兄といたづら
この話から妹の被害実録とかぶる箇所があります。そういうのが許せない方はお気をつけください。
携帯の行方不明が発覚して以来、休み時間のたびに翔に電話をかけてもらうも携帯はまったく繋がらなかった。なんだよ。どこにあんだよ俺の携帯。やっぱりいかに母さんを怒らせることなくこの事実を伝えるか。これを考えるしかない。う~ん。どう考えても晩酌時だな一番機嫌いいし。いやしかし楽しい気分を台無しにされたと逆に激怒される恐れも…。どぉぉぉ~~したらいいんだ!!詰んだ俺詰んでるよ!思わず机につっぷし唸ってしまう。
「――――ん。――。」
ん?今誰か俺の事呼んだ?顔を上げ周囲を見渡す。教室内はいつの間にかザワザワとした喧騒で満ちている。あれ?いつの間に昼休み?俺、タイムスリップでもしたのか?亡羊と周囲を見渡すと入り口にいた雅と目が合った。俺は思わず椅子を倒す勢いで席を立つ。げっ雅!まずい、あいつにだけはこの事を知られてはいけない。あいつと母さんはよく言う友達母娘ってやつでやたら仲がいい。知られたら確実に母さんに筒抜けだ。
緊張のあまりごくりと唾を飲み込む。教室内にも俺の緊張が伝わっているのか妙にシンとしている気がした。雅は怒っているのか何なのかよくわからない引き攣った顔で俺に手招きしている。なんだあいつ変な表情しやがって。いや今はそんなことどうでもいい、どうやってこの局面を乗り切るか、だ。
俺はなるべく平常心を装って周囲を威嚇しつつ雅に向かって歩き出す。俺がにらみつける方向からいちいち小さな悲鳴が聞こえる気がするが気にしない。歩くたびに机にぶつかっている気がするが気にしない。果ては転びそうにもなったが気にしないったら気にしない!これが俺の平常運転だ!平 常 運 転 な ん で す!
雅の元にたどり着くと彼女はさっきの怒っているのか何なのかよくわからない表情に、さらにこらえきれていないニヤニヤ笑いを貼り付けてこっちをみている。まさかすでにばれてる?
「雅。どうかしたのか?」
平常心。平常心。平常心。ばれてない。ばれてない。ばれてない。……ば れ て た!雅から無言で差し出されたものを見て俺は今までの行動がすべて無駄だったことを悟った。
「お前、これどうしたんだ?」
「今朝、それを拾った人から連絡があって預かってきた。」
っていいんじゃん!携帯あったなら無問題!!俺の未来が開かれた!!ありがとう雅。お前は俺の恩人だ!若干雅が不機嫌になった気がするが今はそんなこと気にしてられるか。あぁ、おかえり俺の影虎ちゃん(ストラップの名前)。
「マジかっ!何度かけてみてもつながらないし、どうしようかと思ってたんだよ!」
とりあえず携帯チェックだ。昨夜絶対充電したはずなんだよ。電源ボタンを長押しすると入る電源。ほぼ満タンの電池。…これは…こいつが電源切りやがったな。俺はジト目で雅を見つめる。すると何やら雅が言い訳を始めた。
なになに?授業中に鳴るのが嫌だったと?俺にかかってきた電話には出ないと?授業中は俺も授業中だよ!そもそもどこの誰のかわからねぇ携帯じゃねぇんだからマナーモードにくらい出来るだろ!そして他のはともかく翔の着信くらい出ろよ!知り合いだろ!幼馴染だろ!俺からに決まってるだろ!翔と俺がかわいそうじゃねぇか。
て か お ま え こ れ わ ざ と だ ろ !
まぁいい。今はそれは置いといてやろう。そ れ よ り も。
酷い目ってどんな目?雅ちゃん?