まぁ、なんだ、その、あれだ!! ぉん……うん。
《日時? 夜 ルイの部屋》
――あれから……おぢさんとルイは……うん、そのえっと……めっ――した。
ルイ
「……どうだった?」
総司
「……“世界に色が着いた”よ――本当に……」
ルイ
「ふふっ……ナニそれ? 変なの……」
総司
「そっちこそどうなんだよ……結構アレだったぞ?」
アレとは……アレなのだ、もう――すんごいのなんのって、とにかく凄かった。
語彙力が極限まで低下するくらい、凄かったのだ。
ルイ
「うん……凄く良かった」
総司
「そう……でしょうね? ははっ……はっ――」
俺はもう、乾いた笑い声しか出ない。色々あって、本当に疲れたし、体が鉛の様に重たくて仕方がない。
でも、そんなモノはどうだっていい。
色の無い世界に生きてきた俺に、色を見せてくれた。
いや……“魅せられた”が正解なのかも知れない。
季節は冬から夏へと変わり、春へと変わって行った。
これは比喩でしかない。でも……確かにソレを感じたんだ。
ルイと言う、謎の美少女褐色エルフに魅せられて。
ルイ
「ふぅ……疲れたね? はぁ……本当に良かった」
総司
「あぁ……本当に――“良いモノを魅せて貰った”」
俺達はベッドの上で、添い遂げるだけ。
何もしない、ただただ寄り添って横になって、かりそめかも知れない幸せな時間を過ごして。
ルイ
「朝になったらさ……色々お話しましょう?」
総司
「あぁ……大した話はねぇけど、色々話そう」
……ギュッ――。
ルイの柔肌に触れながら俺達は微睡みの世界へと、堕ちていく。
《日時? 朝 ルイの部屋》
――チュンチュン……カァ〜〜ガガァ〜〜カァ〜〜。
……朝っぱらから鳥たちの囀りや、鳴き声が耳にツンざく。
どいつもコイツも朝から元気なモンで、現実世界もこの異世界もココだけは同じで、なんだかホッとした。
総司
「……やっぱ、夢じゃないんだな。ふ――ふぅ……」
俺の横にはルイが添い寝していて……俺はと言うと、布団の中でテントを張っていたのだから……。
総司
「何だってんだ――こんな時にもテントかよ……」
こんな時だからテント張るだろうって話だが、これは単なる生理現象でしかない。
男たるもの、大抵テントくらいは張るものなのだ。
でも、それで実感する。ココが現実なんだって――。
ルイ
「ふふっ……布団の中でテント張ってるんだ……?」
総司
「うぐっッ――?! ぅん? まぁ……仕方がないょね? 男の子だもん?」
ルイは起きていたらしい。すぐ側でボソッとからかう素振りを見せて――。
ルイ
「……どうしたい?」
総司
「どうし――たい? いや……勝手にテント畳まれるからだぃじょうぶだょ……?」
――サワサワ……シュリシュリ……さわさわ〜〜。
ルイ
「“本当に”……?」
総司
「あッ――ちょ?! 背中すりすりしなぃでぇ〜〜」
ルイ
「“本当に”?」
総司
「ぉ……おぉおホォ?! 本当だってっッ!!」
ルイ
「“本当”?」
総司
「オイオイ……選択肢が一つしかないバグゲーかよ……?!」
ルイ
「だって……苦しいのかなって……」
総司
「だ……大丈夫だょ? いつものコトだから」
ルイ
「我慢しなくてもイイのに……減るもんじゃないし」
総司
「いや……“減るんだよ”!! “色々”と!!」
そう……色々減るのだ――昨日の夜も色々減ったのだから。
総司
「そ……そうだ、お腹減ったし何か作ってくれないか?」
ルイ
「えっ? あ……そうだね、お腹空いたよね?」
総司
「わりぃ……昨日から何にも食ってないんだよ」
このままじゃ、ナニかオカシナ展開へと向かいそうで、急に別の話を振った。
ルイ
「あ〜〜でも、あんまり食べ物――無いかも?」
総司
「……えっ? マジかよ――食いもんが……ない?」
正直、絶望していた。そう言えば、ココに来た時もお茶だけ出されて、そのまま……うん。
ルイ
「うん、昨日買い物に行こうとしたら、アナタが転がっていたんだもん」
総司
「……まぁ、そりゃ失礼した」
確かに俺は転がっていた。ワケ分からん異世界の中で。
ルイ
「なら、今から買い物に行こうか?」
総司
「そうだな、色々外に出ながら聞きたい事もあるし」
結局、何一つこの世界について聞き出せていない。
ただ、この世界が現世に似た異世界って事だけは分かる。
人間は見かけず、ほんっと……ゲームに出てくる様なキャラクターの数々――。
それに、とても退廃的な世界でとても不気味だった。
自分が住んでいる街、でも……毛色が全く違うのだ。
現世も正直、かなり治安が悪かった。
でも、ここまで堕ちていない――。
かつて栄えていたであろう、コンクリートジャングルは見るも無惨だ。
全体的に色褪せ、ヒビ割れや建物自体が崩落している姿が見えた。
そんなビルの前の歩道には、ズラッと露天が並び、様々なモノが売っていた。
――キュッ!!
ルイ
「ほら、ボーッとしていないで、行くよ?」
総司
「……ん? あ――あぁ……わり、考え事してた」
ルイ
「全く……お腹空いたと言えば、すぐに考え事?」
総司
「あぁ……さて、行こうか“外の世界”に」
ルイ
「なにその変なセリフ? 別に“普通の事”なのに」
総司
「あぁ……普通……の――事だな」
俺はルイに手を引かれながら、外の世界に出向く。
全く何がなんだか分からぬ異世界の中、俺もルイもきっと――流れ流されて、翻弄される。
ワクワク感なんてきっと無い――。
とうの昔にワクワク感や、感動を置き去りにして来た。
“オジサンになる”って事はそう言うモノだ。
きっと――過去に楽しい事を前借りし過ぎて、その代償に色を失った。
でも……久々に世界に色が着いた。
そう――本当にイレギュラーだった。
美少女褐色エルフである、“ルイの存在”。
現世で生きてりゃ、決して出逢う筈も無い関係。
今後、俺は“色の無い世界全て”に、色を着けられるのであろうか?
――トントン……。
ルイ
「また黙って……ほんっと――“不思議な人”ね?」
総司
「……ははっ? あぁ――“お互い不思議な関係”だ」
――ガチャッ……バタン……。
ルイ
「う〜〜ん……日差しが強いなぁ……もう」
総司
「あぁ……クッソムカつく程、快晴だな……」
玄関前に出た俺達を出迎えたのは、燦々と輝く太陽……? だった。
一気に夏を感じる瞬間に思えて、とっても気分がいい。
ルイ
「でも……風が当たって気持ちいい――ふぅ……」
総司
「あぁ……悪くねぇな……クッソ眩しいけどよ……」
ルイ
「全く……文句挟んで何やってんだか?」
総司
「オジサンってのは、何かと文句つける生きモンなのよ……」
きっと、人並みに酸いも甘いも、噛み分けて来たつもりだ。
そんな中で、自分の身を守る為の知恵が文句だった。
全てのオッサンが善人でも聖人でもない……。
ただの、そこら辺のオッサンであり、オジサンであり、おぢさんだ。
これはもう、きっと……哲学でもある。
ルイ
「はぁ……ハイハイ、もう行くよ? 暑いし……」
総司
「なんだよ……お前も十分、輝いて眩しいじゃんよ」
ルイ
「ちょっと……“お前はやめて”ね? ルイでしょ?」
総司
「ふっ……ワリいワリぃ――さ、買い物行こうぜ」
思わず、オジサンの悪い癖が出る。
でも、そんな事よりも――目の前に佇むルイは、とても綺麗で輝いて見えた。
とても長い美しい長髪――とても綺麗な褐色肌、まるで吸い込まれる様な紅い瞳。
そして華奢で小柄な姿なのに、どこか大人びて見えて、とてもとても……妖艶だった。
そこにエルフ特有な、長く尖った耳も合わさればもう……。
ルイ
「うん……」
総司
「…………」
にこやかに微笑むルイの姿――。
まるで息を飲む光景とは、きっと……こんな場面で言うんだろう。
それ程までに、ルイは完璧な理想像だった。
またこの世界に色が着く。
まるで灰色の世界――それを溶かして色を着けるルイ。
俺の人生はこれから始まるのかも知れない……。
そんな淡い期待と予感がしていた。




