151.閑話 鉄と星の防人たち
# 閑話「鉄と星の防人たち――EATO軍産複合体の重厚なる系譜」
21世紀の現代、大日本帝国を中心とする東アジア条約機構(EATO)が、世界の軍事・地政学的バランスにおいて絶対的な優位性を保ち続けている理由。それは、加盟国間で緻密に計算された「兵器の共通化」による莫大な軍事予算の圧縮と、それを実現せしめる巨大にして堅牢な『軍産複合体』の存在である。
国家の防衛は、兵士の勇猛さのみならず、工場の轟音と製図板の上の計算によって成立する。
深淵なる宇宙から、暗い海の底まで。帝国とEATO圏を支え、そして世界を睨む「鉄の血脈(巨大企業群)」の歴史と現在を、ここに紐解こう。
### 1.海と空の覇王――三菱重工業
EATO圏内において、最強かつ最大の軍事企業として君臨するのが**『三菱重工業』**である。
彼らの真骨頂は、その絶望的なまでの「スケール」にある。
EATO各国海軍の根幹を成す航空母艦、イージスシステムを搭載したミサイル駆逐艦、そして深海を潜航する静粛極まりない潜水艦までを、一手に建造する。日本本土(長崎、神戸、下関)のみならず、豪州地方の櫻港(史実のオークランド)や和泉、韓国の釜山、ロシアのウラジオストク、北中華の青島にまで巨大な拠点を持ち、EATOの海洋覇権を物理的に下支えしている。
航空部門においても、その影響力は計り知れない。
EATO内で共通規格化された主力海軍用戦闘機『流星型』(各世代の合間を縫うようにアップデートされる.5世代設計の傑作)や、F-16の運用思想に似た『疾風型』多目的戦闘機を製造し、加盟各国に部品工場と完成品工場を張り巡らせている。さらには『JY型輸送ヘリコプター』や『JK型哨戒ヘリ』、不規則起動型巡航ミサイル、空対空ミサイル(AAM)の本体製造まで、およそ「空を飛び、標的を破壊するもの」のすべてを網羅する。
しかし、三菱の真の恐ろしさは、この巨大な軍需部門が「企業全体の半分」に過ぎないという点だ。
残る半分の民需部門では、原油の動脈たる大型石油タンカーや輸送船で世界を席巻。航空機では、小型ジェット旅客機と中小型プロペラ旅客機部門で世界シェア1位を独走している。さらに、火力発電所の心臓部である大型ガスタービンから、産業用エンジン、コンプレッサー、エアコン、そして原子力関連の全設備に至るまで、人類の生活インフラそのものを創り出している。
破壊と創造。その両極を極めた、まさに帝国の巨大なるリヴァイアサンである。
### 2.天空の支配者――世界のTOKUGAWA
航空部門において、三菱と世界を二分するもう一つの巨頭が**『世界のTOKUGAWA』**である。
愛知、静岡、群馬、和泉、さらには満州の大連、ロシアのサンクトペテルブルク郊外に広大な工場群を有する(軍需拠点としては和泉と高崎が中核を担う)。
TOKUGAWAの軍事の華は、空の絶対的支配者たる『紫電型』制空戦闘機である。
近年は第六世代戦闘機およびドローン兵器の開発に莫大な予算を投じており、無人機を従えて飛ぶ「ドローン随行型」技術の実用化を急ピッチで進めている。
一方、民間機市場においては、小型機を三菱に完全売却し、大型機の製造に特化。欧州のエアバス、米国のボーイングと正面から殴り合う「空の巨人」である。
その象徴が、かつての300型の系譜を継ぐ総2階建て・500席級の超巨大旅客機**『TOKUGAWA 810型 / 820型』**だ。810型は長距離、820型は超長距離仕様であり、帝都・羽田と豪州最大の都市・志度新間の膨大な人員を一度に捌くためだけに存在するような「空のマンモス」として、世界の空に君臨している。
また、200〜300席クラスの双発広胴機『TOKUGAWA 350型 / 270型』も、アジア圏で圧倒的なトップシェアを誇り、帝国の空の物流を支配している。
### 3.星と炎の鍛冶場――芸州徳川重工業 & IHI
天空のさらに上、大気圏外と弾道ミサイルの領域を支配するのが、広島に巨大な企業城下町を構える**『芸州徳川重工業』**である。
彼らは、ロケットのエンジンを除くすべての宇宙関連部品を製造し、さらにはICBM(大陸間弾道ミサイル)をはじめとする核ミサイル開発を国家から一手に請け負う「帝国の最終兵器」の番人だ。その精密な技術力は、広島市内に集積する無数の精密部品メーカー群によって支えられている。
同時に、小銃、迫撃砲、重機関銃、小型誘導弾といった「陸上における小型兵器」の国内トップメーカーでもあり、宇宙の彼方から泥まみれの塹壕まで、兵士たちの命を預かっている。
そして、その芸州徳川のロケットや、TOKUGAWA・三菱の戦闘機に「心臓」を提供しているのが、渋沢財閥筆頭たる巨大企業**『IHI』**である。
平成初期までは「石川島播磨重工業」の名を冠していたこの企業は、福島、東京、神奈川、苫小牧、鹿児島、和泉に拠点を持ち、軍事用ターボファンエンジンからロケットスラスター、さらには民間の物流機械、エネルギー機械に至るまで、「推進し、動かす力」のすべてを掌握している。
### 4.波涛を切り裂く鉄の城――村上造船 & 川崎重工業
造船領域における三菱の最大のライバルが、呉に本社を置く**『村上造船』**である。
民間船舶では今治、因島、高松、櫻港、和泉のドックで巨大船を建造。軍事部門では、三菱と同様に空母からミサイル駆逐艦、潜水艦までを建造する技術力を持つ。
村上造船の最大の特筆事項は、舞鶴、横須賀、大湊、呉、明爾湾、虎玖に持つ「軍事向け修理設備」である。これは帝国海軍工廠と村上造船のみが保有を許された特権的な強みであり、戦時下における艦隊の生存性を裏から支えている。
もう一つの巨頭が**『川崎重工業』**だ。
神戸に企業城下町を構え、兵庫、愛知、岐阜、さらには志度新郊外に工場を持つ。沿岸警備隊向けの巡視船、帝国海軍の哨戒艦、そしてEATO内の弱小国向けの中小型軍艦を大量生産する「海の量産機」のプロフェッショナルである。民間部門では漁船製造国内1位を誇る。
川崎の技術は海に留まらず、陸上では世界市場を日立、アルストム、シーメンスと四分する鉄道(新幹線)メーカーであり、民間用バイクでも世界を席巻。北中華、満州、韓国にも巨大な民間工場を展開している。
これら重工業の巨躯に「神経と頭脳」を吹き込むのが、国内三大電子メーカーである**『NEC』『HITACHI』『三菱電機』**である。レーダー、火器管制システム、通信機器など、ありとあらゆる軍需品の電子頭脳は、彼らの手によって供給されている。
さらに、EATO内最大のロボットメーカー**『FANUC』**が、近年軍事領域へ本格参入。ロボット犬、人型警備ロボット、AI搭載ドローンなど、次世代の無人兵器群を戦場へ次々と送り出している。
### 5.大陸の鋼鉄と通信網――韓国、満州、北中華
EATOの軍事力は、帝国本土の技術だけでは完結しない。大陸側の同盟国もまた、独自の強みで巨大な歯車を回している。
**【韓国】**
陸戦兵器、とりわけ主力戦車(MBT)においてEATO内シェア1位を誇るのが、韓国の**『現代重工業』**である。
三菱と共同開発した小銃などの重火器から、最新鋭の戦車、攻撃ヘリコプターに至るまで、陸上における圧倒的な火力を提供する。(なお、装甲車分野においては、軍事特化の現代重工業と、民生応用技術に長けたTOYOTAとで棲み分けがなされている)。航空機の自国開発は行わず、国内にTOKUGAWAと三菱の工場を誘致することで、合理的な防衛網を構築している。
**【満州】**
半官半民の軍需メーカー**『満州重工業』**が、現代重工業と競合する形で攻撃ヘリコプターの開発・製造を行っている。また、彼らは過酷な気候に耐えうる巨大な「農業プラント」の建設においても世界トップクラスの技術を持つ。
**【北中華連邦】**
情報通信戦の要を担うのが、**『HUAWEI』**の軍事通信システムである。陸戦兵器の北中華内への供給は、『天津軍需集団』と『武漢軍需集団』が強力なネットワークを構築。さらに北京郊外には、三菱重工業と芸州徳川重工業の巨大メガファクトリーが鎮座し、EATOの巨大な生産拠点として機能している。
### 6.北の大国の遺産と世界の巨竜たち――ロシア王国、そして西欧・米国
かつての冷戦時代、世界の半分を支配したソビエトの遺産を引き継いだ**『ロシア王国』**。
しかし、その巨大すぎるシステムは、良くも悪くも鈍重すぎたため、時代の波に飲まれ多くが解体された。現在生き残っているのは、**『ロステック』**と**『カラシニコフ』**の二大軍需企業である。
航空機部門は完全に再編され、『ミグ』はTOKUGAWAの傘下へ、『スホーイ』は三菱の傘下へと下った。しかし、これは決してロシアの航空機生産能力の喪失を意味しない。製造委託と共同開発という形で、彼らの野性味あふれる航空工学のDNAは、EATOの最新鋭機の中で今も脈々と生き続けている。
特筆すべきは、ミグとスホーイから切り離された宇宙部門**『RSC(ロシア宇宙重工業)』**である。彼らは芸州徳川重工業、IHIと共に、EATOの宇宙戦略において極めて重要な一翼を担い続けている。
そして、EATOという巨大な軍産複合体が対峙する、世界の巨竜たち。
ドイツの『Airbus』、イギリスの誇りたる『Rolls-Royce』と『BAE Systems』、フランスの『Safran』。イタリア危機に乗じてスペイン政府が介入し、国境を越えた巨大企業となった『Leopard』、スペインの雄『Indra』。北欧連合の空を守る『SAAB』。
そして何より、巨大な太平洋の対岸で君臨する米国の『Boeing』と『Lockheed Martin』。
大日本帝国とEATOは、これらの世界的巨大企業群と技術の粋を競い合い、時に牽制し、時に水面下で技術を交差させながら、21世紀の不安定な平和を強靭な「鉄と星の力」で縛り付けている。
空を覆うメガ・ジャンボの航跡も。
深海を這う潜水艦のスクリュー音も。
宇宙空間で静かに瞬く人工衛星群のレンズも。
すべては、この巨大で精緻な軍産複合体の胎内から産み出された、人類の叡智と業の結晶なのである。




