表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/16

訓練場にて

途中、レミア視点で話が進みます。

俺は昼食を食べ終えた後、


「ファゼ、お前は先に行っていろ。

あとから、新人を連れてきてやるから。

訓練を始めていてくれ」


「おう、わかった。

ーーで?新人って誰だ?名前は??」


「あとでいいだろ、そんなもの。

早く行け」


そういえば、名前も偽名を使わせなければならないな。

俺は、そう思い当たり、ファゼに早くいけと促した。


「そんな邪険にするなって。

分かったよ、じゃあ、早く来いよ!」


「あぁ」


俺はうなずいて、ファゼを早々に部屋から追い出した。


しばらくして、コンコンッっというノックオンが聞こえた。

レミアだろう。


「入れ」


「失礼します」


一拍置いてからレミアの声が聞こえた。

いや、それよりも、少し低い。


がちゃりとドアを開け、ゆっくりと閉め、俺にそいつは向き直った。


「殿下、この男装でよろしいでしょうか」


「お前、本当にレミアか?」


俺は思わずそう疑ってしまった。

かつらは、短い黒髪で、服装は騎士の服装をしている。

瞳の色は蒼ではなく茶色で、きりっとした瞳をしていた。

胸も、さらしをしているからか、まっ平らだ。


男らしい体格にずいぶんと完璧に変装したものだと思いながら

別人ではないのだろうかと思ってしまう。


「ここに、男装して来いとおしゃったのは殿下ですよね」


彼が・・いや、レミアは怪訝そうな声で呟く。

本当に、口調はレミアだが、声と容姿が違うから疑ってしまう。


「あぁ、そうだ。俺が言った。

お前、その目の色と、声は、どうした」


「私が魔法で変えました。」


「そうか・・。じゃあ、服は?」


魔法も使えたのか・・!

そう内心では驚きながらもまた質問をする。


「途中見かけた騎士の服装を似せて、

魔法で作り出しました。」


レミアは淡々と答える。


「・・。お前、剣の腕に覚えは?」


「あります。」


「・・魔法も使えるのか?」


「もちろんです」


「じゃあ、魔法剣士か」


「そうなりますね」


・・淡々とした短いやりとり。

自分が問うことしかしていないのに、

最低限のことしか言わない彼女になぜか苛立つ。


「何の使い手だ?」


「特に決まった系統ではありません。

特殊体質ですから」


やっと、二言言ってくれたかと思ったら、

そんなあいまいな答えだった。


「そうか。

じゃあ、これから訓練場に行く。

偽名を考えておけ。それと一人称は“俺”にしておけ」


俺はそういって、部屋から出た。

レミアも俺についてくる。


「わかりました。

では、偽名は・・レイ、でよろしいですか」


「なぜだ」


「レイと呼ばれる時期がありましたから」


そう淡々と隠さずに答える。

俺が問いかけさえすれば、深く聞くこともできるだろうが、

なぜかそれはしたくなかった。


「そうか・・」


俺は歩きながらそううなずくことしかできなかった。



***レミア視点


私は、何故男装してまで、

殿下とともに訓練場に行くのだろうか?


そう私はたどり着くまで悶々と考えていた。


私は貰われた身。私は王子の盾。


それは変わらない。私に拒否権はない。

だがどうしても、答えを聞きたくなる。


だが、聞いたとしても返ってくる答えは・・

しっくりこないものばかりだった。


「ついたぞ」


殿下のその言葉にはっとして、周りを見回した。

がやがやと組み手のようなものをしている騎士たち。


私たちに気づいて一層ざわざわと騒ぎ出した。


「セザルーー!おそかったぜ!

それはそうと、こいつが期待の新人??」


そう叫びながら駆け寄ってきたのは、

私が昼食を運びに来たときにいた人だ。

そして、私に色目を使ってきた奴である。


殿下を呼び捨てにする、殿下とおそらく親しい人。

赤髪で、目の色はオレンジに近いような瞳をしている。


「こいつは・・」


「レイです。よろしくおねがいします」


殿下が一瞬彼に気圧されたのか迷いを帯びた声色になったのを察して

自分からそう名乗り、ぺこりと頭を下げた。


「おお、レイっていうのか。

俺はファゼだ。よろしくな」


ファゼと名乗った赤髪の男は手を差し出す。

私は少しためらったが、すぐに自分も差し出して握手を交わした。


そうか、こいつが、ファゼ。


「・・はい」


これだから男って言うのは、嫌いだ。


私は心底そう感じていた。


女に優しくすれば、ころっと手に入るとでも

思って色目を使う。

そして、男には男らしく己をさらけ出す。


女を下に見てる男はいけ好かない奴ばかり。

何故、他の侍女たちはファゼが好みなのだろう。

女なら誰でもいいようなこんな奴。


「ん?どこかで会ったこと、ある?」


「いえ、これがはじめてです。」


彼が何か思案顔で自分を見つめてきた。

ぞわっと悪寒が走るが、顔には出さずいいえと首を振る。


「まぁ、いっか。

じゃあ、さっそくはじめようぜ」


ファゼが木剣を早々に取り出し、私に押し付ける。

私が落さないように受け取ると、


「おい、まて。

俺を差し置いて勝手に進めるな。

レイをつれてきたのは俺だ。

まずは、新米騎士と戦わせろ」


殿下が半ば怒り混じりにそう割って入ってきた。


「ちっ仕方ないな。騎士隊長の命令とあれば了承しなきゃな。

じゃぁ、アルからレイと模擬戦やってくれ」


「承知しました、ファゼ副隊長!」


アルと呼ばれた茶色の髪をした男が、騎士の敬礼を取り、

木剣を持ち、私の正面にたたずむ。


「俺はアルという者っす。

よろしくっす」


そうぺこりとお辞儀されて、


「こちらこそ、よろしく」


と、お辞儀を返した。


そして、少し広い場所で、模擬戦が始まった。


木剣を構えて、私は相手を見据える。

久々の剣。

身体が高揚するのが、分かる。


「では、はじめ!」


「やーーーっ!!」


気迫を込め私に切りかかってくるアル。


ガガッ


私は木剣で受け止めた。


ガギッ


音を立てて華麗に剣を打ち返しながら、

私は攻撃へと転じた。


彼はとっさに受けようと剣を構えなおすが・・


遅い!



・・ヒュッ!!


木剣の付け根を狙って私は飛び込み、

ばんっと、はじき返し、


彼はしりもちをついたので、


キンッ・・・


彼の首へと木剣を付き示した。


「・・・・・・」


それは一瞬の出来事だった。

つかの間の静寂な時間が訪れる。


そして、次の瞬間、わぁあああと、歓声が起きた。


「そこまで・・!

勝者、レイ・・!!」


審判をやってたファゼがそう叫ぶと共に

再びすごいっという驚きの混じった拍手が送られた。


「ありがとうございました」


私は手を出して、アルと呼ばれた男に手を差し出した。


「いえ、こちらこそっす。

俺、完敗っす。」


その手をとってくれたので、私はグイッと彼を立ち上がらせる。


「レイ!君、すごいじゃないか!

アルを一瞬で負かすなんて・・!」


ファゼが駆け寄り、そう褒めちぎる。


新米騎士に勝てて当たり前。

私を誰だと思ってるの。


そういいたくなる気持ちを私は抑えて、ただ、


「恐縮です。」


そう言った。

私の能力は五感いや、六感の超絶した直感がある。

そして、今まで鍛えてきた剣の腕と魔法。


自慢するわけじゃないけれど、

生まれ持った能力を最大限にまで高めさせられたのだから

並大抵の人には負けない。否、負けるはずがない。


「さすが、セザルが目をつけた男だね」


「俺は、まだまだです」


私は苦笑してそう、呟いた。


「そう謙遜するなって。

じゃあ、じゃんじゃんやろうか・・!」


「はい」


私は、その言葉にうなずいた。


そうして、それから五、六人、模擬戦で倒すことになる。


そして、・・七人目。


身体がまだ羽のように動く。

しばらく鍛えてなかったのに、身体が再び思い出しているみたいだ。


「七人目、誰がやる?」


ファゼがそう皆に聞いたが、

新米騎士は一人を除いて誰一人立候補しなかった。


ただ一人を除いて。


「俺が、やります」


そう、強い口調で自信のある声が耳にとどろいた。


「ルト、お前が、か?」


「はい」


紫がかった髪色と、紫色の瞳を持つ男だった。

私を挑戦的な目で、そして怪しげに視線を向かわせる奴だった。




新キャラ、ルト登場・・!

これからルトがなにをしでかすかはお楽しみ^

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ