語ろうか、お互いの事を……。
《日時? 朝 ルイの家》
――あれから慌ただしく食材を買い漁り、無事ルイの家まで辿り着いた。
……コトっッ――カチャッ――。
テーブルには熱々なお茶と、目玉焼きに食パンが2枚。
それ以外は……無い。
総司
「……朝だな、うん――」
ルイ
「うん……今日のご飯はお互い“コレで終わり”」
総司
「お……おん――い……頂きます」
ルイ
「ええ……ゆっくりと味わって食べてね?」
総司
「……た――足りない……トホホ……おぉ〜〜ん」
ルイ
「仕方がないじゃない――お金が無いのよ……」
そう、これは朝食ではない。朝昼晩の全てだ……。
どうしてこんなにお金が無いのかが、今後暴かれる事であろう。
正直、あまり聞きたくない事だった。
総司
「ふぅ……そんじゃ、本当に頂きます」
ルイ
「えぇ……どうぞ?」
総司
「あぁ……」
そのまま、なんだか重苦しい空気が流れて――。
《日時? 朝 ルイの家》
総司
「ふぃ〜〜食った食った!!」
爆速を超えて光の速さで食事が終わった……。
ルイ
「もぐもぐ……んっ――もう食べたの?」
総司
「まぁ……こんなもんだろ?」
この世界では違うのかも知れないが、現世はとにかく忙しいモノなのだ……。
仕事して家に帰って、飯食うて風呂入って、ちょいと娯楽を挟んだら寝て、また仕事行っての繰り返し。
仕事のお昼休みは世界最速で飯をかっ喰らい、さっさと休むが一番理想のムーヴだった。
日常生活では如何に時間を作り、休憩時間を確保出来るか……それが一番大事な事だった。
じゃないと多分、身が持たないのだから。
ルイ
「む〜〜“貴重な食事”なのに……」
ルイは可愛らしくムスッとした表情を浮かべながら、俺を見ていた。
めっちゃ怒ってる感じはするが、容姿が良すぎて全然怖く無い……。
総司
「“貴重だから”だよ。君にはまだ早いねこの感覚は」
ルイ
「ふぅ……なに言ってるんだか――」
総司
「そのままの通りだ。さっ? ゆっくり食べな?」
俺はそのまま熱いお茶を啜る。食後にカラッカラになった喉を潤す、熱々なお茶。
本当に五臓六腑に染み渡る様で最高だった。
総司
「――ッカァ〜〜うんめぇ〜〜んほぉ〜〜!?」
ルイ
「……幸せそうで何よりだわ?」
総司
「あぁ……最高だよ――ほんっと……」
貴重な食事、それを一気に食べて、極限の美味さを感じながら、渇いた喉を飲み物でぶっ放す。
この美味さはきっと、男にしか分からない感覚だろう。
命をかっ食らうこの感覚と速度こそが、男の食事である!!
自分でも良く分からない――。
でもそれでいい、これこそが男の食事なのだから。
――カチャッ……。
ルイ
「ふぅ……ごちそうさま」
総司
「こちらこそ、ごちそうさま」
こうして優雅? な、食事シーンは幕を落とす。
そして――ここからが本番だ。
ルイ
「それで? 一体、“アナタは何者”なの?」
自分が何者かだって? そんなのは決まっている。
俺はただの……。
総司
「ふっ……はっ?! 俺か――“ただのオジサン”だ」
それ以上でも、それ以下でもない。
総司
「ルイ……お前も気付いているだろ……?」
総司
「俺が――“コチラ側の人間じゃない”って」
ルイ
「……えっ?」
総司
「……えっ?」
正直、お互いポカーンとしていた。
俺達の頭の上には、疑問符が浮かんでいたからだ。
ルイ
「ちょっと待って? 話が噛み合わない……」
総司
「いやいやいやいやいやいや……コッチこそ?」
完全に俺達は硬直していた……。
あれ? 変な事言ったっけ? そんな様子なのだ。
ルイ
「いや……単純に、“コッチの境界に生き来出来る人”かなって?」
総司
「は……い?」
謎が謎を呼ぶとはこの事だった。悪意の塊の様なモノを感じた、謎の猫耳お姉さん。
それに――コッチの境界とは何の事だと。
ルイ
「いや……だって、コッチの世界に人間は居ないし」
総司
「待て待て待て、それは俺も見たから分かるさ?」
一体、何の話をしているのか分からなくなる。
コッチの境界とは一体、なんの事を指すのか……。
ますます話が分からなくなる。
ルイ
「ふぅ……簡単な話よ、“境界の向こう側には居る”」
総司
「だから、“境界”ってなんだよ?」
ルイ
「詳しくは分からないけど、“居るらしい”の人間が」
――ガシャガシャ!!
総司
「はぁ……何がなんだか分からねぇよ――」
俺は思いっ切り頭を掻きむしりながら、俯く。
あまりにも曖昧で、謎に満ちたこの異世界に。
ルイ
「そう言えば、コチラ側の人間じゃないって言ったよね?」
総司
「あぁ……そうだ。“この世界に存在しない人間だ”」
ルイ
「つまり……“境界の向こう側の人間じゃない”と?」
総司
「そうだ、その境界は知らねぇが……」
総司
「“全部を引っくるめても”――“俺は存在しない”」
このままだと、話がまとまらない。だから俺は全てと表現した。
きっと、これが今出来る最適解なのだ――。
暫くポカーンとしていた様子なルイだったが、やっとキリッとした表情を見せ始める。
ルイ
「つまり……“本当に別の世界”からやって来た?」
総司
「あぁ……そうだ。“こんな世界には居なかった”」
ルイ
「なる……ほど――ね」
総司
「これが全てだよ。元の世界でも俺はオジサンだった」
悲しい事に多分……容姿はほぼ変わっていない。
変わった事は、ほんのチョッピリ若返った……?
肌感や腕毛が薄くなったくらいの変化だろう。
本当にどうでも良い事だった。
ルイ
「そっか……何となくだけど、違和感はあった」
総司
「ははっ……そりゃお互い様だろう?」
ルイ
「そうね、お互い――“見慣れない”ものね?」
総司
「あぁ……本当にな――」
見慣れないなんてモノじゃない――。
今だって、何かの夢を見ているのかも知れない。
もしくは、本当にオーバーテクノロジーなVR空間に俺が居る?
その線はどうしても拭えないのだから。
ルイ
「んっ……? どうしたの? 私の顔をジロジロ見て」
総司
「……いや、何でもない」
だって……あまりにも“リアル過ぎる”んだ。
ピチピチして、ツヤツヤした褐色肌に――。
とっても美しくて可愛らしくて……。
とっても凛々しい姿の、美少女褐色エルフが目の前に居るだなんて。
それだけじゃない――息遣いも、妙に生々しい叡智な香りも、何もかもがリアル過ぎて、意味が分からない。
本当にココは現実なのか? 夢でも見ている?
それとも――仮想空間の中に閉じ込められている?
そう思ってしまえば、ただグルグルと無限ループするだけ。
総司
「いや……“何かあるとすれば”――」
ルイ
「何かあるとすれば……?」
ただ、これだけは聞かなくてはならなかった。
総司
「俺達って……“存在して実在してる”よな……?」
ルイ
「ふっ……“何を当たり前の事を言ってる”のよ――」
ルイ
「私もアナタも存在してるし、実在してる」
総司
「ははっ……そう――だよな? 変な事言ってごめん 」
ルイ
「少なくとも、“私は長い間ココで過ごして来た”」
ルイ
「アナタも――“全く別の世界で生きて来たんでしょ”」
総司
「あぁ……“多分”な」
こんな展開になれば、自分自身も疑ってしまうものだ。
本当に俺は実在していたのかって。
もしかしたら俺は全て、“作られた存在”なのではないかって。
あまりにも現実離れした展開過ぎて、俺もルイもそもそもが実在しない、仮想現実の世界の住民じゃないかって……。
そんな漫画やゲーム、アニメみたいな展開になる訳がないだろうって。
それに、それらに出てくる主人公みたく、すぐに現実を受け入れる訳がない。
オジサンって生き物は、とにかく疑い深いモノだ。
そう簡単に現実を受け入れられる筈が無い……。
――スッ……ギュッ――。
ルイ
「大丈夫、“私達は存在してるし実在してる”」
俺の震える手を強く握り、純粋で力強い目線を送るルイの姿――。
総司
「ははっ……だってさ――怖いんだ……」
ルイ
「何が……?」
総司
「今までの事全てが――“作り物”じゃないかって」
ルイ
「作り物……ね――あっははっ? “面白い話”ね」
総司
「へっ……? 何が面白い話なんだよ……」
ルイ
「“別に作り物でも良いじゃない”……くだらない」
総司
「えっ……何を――?」
――ガッッ!! グイっッ!! ズッ――。
ルイ
「“アナタが私に名前を付けてくれた”……」
ルイ
「それだけで十分――なの……」
……ちゅっ――。
総司
「…………」
ルイ
「どう? 落ち着いた……?」
総司
「…………“落ち着くワケねぇ”だろ――ったく」
テーブルに向かい合って会話をしていた俺達は、軽いキスをしていた。
ルイの些細な仕草に一気に現実感が湧いてくる。
そんな自然な動作を見せられたらもう……。
総司
「考え過ぎだな。ありがとう、落ち着いたよ」
ルイ
「――ったく、“全くどっちなのよ”……もう?」
正解はどっちもだ。とってもドキドキしたし、落ち着けた。
そして、とても冷静になれた。
やっぱりここは“現実”なのだと。
仮にそんなオーバーテクノロジーな仮想現実があったとする、ただのオッサンである俺の脳は耐え切れない。
何らかのケーブルを脳ミソに繋いだとしても、きっと一瞬で弾け飛んで、脳ミソも体もお陀仏だ……。
総司
「わりぃ、ワリィ、そんじゃ語ろうか……」
総司
「お互いの事……“その全てを”――」
《日時? お昼 ルイの家》
――あれから、俺達はガッツリとお互いの事を話し合った。
俺の世界での出来事、それから俺自身のコト。
ルイからは、自分が知っている事を全て聞いた。
ルイ
「なる……ほ――ど……“似た様な世界”なんだ」
総司
「あぁ……ここまで退廃的で荒廃はしてねぇけど」
ルイ
「それに……人間ばかりの世界に居ただなんて――」
総司
「あぁ……人間しか居らず、“エルフも居ない”――」
掻い摘んだ会話だったが、ある程度理解はしてくれるだろう。
世の中、何となくで大体意味は伝わるものだ。
ルイ
「ゴブリンも、オークも……“魔物”もだよね……?」
総司
「まぁ……俺からしたら“ルイも魔物みたいなモン”だぞ?」
ルイ
「ちょっと!! 本当に失礼な人ね? アナタって」
総司
「違う違う……人間ばかりの世界だったんだ」
総司
「そんな世界に居たらさ……“誰だってそう見える”」
凄く失礼な事を言っている自覚はある。
でも、オジサンからして見ればそうだ……。
幽霊や妖怪、その他に分類するモノは、魔物みたいなモノとして見てしまう。
だって、形容し難いモノにどう説明すればいい?
話は至って簡単だった。
総司
「で……“ナニか異論”はあるかな?」
ルイ
「まっ……まぁ――そうだよね、“存在しないから”」
総司
「あぁ……自分が知らない未知のモノは、そう見えてしまうモノだ」
ルイ
「でも……魔物だなんて本当失礼だわ?」
総司
「だから悪かったって!! 例え話をしたまでだ」
ルイはキッ――と不満そうな表情を向ける。
俺は、バツが悪そうに目を逸らして、別の話題を振る事に。
総司
「で……出られないんだろ? “境界の外”には……」
ルイ
「えぇ……“街の外に森がある”のは知ってる?」
総司
「知ってるも何も、さっき聞いたばかりだぜ?」
ルイ
「あ……うん、でね? さっき話した通り、外には出られないんだ……」
総司
「虹色の……“結界”――ねぇ……?」
ルイ
「えぇ……食料確保や報酬目当てで森には行くけど、最後に行き着く先は……虹色の壁があってね……」
総司
「ふむ……“隔離世界”――か」
隔離世界と言う表現は果たしてあっているのか?
それは分からない――でも、何となくそんな表現で合っている気がした。
ルイ
「えぇ……“それがこの世界”なの」
総司
「……で、“他のヤツは大丈夫”なのかよ?」
これには色んな意味を含ませている。
そう……“色んな意味”を。
ルイ
「まぁ……そうね、外の世界を知りたい気持ちは誰にでもあるの」
ルイ
「でも……それよりも――」
総司
「なっ……何だよ、言い淀んで……?」
なんだか重苦しい空気が流れ始めた気がする。
ズーンっと空気が重くなり、どこか張り詰めた様な圧迫感の数々――。
めちゃくちゃ厭な予感ばかりが増大して……。
ほんっと――ならない。
ルイ
「ふふっ――“無理矢理突破したら死ぬの”」
ガタッ――ダンッ――!!
総司
「ははっ……なんだよそれ? 死ぬ……?」
思わず動揺して、テーブルを揺らしてしまった。
ただ単純に、外に出られないだけかと思っていた。
この世界から出る事が出来ない……ただの箱庭。
そんな甘っちょろい考えは、すぐに吹き飛ばされた。
ルイ
「えぇ……今まで何度も外に出ようとしたモノは居た」
ルイ
「でも……いつも決まって“バラッバラの話”だけ」
総司
「魔法かナニかでヤラれるってワケ……か――」
ルイ
「そうよ、“この世界には魔法が存在する”の」
ルイ
「決まって話はこうだわ? また刻まれたってね」
総司
「んぐっ――何かこう……エグい話だなおい」
何だかヤバい世界に紛れ込んだ気がした。
現世では馬鹿みたいな死に方して、今度はどうだ?
まるでファンタジーモノな世界にお出ましだ。
ルイ
「……それ以降、そんな話が出てきても、みんな別に気にする事はなくなった」
総司
「ははっ――でも、“コッチの世界も同じ”か……」
ルイ
「どう言う意味……?」
総司
「そのままさ――“最初はみんな心配すんだ”……」
ルイ
「うん……」
総司
「でもさ……“そんな話題が増え過ぎ”たら?」
ルイ
「徐々に――“薄くなる”」
総司
「あぁ……そうだ、だから気に病む事はない」
総司
「世の中ってのは――“大抵そんなもんだ”」
ルイ
「ははっ……そうだね」
お互い思う所はある。でも、世の中はどうしょうもなく、そんなモノなのだ。
治安が年々悪くなり、景気が悪くなり、良くなる気配がない……。
するとどうだろう? 始めこそ反発はするだろう。
でも――それでも解決しなければ?
後は諦め、やがて“同化し始める”だけ。
それが当たり前なんだ、そんな状況なんだって。
“間違った事”があたかも、“正解にすり替えられる”。
見たくないモノに蓋をし続け、気がつけばゴミの山。
総司
「……悔しいけどな、“世の中ってこんなもん”」
ルイ
「ふふっ……“悲しいね”? ほんっ――と……」
総司
「あぁ……ほんっ――と……悲しい話さ」
ドコに行ったって問題は山積みで、解決しなければ間違った解釈で物事は勝手に進んで行くだけ。
やがて夢や希望も潰えて、朽ち果てるのを待つだけの人生に成り果てる。
何の為に生きているのか、何の為に働くのか、何の為に自分が存在しているのか――。
そんな存在証明すら出来ずに、ただ息吸って動くだけのモノに成り果てる。
これがこの世界にも、現世にも起きている事。
現世も異世界も本質的なモノは何一つ……。
“変わっちゃいない”。
――パンッッ!!
総司
「それはそうとだ、魔法について詳しく聞かせてくれ」
重苦しい空気に耐え切れず、俺は自分の頬を両手で叩いた。
何か、この空気を変えたくて。
ルイ
「あっ――えぇ、さっきも説明したけど、“街中じゃ魔法は禁止”」
ルイ
「後はそうだな……森の方は簡単な魔法は使えるけど、環境を破壊する程の大魔法は禁止なの」
総司
「そりゃそうだろオメェ……食いもんが消し飛ぶぜ」
ルイ
「そう、森には大事な食料である動物だったり、川もあるからね」
総司
「それが分かって良かった」
ルイ
「だから、森に入れば“大魔法を放てる魔力は没収”」
総司
「ほぉ……? そりゃ面白い」
大魔法を放てる魔力は没収――一体どんなカラクリがあるのか。
俺は非常に気になっていた。
ルイ
「吸い取られた魔力は街中に飛び回り、街中に配られて、“様々なモノに変換される”」
総司
「なら……この家の明かりも?」
不思議なモノで、本当にこればかりは現世と何ら変わらないのだ。
水道からは水が出て、暖かい温水のシャワーが浴びられて、完全に電気やガス……みたいなモノは張り巡らされている。
ルイ
「そうよ。ただ……“毎月使用量を取られる”わ?」
――ずごぉッッ!! ドッ――!!
総司
「オイオイ……“超絶現実”じゃん……」
俺は思わずテーブルに突っ伏した。
だって……あまりにも現実味を帯びているから。
ルイ
「全く……既に魔力吸い取られてるのに、更に使用量取るってなんなのよ……」
総司
「マジで変わらねぇな……クソみたいな税金システムに関しては」
現世でも年々、税金システムがぶっ壊れ始め、国民がブチギレたモノの……。
更に酷くなって、ドンドン景気は冷えて、観光客もまばらになった。
やれ……観光大国だ? 移住政策だ? 共生だ?
そうやって、利権利権利権利権って……テメェの懐を温める政策ばかり、政府はやりやがった。
結果、理由も分からぬまま税金は増え続けて、全世界が傾き、朽ちて行くだけ――。
ルイ
「でも良かった……“ここが持ち家で”」
総司
「雨風凌げる家があるだけまだマシだな」
ルイ
「えぇ……この家は唯一“両親が遺してくれた家”なのよ」
総司
「――そうか、ここで一人だったのかずっと……」
ルイ
「えぇ……そう。ずっと――“一人で生きて来た”」
総司
「何と言えばいいか……その、わりぃ」
何となくルイの悲しみを汲んでやれる気がした。
こんな終わってる世界の中、一人で生きてきたんだ。
外の世界も見れず、無理に出ようとすれば――。
死ぬ様な世界の中で。
ルイ
「でも……いいの、“一生アナタと一緒だから”」
総司
「――あっ……」
ルイ
「だからいいの、ふふっ? これからはさ……」
総司
「……っぐっごぐっ――ッ――」
ルイ
「“死ぬ時も一緒だから”」
総司
「……あぁ、そうだな」
この世界では、名前をつけられたモノはなんとやら。
つまり……“結婚みたいなモノ”なのだろう。
ルイ
「ほらぁ……見て? “左手の薬指”」
総司
「んぁ……? んっ――あ……“赤いリング”……」
ルイ
「とっても……“素敵でしょ”?」
総司
「お……おう? なんか――実感が湧かねぇんだ」
ルイ
「私もよ――でも、ゆっくり共に歩みましょう?」
総司
「あぁ……ゆっくり――な?」
俺達の左手の薬指には……。
まるで血の様な色をした、リングがはめられていた。
なんと言えばいいか……ただの輪っかなのに、どこか異質に感じられて、禍々しい気がした。
ルイ
「ふぅ……話疲れたな――“寝室に行きましょ”?」
総司
「え"ッッ――?! まだお昼だよ……?」
ルイ
「だってやる事無いし、ならお昼寝しましょ?」
総司
「ふぅ……分かった」
ただ昼寝するだけならいいが……どうなる事やら。
そんな事を思っていると――。
ルイ
「ふふっ……これからずっと――“一緒”」
総司
「お……おう?」
どこか艶めかしい表情でコチラを見詰めるルイ。
綺麗な紅い瞳がキラリと光ったと思えば、俺は思わず身震いした。
ルイ
「ねぇ……ほら――行こ?」
総司
「お……おん――」
そのまま自然に身を任せて、そのまま――。




