治療
王城にぞろぞろ帰宅した騎士たち。
その中では、
俄然飛びぬけて消耗・衰弱している者がいた。
「・・っ」
ーーー私だった。
「少し、我慢しろ」
私しか、いなかった。
他の騎士は、この世にあるものとは思えぬ殺気を身に浴びて
身体全体が疲労している。
傷という外傷はないものの、
相当な精神ダメージと身体に受けた殺気が身に染み付いてしまったかもしれない。
王城に帰るころ、私の身体は力尽きていた。
「座れ。動くなよ」
今こうして、
寝台に座り、毒の治療を受けていることすら辛い。
ーー私の治療をするのは殿下だった。
殿下が私の腕を見て、神木の葉を傷口に当て
呪文を唱える。
誰にでもできる清めの呪文だ。
神木の葉の浄化の力は侮れない。
魔法に多少覚えがなくとも簡単に扱える代物だ。
いや、それよりも。
「っでん、か・・浄化は、私がーー」
何故、殿下が私の治療なんかしてるんですか
「お前のどこに自分の傷を手当てできる力があると
思っている?どこにもないだろう」
毒の浄化を行いながら、半ば怒り口調で言い返す殿下。
「っです、が・・、--」
殿下がやらなくてもいいことだ。
コレは他の人にも頼める代物だ。
しかしあろうことか、彼は・・--
「城に滞在している医者は
他の騎士のほうへつめよっている。
今頃になって痙攣を起こす奴がいるんだ。仕方ないだろう」
「医者にやらせるよりも、この葉さえあれば、
俺にでもできる。
・・それとも俺じゃ不満とでも言うのか?」
と、眉を寄せて有無を言わせぬ口調で
しかも真剣に問いかけてくるのだ、彼は。
俺では不満なのかと、淋しげに彼は問う。
普段の彼にはありえない・・はずなのだが、
そう見える私がおかしいのか、
彼が私に守られたことで罪悪を感じてるのかは・分からなかった。
「い、ぃいえ・・。
ありがとう、ございます、殿下」
普段の私だったら、身体さえ動けば、
殿下にこんなことはさせなかったのに。
苦い口を開いて私は彼に応えた。
こう思うことは贅沢なのかもしれない。
自分で盾になったというのに、
守る相手であり主である殿下にしてもらうなんて・・
殿下にさせたくない・・。
それは自身の気持ちであって
生贄としてきた、生きた盾としてきた、私の義務でもあった。
だが、それも身体の限界からは逃れられない。
すでに声以外、何もかも動かない。
睡魔すら襲ってくるような気さえした。
「お前に聞きたいことがある。」
突然、殿下が聞いてきた。
終わりに向かってどんどん突っ走ってこー!
と思います。