兄の携帯
前作最後で予告した兄視点のお話です。しかし前作は読まなくても読めると思います。むしろ2作目~ヒロインな兄の事情の続き。そちらと併せて読まれることをお勧めします。
携帯が……ない……。。。
朝練を終えて着替え終わったところでそれは発覚した。時間を調べようとポケットをまさぐったが、それはあるべき場所に存在しなかった。確か登校中はあったはず。やべえ。俺の脳裏には鬼の形相の母さんの顔がよぎる。
とりあえず携帯を鳴らしてもらおうと俺、相澤総司は隣で着替えている佐木優に電話をかけてもらう。ロッカーの中へ耳を傾けるも返事はない…。ついでに部室内からも返事はない…終わった…。こんな事母さんに知れたら説教フルコースだ。まずいな。いかにしてこの事実を母さんに伝えるか…重要なのはタイミング。やはり晩酌時だろうか…いやしかし……それでは……………
俺が説教回避に向けた脳内一人会議をしていると頭に衝撃がはしる。いてぇな誰だ!?と衝撃の発生源の方を見るとそこには腐れ縁の悪友、城戸翔の姿があった。何でバスケ部じゃないお前がここにいる?
「お前を回収しろって佐木から電話があったんだよ。」
ったく。オレは総司の保護者じゃねぇっつーの。そんなつぶやきが聞こえるが、当たり前だ!お前が保護者とかこっちから願い下げだよ。しかしまことに不本意なことに、幼少期からの長い付き合いにより、俺に何かあるとこいつに連絡がいくのはもはや日常と化している。文句を言おうと佐木を探すもすでに部室には俺と翔しか居なかった。あれ?誰もいない。
「もう予鈴鳴ってんだよ。」
俺がキョロキョロしていると呆れた様な声がかけられる。マジか!脳内一人会議に忙しくて気付かなかったぜ。さっきは願い下げとか思って悪かったよ。少しは認めてやってもいいかもしれない。
てか予鈴鳴ってんだったら急がなきゃ。大慌てで荷物をまとめ部室を出ようとしたところで、翔から鍵を投げ渡される。
「これ、ここの鍵。お前んとこの主将から預かった。返しとけってよ。」
主将!部外者に鍵預けるとか何してんすか!俺は鍵をキャッチして手早く部室に鍵をかけると、ひとまず教室へ向かった。
本鈴ギリギリに教室に着きSHRが終わると、翔に付き合ってもらい職員室まで鍵を返しにいく。廊下を歩きつつ何度か俺の携帯に電話をかけてもらう。
こちらは留守番電話サービスです。発信音の後メッセージを……
電話がつながらない。昨夜充電はしたから電池はあるはずなんだけどな。実はきちんと充電できてなかったとか?これじゃあ発見はまず無理じゃねぇか。脳内一人会議の内容をもっとまじめに考える必要があるかもしれない。俺は絶望的な気分で職員室から教室への道のりを戻った。
電源の入ってない携帯って留守電つながりましたよね?いまいち不安が残りますがスルーの方向でお願いします。