大切な存在になる……そうすれば、わたくしを優先してくれますわよね?」



 発想が斜め上すぎる。

 わたしは驚きに声も出ない。

 完全に、あっけに取られたまま。



「とりあえず、仲良くいたしましょう? 遠藤織枝さん」



 この上ない笑顔で差し伸べてきた彼女の手を、わたしは握り返してしまった。









「んなのダメダメダメに決まってるっスよぉーっ!」



 家に呼びつけて、事情を説明した当の後輩――猪瀬音子いのせおとこの開口一番の言葉である。

 くりくりと大きな瞳に眼鏡、かわいい丸顔に真っ黒ショートヘアの後輩は、体全体で拒否の姿勢を示した。



「わかってるって。だから音子、あなたを呼んだんじゃない」



 わたしは興奮する音子をどうどう、となだめる。

 すると、クッションに端座たんざしていた九条佐緒実が口を開いた。

 かたわらには大きなバッグを置いていて、完全に泊りこむ気である。



「ミラさんは、わたくしのものにいたします。そのために織枝さんとは親しい仲になりたいのです。だからとっとと帰りなさい、お邪魔虫」


「なに言ってんスか!? 平太郎さんにならともかく、ぽっと出のお嬢様にミラさん奪われるなんて納得できるかーっ!!」



 コラ音子。なにを全力で宣言しとるか。

 それはわたしにとって最悪のケースじゃないか。


 興奮する音子。

 それに対して、お嬢様はまったく動じず、視線を流して言った。



「なら、あなたとも、仲良くなってさしあげても……よろしくってよ?」


「おおおっ!?」



 突然の言葉に、音子は身震いする。



「ヤバイ。先輩ヤバイっス。ミラさんにひと目惚れしただけのことはあるっス。コイツそっちの満載っス!」



 聞きたくない推測を耳打ちしてくる音子。

 気持ちはわからなくもないが、「あなたと仲良くなりたい」などとアプローチを受けている、わたしの身にもなって欲しい。



「先輩、わたしは一時離脱いたしますっス! 幸運を祈るっス!」


「ちょ!? 置いていくな! 頼むから今の状況でわたしひとりにしないでっ!!」



 懇願の声も虚しく、音子はさっさと逃げ帰っていった。

 この薄情者め。









「警戒することはありませんわ。なにも今すぐ取って食おうというつもりはありませんし」



 わたしたちのやり取りを聞いていた九条佐緒実は、にこやかにそう言った。



 ――あとで取って食うつもりなのか。



 その疑問を、わたしは怖くて問いただすことができなかった。


 それから彼女は言葉通り、わたしと仲良くなるための行動を開始した。

 なにげない学校の話から始まって、共通の知人について、そして趣味やファッションについて、話は途切れず、わたしも時間を意識せずに話し合った。


 驚いたのは、彼女がプロレスの話題にもついていけたこと。

 同性とその手の話ができず、飢えていたわたしは、夢中で語ったものだ。


 そして。



「――お姉ちゃん。お母さんが、お友達も夕飯にお誘いしてって」



 はたしてこれは彼女の計画通りなのだろうか。

 このところ帰るのが遅い父を除く家族二人と食事を共にしたあと、居間でゆったりとくつろぎ、それぞれに風呂に入って……彼女はパジャマ姿でわたしの部屋に居る。



「わたくし、お友達の家にお泊まりは初めてですわ」



 なぜか物悲しくなるようなことを自信たっぷりに言う佐緒実。

 まあ、友達と言ってくれるのはうれしい気もするが、彼女のこれまでの人生が、すこし気にかかる。


 それにしても。

 部屋に戻ったら、ウサミディールが部屋のすみで体育座りしているのは、いったいどういった趣向か。



「九条さん。わたしのウサギ、いじった?」


「いえ? ただ、織枝さんがお風呂に入っていらして、わたくしがひとりで居間に降りました時、お母様方がお部屋のほうに行かれたように思いましたが」



 ……また母か。



 先日の出来事を思い出して、わたしはウサミディールにシャイニングウィザードをかましたい衝動にかられる。

 まあ、九条さんの前なので、自重するが。


 おそらくは、またウサギに無線機か盗聴器でも仕込んだのだろう。

 しかし今回に関しては、わたしはそれを見逃すことにした。

 ひょっとして、貞操の危機があるかもしれないし。


 それから。

 またしばらく話した後、わたしたちは一緒のベッドに入って寝ることになった。

 プロレス技の練習として、マットがわりにも使っているため、わたしのベッドはすこし大きめのセミダブルだ。じゅうぶんに、二人並んで眠れる広さである。



「……じゃあ、お休みなさい」


「ええ。あなたも」



 あいさつを済ますと電気を消した。

 しばらく目をつむっていると、ゆるやかに睡魔が襲ってきた。

 眠りへの誘いに意識をゆだねながら、静かにと眠りに着いた、直後。


 優しく抱きつかれる感触に、わたしは目を開いた。



「九条さん?」


「織枝さん。夜はまだ早いですし……もうちょっと仲良くしません?」



 ぞくりと体の芯がうずくような感覚。

 とっさに起き上がり、膝立ちになって彼女の抱擁を解く。

 直後。お嬢様の体は、半円の軌道を描いてわたしの背後に移動していた。



「!?」



 小さく悲鳴を上げながら、身をよじる。

 そうはさせじと、彼女の細く長い腕は、わたしの腰に回され――気づけば完璧なクラッチを決められている。



 ――こいつ、本気でできる・・・!?



「さあ、仲良くなりましょう? 大技大好きなあなたに本物のレスリングと言うものを教育してさしあげますわ。往年のスティーブ・ライトのようにね?」



 動けないわたしの耳元で、彼女がささやく。

 こちらを襲いたいのか、それとも本気でプロレスしたいのか、まったくわからない。

 とにかく危機感だけがつのり、半ばパニックになったわたしは、顔を真っ赤にしながら手足をばたばたさせるしかない。


 そこに。



「織枝ちゃんになにすんだこのバカっ!!」



 なぜか、ウサミディールが割って入ってきた。

 お嬢様のホールドを蹴り剥がすと、着ぐるみは両手を組んで仁王立ちになる。


 わたしは目をしばたかせた。



「ミラ?」



 間違いなくミラの声。

 母のやつ、わたしとお嬢様が居ないうちに、ミラを勝手に部屋にあげたらしい。


 わたしの声に応えて、着ぐるみはウサギの面を取り払った。

 中から出てきたのは、予想通り、金髪碧眼の美少女顔。滝本ミラだった。


 それを認めて。

 お嬢様はやおら立ち上がると明かりをつけ、ミラの前に立った。


 そういえば。

 わたしは思い出す。


 あまりの事態に忘れていたが、このお嬢様の目的は、ミラに告白することなのだ。

 まあ、こんな場面を見られては、お嬢様としてもかけるべき言葉に迷うところだろうが。



「滝本ミラ。ちょうどよかった……この九条佐緒実が告白します。あなたが好きです。わたしのものになりなさい!」



 ――臆面もなく言いきった!?



 憧れすら抱く潔さだ。

 ただ、その直前に同性と、明かりを消してプロレスごっこしてたのは、アウト以外のなにものでもない気がするが。



「ヤだよ。なんつーか、男としてお前の存在はぜってー許せねー!」



 ミラは怒りを隠さず、お嬢様を指差す。

 その、言葉を聞いて。九条佐緒実は固まった。



「……え? 男?」


「? そうだけど?」



 不思議そうな顔のお嬢様。

 相手の様子に、小首をかしげるミラ。


 どういうことだろう。

 詳細に調べている以上、ミラが男だということは知っているものと思っていたのだが。



「お父様!? 黙ってやがりましたわね!?」



 お嬢様が悲鳴に近い声で叫ぶ。


 それでわかった。

 彼女の父が、滝本ミラが男だということを意図的に伏せて、調査結果を伝えたのだろう。

 たぶん、女にひと目惚れしたあげく、そのことに疑問を覚えない、どころか突っ走っていく彼女に対するショック療法として。


 というか、この人やっぱりガチなんだ。

 さっきは本気で危なかった。ミラに感謝だ。



「織枝、なんだこの悲鳴は?」



 そうするうち、悲鳴を聞きつけたのだろう。

 平太郎が部屋に乗り込んで来た。



「――くっ。今日のところはこのくらいにしておいて差し上げますわ!」



 なぜか悪役のような捨て台詞を吐いて、お嬢様は逃げだした。

 玄関を出る時、母にきっちり挨拶をしていくあたり、礼儀が身に付いているのかいないのか。

 まあ、パジャマ姿で揺れる彼女の胸を、平太郎が真剣な目で追っていた以上、敵認定せざるを得ないが。


 とりあえず、嵐が去って。

 パジャマ姿をさらしている現状に、気恥かしさを覚えながら、わたしはふたりに頭を下げた。



「助かった。ありがと、ミラ、平太郎……でもなんでウサミディールに入ってたの?」



 わたしが目を向けると、ミラはしどろもどろに弁解を始める。



「いや、それは、平太郎と喧嘩になって、それで」



 バツが悪そうに答えるミラ。

 わたしはミラと平太郎、両方の顔を見ながら、問いかける。



「どっちが悪かったの?」


「それは……」


「俺だ」



 言い淀むミラに、平太郎がすっと口を挟んだ。



「平太郎?」



 驚いたような、ミラの表情。

 それを見て、わたしは平太郎に顔を向ける。



「じゃあ平太郎。ミラにあやまって。それで恨みっこなしで」



 三人のうち、ふたりが喧嘩すれば、残る一人が仲裁する。

 こういうのも久しぶりだなあ、と思いながら、わたしはふたりを交互に見る。

 

 しばらくして、平太郎はミラに対し、ゆっくりと手を差し出した。



「ミラ。すまなかった」


「……なんにも知らないのに気楽だな、織枝ちゃんは」



 ミラも、しばらくためらってから。

 あきらめたようにため息をついて、その手を取った。









 次の日。九条佐緒実は臆面もなく学校に姿を現した。



「昨夜の無礼をお詫びいたします」



 なんというか、堂々としたものだ。

 いや、謝ってくれるなら、いいんだけど。

 警戒半分のわたしに、お嬢様ははっきりと言う。



「滝本ミラさんのことは、きっぱりとあきらめます。そもそも前提が違っていたのですから、当然ですが」


「はあ、まあ、そうでしょうね」



 女みたいな外見の相手が、本当は男だったから、あきらめる。

 極めて普通のことに思えるけれど、彼女は女なのだから、よく考えればおかしな話である。


 それにしても、ずいぶんときわどい会話をしてる気がする。

 この人自分のレズ趣味が公になってもいいのだろうか。

 多分いいんだろうな、と思う。自分全肯定な人だし。


 彼女は手を差し出しながら、にこやかに宣言する。



「と言うわけで、これからは織枝さんにわたくしのことを“お姉さま”と呼んでもらえるよう、努力いたします」



 大型爆弾の投下である。

 クラス中にどよめきが走った。



「織枝さんって、やんちゃな妹みたいで保護欲をそそるんですわよね」



 目が完全に捕食者のそれだ。


 おかしい。

 なぜわたしに矛先が向くのか。

 なぜわたしがミラのつけを払わなくてはいけないのか。

 そして、わたしの友人であるところの三木さんは、なぜお嬢様の言葉に全力でうなずいてるのか。


 世の理不尽を嘆く。

 今日ばかりは、わたし自身がウサミディールに入って、誰かに相談したい気分だった。





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