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夢みたいな恋したい☆  作者: 花恋
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「嫌なこと忘れる1番良い方法教えてあげようか?」


低いハスキーな声が私の耳元で囁いた

まるで悪魔の誘惑のように



ヤバイ…間に合うかな

今日は私が大好きなバンドのイベントの日

でも天気は生憎の雨

しかも色々あって時間はイベント終了ギリギリ



どうしてこんなことになったかというと…。

さかのぼること9時間前


「え…。」


大好きなバンドのイベントのことで頭がいっぱいで

もう1つの大切なことを忘れていた


私上條瑠璃(かみじょうるり)は中高一貫の中学校に通う中3だ

高校はそのまま上に上がるんだけど成績を元にクラスがわけられる

瑠璃が目指していたクラスは1番上

でも郵送で送られてた結果は1番上ではなく通常のクラスだった


「なんで…。」


部屋でベッドにもぐりながら通知を何度も見直す

けどそこに書かれているのは何度みても理系ではなく文系だった

利き手である左手で通知を握りつぶしながら

右手には大好きなバンドのイベントのチケットがある


「Butterfly」

私が今1番ハマってるバンド

デビューしてまだ浅いけどバンドの実力も顔も割と良いグループだ

何より瑠璃は曲と1人1人の声が大好きだった

さすがにデビューしてまだ浅いためにファンも多いとは言えない

でも瑠璃はこのバンドが大好きだった


「今日なんだよね…。

はじめての握手会…。」


ここは大阪

Butterflyの活動はもちろんおもに東京

大阪でイベントが開催されるのははじめてのことだった


ずっと楽しみにしてた

なのに予想外に進路がショックで身体が動かない

目からは涙が溢れ落ちベッドのシーツを濡らしていた


「いつも上手くいかないんだよね…。」


中学受験でも第一志望に落ちて今の学校に通ってる

肝心な所でプレッシャーに弱いのかな


そんなことを考えていたら時間はあっという間にたっていた

手にとった時計がしめしてる時間は午後5時

通知が届いてから8時間ほど経過してる

今チャンスを逃したら会えない

そう思い涙をぬぐい瑠璃は雨の中イベント会場へと急いだ


あるビデオショップの小さなイベントスペース

そこでイベントが行われる

たどり着いたビデオショップの入口では帰る人数人とすれ違った

急いで奥に進むと終了ギリギリに滑りこむことが出来た


「誰と握手しますか?」


スタッフの人が笑顔で話しかけてくれる。

私は会えるなら

この人と決めていた


(しゅう)さんで。」


バンドのギターをしていて低いハスキーな声が人気の人

スタッフさんにどうぞと案内された場所には愁さんがいた

正確には他のメンバーも握手を終えて

部屋の中に居るが瑠璃の目には愁しか映らなかった


「はじめまして。」


優しい声と共に差し出された手を握る

男の人独特の硬い手だった

間近でみる愁さんは歳の割に大人にみえた

確かメンバーの中で最年長の25歳


「は、はじめまして。」


手を握りながら震えた声を絞り出す

一生懸命愁さんをみて目をあわせた瞬間

愁さんがニコッと微笑み

もう片方の手が私の方に伸びてくる


「雨の中走って来たの?」


ただ濡れた毛先に触れられただけ

なのに全身に電流が走った気分だった

返事もできず固まっている瑠璃に愁は話を続けた


「でも目元がうるうるしてるのは雨のせいじゃないよね

何か嫌なことでもあったの?」


私を気遣うようにゆっくり優しく話してくれる愁さん

そんな愁さんのおかげでやっと落ち着いてくる


「あっ…はい。

でも今は愁さんとこうやって握手出来たので嫌なことなんて忘れました。」


そう言うと愁さんはしばらく黙りこみ

いきなり身体を引き寄せられた

あと数センチで抱きあってる状況になるぐらいに近い

でも身体は止まり愁さんの顔だけが近づいてきた

愁さんの顔は私の顔を通りすぎ耳元でとまる

少し唇が触れたかと思うと


「嫌なこと忘れる1番良い方法教えてあげようか?」


独特の低いハスキーな声で囁かれていた

熱いと息が瑠璃の思考をこれでもかと停止させる

倒れそうになった身体を愁さんに支えられ何かを渡される


「じゃあそろそろ終了で」


スタッフさんが終わりを告げる声をあげる

愁さんは私を離し手を振っていた

それにあわせて手をふりイベントスペースを出る


イベントスペースを出るとすぐに手のひらを広げてみた

愁さんから渡されたのは1枚の紙切れで携帯の電話番号、メアド、ホテルの名前、部屋の番号が書かれていた


いつの間に用意したんだろう

元々用意してたのかな

だったら今日は誰かに渡すハズだったのかなぁ…。

そんな暗い考えが廻るも瑠璃は家に帰ると

用意と、友達の家に泊まると嘘をつき家を飛び出した




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