侵入者
私と殿下とルトとそのほかは、魔石の在り処にたどり着いた。
四方八方に他の隊を配置し、
私たち三人は固いガラスに安置された石のそばに立った。
「・・準備はいいな」
殿下の静かな言葉が耳にすっと入り込む。
「はい。」
「もちろんです。」
私とルトはコクリと頷いた。
屋敷の中はいくつか部屋があって、ここは、二階の広い広間にあたる場所だ。
どの部屋も電球に照らされ、白い光が一定に明るく照らしている。
部屋はわざとすべてを明るくさせて、
犯人を翻弄しようという作戦だった。
場所までは分からないはずだと。
しばし警戒し、いつでも対応できるように気を張った。
外はもう闇に染まり、暗くなっていた。
そろそろ盗人が来る時間帯だ。
もうそろそろ来るのではないかと、思ったそのとき、
一瞬、外でざわついた声が聞こえた。
それと同時に
パリーンッッ””
窓ガラスが一部破壊された。
飛び散るガラス。散らばる音。カツン・・--という靴音の響き。
そしてやみ色のフードをかぶった者が現れた。盗人だ。
「!?」
「!!」
「?!」
いっせいに部屋にいた騎士たちもそちらに振り向く。
その瞬間、
ヴァヴァアアンンッ””
盗人はえもいわれぬオーラを放った。
「!」
「・・!!」
「?!」
気配だ。プレッシャーというものだろうか。
圧迫する存在感が部屋にいる全員に襲い掛かった。
その異様なまがまがしい気配に、
ほとんどのものが固まり、動けなくなる。
殿下もルトも一瞬動けなかった。
私は、私だけが
このまがまがしい気配に懐かしさを覚えた。
ッボヴァッ”
魔法で編み出された火炎の球がためらいもなく
自分たちにむかって放たれた。
炎は赤々しく
そしてゆれよじってうごめく炎を集めたかのような球。
「・・水よ!」
私は手を突き出して、水の魔法を放った。
シュワッ!!!・・シュウゥウゥゥゥ--ーー”・・
炎と打ち消しあい、両者の技が消される。
魔力の力はほぼ互角だった。
「ほぉ・・。
まさかこの俺の気迫と魔法をやぶるとは・・ーー
俺より強い魔力の持ち主がこんな場所にいるはずなんてなーー・・」
感心がにじみ出た声にもう確信したような言い方。
「・・」
「おまえさんは、一体なにものかな!!」
ヒュヒュッ!!
彼が無数のナイフを指で挟み込み、
私のほうに向かって投げた。
「!?」
私はとっさに、石をかばいながらいくつか叩き落す。
シュッッズザザザッ
・・・・・・・・・・・・・・・カタンカタンッ
私の衣服にところどころ、かすられ、破られた。
特に両腕の衣服はぼろぼろだ。
もう素肌が見える。
石をかばったほうの腕には
ツゥーーっと、肌が切られ、血が滴る。
「レイ・・!」
「!!」
ルトが叫んだ。すぐに臨時態勢に立て直す。
殿下はただ盗人を見開いてみていた。
しかし、構えを取りつつ、私を心配そうに伺う。
「・・っ」
切られた瞬間、どうしようもなく腕が痣きはじめた。
身体が炎のように熱くなる。
これは・・毒?
やばい・・抑えろ私。
身体に異変が起きたら、身体は・・---
「やはり、そうか・・。
気配といい、魔力といい・・
そのしるしといい・・」
私を値踏みするかのようにフードを取り去りながら
盗人は呟いた。
「!」
「レイ、その模様は・・!」
「ッ”・・・」
か、身体が熱い。抑えられない。
そう思う中、ルトに呟かれた。
はっとして、己えの身体をみた。
すると、体中、
ぼんやりと、鎖模様が浮き出て、鈍い光を放ち始めた。
特に腕はくっきりと、鎖の模様が刻まれたばかりで
浮き出るようにはっきりしていた。
ドクンッドクンッドクンッ
心臓の音と共に鼓動するそれ。
・・あぁ・・、もうだめだ。
ばれてしまった。
私は心の中で落胆する。
私のことを知り、なお、相手を知る私には、
もう、追い払う手段は一つしかない。
それよりもこれ以上、いわせては・・---
「なんで
わが国の王家の直系の隠し姫が、そこで石守ってるんだ?」
あきれた声が部屋に響いた。
その言葉に誰もがあぜんする。
私だけは、その言葉と声に失望し、辛く苦しい身体で彼に向き合った。
「なんで・・っ違反者狩りのあなたが盗人なんて、まねをして、るの?」