2-1-8 決着
ディアスとの鍔迫り合い最中、アナウンスが響いた。
それは、ノッチの脱落を知らせるものだった。
ディアス側の力が一瞬抜ける。
それを逃さずに、力を込めて斧を押し返す。
そのまま彼は後方へと引きづられる。
ディアスはその場で止まった。
まるで脱力したかのように、天を仰いでいる。
「やられたのか、ノッチ……」
ディアスがそう言葉を吐露する。
その声には今までの気迫は感じない。
代わりに、哀愁が漂っていた。
しかし、その空気感は一瞬で通り過ぎて行った。
「じゃあ、手加減する必要はねぇなァ……」
ディアスがそう発した瞬間、また殺気が伝わってくる。
彼から発せられる風のようなものが体を通り、オーラが靡いて視界を塞ぐ。
木々も同様に、強く吹かれて木の葉が舞う。
咄嗟に二刀を交差させるが、それでも風圧は変わらない。
その場から徐々に後方へと押しやられるほど、
そして、二刀の間から彼の図体が見える。
彼は、笑っていた。
声を出して笑っているわけではなく、口角だけが上がっていた。
目の奥に光はなく、ただこちらを見つめる眼光だけが送られている。
狂気。
これ以上どう表せばいいかわからかった。
その図体を確認した瞬間、空気と風が一瞬だけ止まった。
気配だけがこちらに近づいてきている。
そのまま二刀を交差させる力に集中し、彼を迎え撃つ。
ガンッ。
二刀に衝撃がくる。
その瞬間に地面にめり込み、足がガクッと下がった。
目の前の斧にだけ集中したが、斧だけではなく右から拳が薙ぎ払いのように飛んできているのを目視した。
しかし、二刀で斧を受け止めている。
回避行動も難しい状態だ。
「ぐっ……!」
反応が間に合わず、そのままモロに喰らってしまった。
そのまま空中に投げ出され、森の枝が身体中に引っ付く。
勢いそのまま木に衝突した。
衝撃と共に、口から唾液が飛び出る。
地面に手足をつけ、我慢できずに咳き込む。
幸いなことに、装置はまだ反応していないらしい。
ディアスの足音が着々と近づいてきている。
「あれが本気だとでも思っていたのか?」
その声が聞こえて、頭を上げると目の前にはディアスが立っていた。
彼の影が体を覆い、後光で顔が上手く見えない。
「残念な頭をしてるな」
「——終わらせようぜ」
ディアスは斧を大きく振り上げた。
それは、頭上を目掛けて飛んできている。
思わず目を瞑る。
ガンッ。
金属同士が当たる音が聞こえる。
「待たせたわね」
目を開けると、そこにはラヴェンツァが立っていた。
メイスで斧を受け止め、地面が軋んで悲鳴を上げている。
その状態でディアスを右足で足払いをする。
ディアスはそれをジャンプして回避した。
その瞬間に斧が浮いた。
隙を見逃すことなく、空いている左足で脇腹に蹴りをした。
「うっぐ……!」
ディアスは呻き声をあげ、横によろけた。
巨石の前で脇腹を抑えてうずくまっている。
ラヴェンツァが前を見ながらも、こちらに手を差し出してきた。
「立ちなさい、やるわよ」
彼女の手を取り、地面から立ち上がる。
服についた砂埃を軽く手で払い、二刀を構え直す。
「嬢ちゃん、やるじゃねぇか……」
ディアスが立ち上がった。
不気味な笑顔をギラつかせ、今にも襲いかかってきそうな体制だ。
「キース、相手が立て直す前に行くわよ」
ラヴェンツァがそう言うと、彼がこちらに走ってきた。
ステップを絡め、右に二歩、左に三歩。
時に木々を切り刻みながら、テクニカルに移動してきている。
ガンッ。
ディアスの斧がラヴェンツァのメイスの柄に直撃する。
その地点から衝撃波が出る。
一瞬よろめきながらも、ディアスの背中を目掛けて二刀を振り下ろす。
肌に直撃する寸前、彼の黄金色の魂の形が増大する。
彩度が高くなり、揺らぎもかなり大きくなっている。
それに圧倒され、振り下ろすのが遅れた。
「ふっ……」
ディアスの笑いが聞こえる。
それと同時に、背中側に肘打ちがきた。
反応速度に圧倒され、思わず目を見開く。
「なっ……!」
みぞおちに攻撃が当たる前に、ギリギリで体を捻る。
打撃を避けることはできたが、彼がこっちを向いた。
そこに、間髪入れずに斧が振り下ろされようとしている。
咄嗟に二刀を顔の前に構えるが、もう目と鼻の先に迫ってきている。
間に合わない——。
「させるかっての!」
目を閉じた瞬間、ラヴェンツァの声が響いた。
ドンッ。
状況は把握できないが、鈍い音だけが耳に響いた。
その音と同時に、ディアスの攻撃に込められていた殺意が消えた。
目を開ける。
目の前には、ディアスが倒れていた。
そして、ファンファーレが流れる。
『ディアス・ラルゲイヌ、脱落!』
『勝者、キース・ラヴェント、ラヴェンツァ・ヴェイルコンビ!』




