感情ばかりの言い合い
「!」
王の本音が出た。
ついに。やっと。
ここは、叩きのめすチャンスだ。
あいつは・・レミアはそれによって縛られ苦しめられてるのだから。
「娘だと、思いたくない・・ね・・--。
そこまで呪いとは恐ろしいもか?一国の王が恐怖するほど」
「!殿下は、知らないのだな。
この王家に付随するものなら誰でも知っているものなのだ、あれは」
「あの、呪いが?」
「王家の血筋は魔力を濃く受け継ぐ血統。
それはご存知のはずだ。
わが国は、少数の人口なれど、能力は希少なものを保持するものが多い。
この王家も無敵と呼ばれる能力を保持するからこそ王位についているのだ。
しかしそのリスクも大きい」
王は諦めたように語り始めた。
「それがあの呪いとでも?」
俺は眉間にしわを寄せて問いかける。
脳裏には、レミアのあの鎖の模様と、発動したときのことが思い出されていた。
あれは、本当に命を削っているように思える行動だった。
魔力をどれだけ消費したのか・・持続不可能な能力ともいえる。
「そうです。代々、より濃く受け継がれた者が縛られる呪い。
わが国の王位継承権は魔力の大きさによって順位付けられる。
ここは下克上で成り立っている国なのだ、強いものしか統一は不可能。」
「本来この呪いは成長段階で発症する呪い。
あれのように生まれたときからもつのは異例なのだ」
「・・だからといって迫害したのですか!」
怒りがこみ上げてきた。
すべてが言い訳のように聞こえた。差別する対象なのだという理由に。
「!」
王は俺の怒気に触れ、固まる。
「異例だから?
差別する理由はどこにもないじゃないですか。
自分の娘に愛のかけらも感じられない。
名づけたのは、王、あなたでしょう?」
レミアという名。
それは、この国の古語で、長寿 という意味だ。
呪いの能力を使うたびに命を削る彼女にとって
これ以上ない喜びのはずだ。
名前は、言霊のひとつだ。
言葉に魔力が宿る。
短命な彼女に長寿をあたえる。
なのに、その差別の様はどういうことだ!
「!!我は怖かったのだ。あれは、生まれたその日に呪いを宿し、
名をつけなければならぬという状況において・・恐怖した。
あの呪いは王家にあってはならないのだ。
それが王につけば国は滅ぶ。しかし魔力の器は
アレが一番大きかった。法則にのっとれば、あれがー・・だから」
アレ、あれ、あれ、あれ・・ーー!!
レミアをあれよばわりしかしない!
しかも理由にもなっていない、要領がえぬ話だ。
「レミアには、のろいがかかってるから、継承権を無くす!?
そこまでしといて、何故、過酷な状況を与えるのだ!?
あれは、呪いに苦しみ、親に恵まれず、忌み嫌われ孤独を味わってきたというのに!
魔力の大きさがそこまで重要なのか!?」
「じゅ、重要なのだっ!殿下にはわからんだろうが!
でなければ、国が滅んでしまう!王家を狙うやからは大勢いるのだ!」
「貴公の国は魔力に頼りすぎだ!!
策を考えたり、民の支持を得るのが政治をするものの務めであろう!?」
「だから、継承権を剥奪したのだ!!」
「剥奪だけにしとけばよかったのだ!
彼女にその後の過酷な人生を歩ませる必要がどこにある!?」
怒りのままにそう俺は叫んでいた。
このまま何をしゃべっても平行線な気がすると、
頭の片隅で思うが、理性よりも感情が勝って言い合ってしまう。
お互いが、そんな状況になってしまったとき、
バタンッ!!
「殿下ッ!!」
扉が開いた。
そして、言い合う羽目になった本人・・レミアが現れた。
「レ、レミア!?」
「!!」
「もう、私のせいで、
言い合うのはやめて、下さい、お二方ッ」
青ざめた表情で、レミアは声を響かせた。
「レ、レイちゃんっ、無理してはー・・」
なぜかそこにファゼもいた。
ファゼがつれてきてしまったというのか!
「ファゼッ!お前、何故ーー!!」
「え、だってっっレイちゃんが、連れて行けと・・--」
「殿下、ファゼさんを、責めないで・・--。
それより、もう、私の話で、言い合いは、やめて、ください。」
ファゼに視線を向けるが、ファゼは慌てるだけで、
レミアに制されてしまう。
レミアは、顔色が悪かった。
辛そうにお願いだからと懇願のまなざしを向けられる。
明らかに、無理していた。
「レミア、・・--」
「もう、私の、話はー・・。--ッ”」
彼女はなおも言い募ろうとした。
しかし、うめき、顔を苦しみでゆがめ、
グラッと、体が傾いた。
「レミア!!」
俺はすぐさま駆け寄って、
床に倒れる前に、彼女を胸元に抱き寄せる。
「おい!大丈夫かレミア!!おい!レミアッ!!」