危機
「レミア!おいっ!!しっかりしろっ!!」
何度そう声をかけても彼女の意識は戻ることはなかった。
身体は次第に熱を帯びて肩で荒く浅い呼吸を繰り返す。
なぜここにレミアがいるんだ!
ファゼのヤツ、なんでーー・・・!!
そう何度も心の中でファゼをなじった。
だが、レミアのあの“せめないで”という言葉が
俺の心の声を抑えてしまう。
「王よ、この話はいずれにまたさせてもらう。」
ざっと、彼女を抱き上げて俺は立ち上がった。
ぎゅっと、だきしめて、早く戻らなければという使命感に襲われる。
「ファゼ、帰るぞ。すぐに!」
「セザル!彼女にはもう馬車に揺られる体力は残ってないはずだっっ
だから、まほうじんでーーー」
「っ!!そうだな、そうしよう。
王、移動陣の部屋を借りさせてもらう」
「・・どうぞ、お使いください」
弱弱しい王の声。あきらめたかのような力のない声だった。
バタンッ
王と言い合いした部屋の扉を俺は乱暴に閉めて
そこから離れた。
そして移動の陣を使う。
移動の陣は大きな魔力を消費する高度なものだ。
だから大抵は魔力の塊である結晶を代償に使う。
今日は、それをもっていない。
「セザル、俺の魔力全部使って!
俺のせいでもあるし、レイちゃんにはお前が必要だ」
「!わかった、そうする」
そうして、俺はファゼを残して移動の陣を使い、国に帰った。
***
すぐに、彼女を寝台に寝かせる。
「彼女が倒れた!早く医者を!!」
「はいっ!!」
侍女と医者をよびつけて、診させた。
気が気じゃなかった。
心配で、焦って、失いたくなくて。
ただでさえ、呪いを俺のためにつかったせいで消耗していたのに、
追いかけてきて、限界に達して倒れてしまう。
俺がなにもいわずにいったから、おいかけてきてしまった。
俺はバカだ。それもどうしようもなく。
「っーーー」
唇をかみ締めて、ぎゅっとこぶしを握り締めた。
言葉が、たりなかった。
彼女はきっと、あの国を滅びへと追い詰めようとすると思って
追いかけてきたのだろう。
俺の目的は違ったのに。
俺の目的は、お前をーーレミアを、婚約者にすることだった のに。
「殿下、人払いを」
俺にそういい、医者が診察を、終えた。
「!ああ」
ソノ言葉にいやなものかんじながら、人払いをした。
「殿下、レミア殿は、そう簡単に意識は戻らないでしょう。
ーーーーーー昏睡 状態です」
医者はいいにくそうに、それを告げた。