イケナイ関係のまま、時は進み出す。
《日時? 夜 ルイの部屋》
――お昼寝して、添い寝で終わる筈が無い……。
体が……バラバラになりそうなくらい痛い。
ルイ
「はぁ……疲れたね?」
総司
「あぁ……もう無理だ……終わりだ……」
ルイ
「私も……もう動けない――」
なんと言えばいいか、プロレス? それとも大運動会……?
まぁ……それに――物凄い狂喜が混ざってもう……。
とにかく、凄まじい事が起きていた。
総司
「まぁ……“本当にやる事ねぇ”もんな……」
ルイ
「ふふっ……“お互いそうだった”――」
コッチの世界も、現世もやる事は変わらない……。
家に帰ってピーするか、ピーするか、ピーするかだ。
ルイもピーがピーで、ピーピーピーピーピーだ。
しかし、それが――。
相手が出てきたもんなら、それはそれはもう……。
大ピーーーーーーにしかならない……。
歓喜を越えて、超えた狂喜だ。
これが動画なら続きは〇〇で♡
まさに、これが釣られクマーなのだ。
そして――ルイはとても叡智なのだ……。
とてつもなく、果てし無く。
総司
「なぁ……いつまでもこうして、いられたらいいな」
ルイ
「ふふっ……言ったでしょ? 死ぬ時も一緒だって」
総司
「だと……良いんだけど――」
俺はルイのベッドの上でボーッとしていた。
小さな豆電球に照らされて、薄暗く照らされた白い天井を眺めながら。
直ぐ側にはルイが居て……とてもとても幸せな時を過ごしている筈だ。
でも……きっとこれから“何かが始まる”。
――シャワっッ……ザザッ――。
ルイ
「ナニ考えてるの……? ボーッとしちゃって」
総司
「……いや、何でもない」
……ゴロンッ――。
ルイ
「あっ……もう――何なのよ……はぁ……」
俺は抱き着くルイを優しく押しのけ、背を向けた。
色の無い世界は色付き始めた。でも……。
きっと、こんな幸せな日々は続かないモノだって。
そんなにこの世界は甘くは無いのであろう。
楽しい楽しいファンタジー世界――。
きっと……“そんなモノはドコにもない”。
オジサンとは疑い深いモノなのだ……どこまで行っても。
一悶着は必ずやって来るモノで、どのくらいの規模なのかは分からない。
でも……きっと神様がいるとすればそれは――。
こんなにも幸せな俺を、許してはくれないであろう。
幸せな分、税金みたいに押し寄せる物がある。
苦悩や苦難、立ちはだかる壁が絶対に現れる。
総司
「ルイ……“お前こそ理解してる”んだよな?」
ルイ
「うん……“知ってる”。これから色々ある事くらい」
総司
「“一生を遂げるんだ”――悪いが付き合ってくれよ」
ルイ
「えぇ……“勿論”」
――シャワっッ……ギュッ――。
総司
「……ありがとう」
ルイ
「こちらこそ……」
ルイは俺の背中に抱き着きながら囁いた。
総司
「…………」
俺達は本当に何もかも、さらけ出し過ぎた。
もう……戻る事は出来ない。
お互い、綺麗な部分も、汚れて穢れた部分も……。
――全部、“ぜんっぶさらけ出した”。
もう……“元には戻れない”。
いや……違う。“戻りたくないのだ”。
これが偽りでも本物でも構わない――。
一度手に入れた幸せ……そんなモノを手放したくなくて、堪らない。
ルイ
「すぅ……すぅ……スゥ……」
総司
「……俺に“この娘を守れるのか”……?」
気がつけば寝息を立て始めて、眠るルイ。
現実的な事を考えてしまえば、勝手に体が震えてくる。
そんなモノを必死に必死に抑えて、歯を食いしばる俺。
総司
「ふっ……ふぅ――“やるしかねぇんだ”……」
総司
「“この世は”……“いつだって”……」
――グッッ!! グググぅ〜〜っッ!!
総司
「世の中、“やるか”……“やらねぇか”だけだ」
俺は強く拳を握り、震える体を無理矢理抑え込んだ。
はたから見れば、ただの気弱なオジサンだ。
でも……それでいい。自分を偽らない。
世の中はどこをどうとっても、やるかやらないか。
それ以外の選択肢は用意されていないのだ。
苦しくても、悲しくても、何があろうとも……。
前に進み出すしかない――。
生きるって事はそう言う事なのだから。
――ギュッ……。
ルイ
「安心して……“不安なのはみんな一緒”――」
総司
「……なんだよ、起きてたのかよ……ハァ――」
ダサい場面をルイに見せてしまった。穴があったら入りたいって場面はきっと、今なんだろう……。
ルイ
「うふふっ……そんなに早く寝付けないわ?」
総司
「でしょうね……なんかドキドキしてるし」
背中に伝わるルイの心臓の鼓動――。
とても熱い温もりに柔らかな肌の感触――。
どこを切り抜いてもドキドキしていた。
ルイ
「だから一緒に何もかも……“戦うの”」
総司
「戦う……か――」
いつからだろう。俺が本気で戦わなくなったのは?
子どもの頃は何だって出来る気がして、自由に暴れ回って、人生を謳歌していた。
でも……時が経つにつれて、その眩い光は徐々に輝きを失って、濁って行った――。
社会の歯車にまんまとハマって、まるでロボットだ。
同じ事の繰り返しの毎日を送り、皆と同じ様な動きに同化して……。
色鮮やかな景色は――“色を失った”。
ルイ
「そう……戦うの……“何時だって私達は”……」
総司
「……あぁ、分かってる」
そうだ――思い出した。
戦う事を忘れ、ただ同じ日々を送っていなかったかって。
頑張って何かと向き合い、戦っていた時は何時だって、輝いていた。
夢や希望を持っていた時は、何時だってキラキラして、毎日が楽しかった……。
どうして戦わなくなったのだろうって。
ルイ
「戦う事ってね? “例え世界が変わっても”……」
ルイ
「“決して変わらない”」
総司
「うぐっ――そうだ……な――」
ルイ
「大丈夫――“お互い支え合って生きて行こう”」
男泣きする俺を気遣う様に、ルイは体をスリスリさせる。
正直、今だって不安だ。折角転生して拾われた命。
それが――いつか終わってしまうのではないか?
そんな恐怖と必死に戦っている。
――ギリッ……リッ……。
総司
「ふぅ……戦うか――“この世の全てと”……」
歯を食いしばり、新たに決心を固める。
世の中、なるようにしかならない。
でも……戦いからは避けられない。
流れ流れ着いた先にはきっと――戦いが待っている。
戦いを降りたヤツから堕ちて行く。そんな世界の中で、戦わない奴はただ終わるだけ。
生きて何かを得たいならば……戦うしかない。
それが“この世界の存在証明”なのだから。
ルイ
「世の中ってね……?」
総司
「んっ……? なんだ?」
ルイ
「変わってない様で……“実は変わってる”の……」
総司
「あぁ……」
ルイ
「物質的な事じゃない、“色んなモノが変わってる”」
ルイ
「表面上はあまり変わらなくても、内面は変化する」
総司
「分かってるさ……」
この手の話は説明するのが難しいが、それでしかないのだ。
ルイ
「だからその“変化と戦うの”」
ルイ
「じゃないと……“生きられない世の中だから”」
総司
「あぁ……その通りだ」
この世界は常に変化している。変化しないモノはない。物質的な意味ではなく、物事においての話だ。
例え不変であるとされる物質があるとする。
でも……長い年月を経た後はどうなる?
同じ性質を保つ事は出来るだろうか?
きっと……それは出来ない――。
いつかモノは壊れ、始まりがあれば終わりもある。
変わらない様に見える世界、世の中でも……。
実は小さな変化は起き続けていて、ただ……人々はそれに気が付かないまま、日々を過ごす。
何時だってそうだ。何かを決断する時、必ず人はイエス・ノーで判断する。
それだって一種の戦いなのだ。
世の中にはそんな戦いが沢山あって、人々はそれと必死に戦っている。
自分の意思を持たず、流れ流されたヤツから脱落するのがこの世界だ。
得られるものはナニか……“諦めと言う快楽”だけ。
きっと俺は――そんな諦めと言う快楽にドップリ浸かって、自らこの世界の色を失わせた。
曖昧であやふやな状態のまま、生きる事を選んだからだ。
でも……それはここいらで終わりだ。
そんな俺にも……“護るべき者が出来た”。
総司
「…………」
――グルっッ!! ガバッッ――!!
ルイ
「えっ……?」
総司
「ルイ……“俺がお前を”――“護ってやる”」
ルイ
「うん……“最後の最期まで”――“私を護って”……」
まるで最初からクライマックスシーンだ。
ここで綺麗に終わればどれだけ良い事か。
でも終わりじゃない……ここからがスタートラインだ。
俺はルイを抱き寄せながら、何度目になるか分からない、決心を固める。
総司
「“絶対に”――ギリッ……“護る”」
俺はルイとの未来を手放したくない――。
その為に……俺は戦い続ける道を選んだ。
ルイ
「はぁ……暖かい……“ずっと恋しかった”」
総司
「俺もだ――“いつかこんな日”がやってくれば良いって、本当は思っていた……」
ルイ
「えぇ……ほんっと――“長かったな”……」
総司
「あぁ……待ちくたびれて疲れちったよ――」
ルイ
「ふふっ……“ゆっくり眠りましょう”……?」
総司
「そうしよう……ほんっと――疲れた」
ルイ
「うん……」
そのまま俺達は――微睡みの世界へ堕ちて行く。




