現世に似た非なる異世界。
《日時? 場所?》
――なんだか体が熱い気がする。体に伝わるジワジワした熱と、硬くてザラザラした感触。
それに……街ゆく人々の喧騒みたいなモノも、やけに耳につく。
ここは夢の中なのか、それとも現実なのか――。
全てが曖昧な状態のまま、俺は目を覚ました。
総司
「……んっ――あっ……ん? あ――ぢぃッッ!!」
びぐっッ!! ガバッッ――!!
パッパッ!! ザッザッ!! シュリシュリッッ!!
総司
「んぐぅ……なんだ――この夏みてぇな暑さと熱さは……?」
俺は無意識に、体にまとわりつく砂ぼこりの様なモノを手で払い、朧気な眼で辺りをキョロキョロと見渡す。
依然、手のひらや膝はジリジリとした熱を受け、物凄い熱い。
しかし、それよりも今の状況の方が遥かに重要だった。
だって――季節は年末年始で冬真っ只中なのだから。
まるで真夏の様な、体を刺す熱を感じる方がオカシイのだ……。
そのまま暫くボーッとした頭のまま、辺りをゆっくりと観察して行くと……。
総司
「……“異世界”――な……のか?」
俺の目に飛び込んで来たものは、“現世に似た非なる異世界”だった。
まるでゲームの中にいる様な光景の数々に、俺の思考はドンドン停止していく。
総司
「お……おん? えっ? はっ?? ん……???」
ここが一体なんなのか、本当に分からない――。
仮想現実……? いわゆるVR環境なのか、それとも夢の中なのか。
全く見当もつかなくて、ただただ、頭を抱えるだけだった。
だって――目に入る全てが異質で、ゲームに出てくるキャラクターみたいなモノが……会話しながら素通りして行くのだから。
ガッ――!!
総司
「……ってて――痛てぇし、アチィなおい……」
そんな状況に動揺しながら、俺はアスファルトに拳を突き出した。
ジリジリした熱を帯びたアスファルトの感触と、拳を伝う痛みの数々――。
夢の中にしてはとてもリアルで、本当に状況が分からなくなる。
総司
「ははっ――それに、どいつもコイツも無視かよ」
わけも分からず倒れている俺を素通りして行く、キャラクター達。
そいつらにも怒りが湧いてくる。そもそもが夢の中のお話なのか、仮想現実なのか、なんなのか……。
全く状況が分からない中に置かれ、街ゆくキャラクター達は、まるで“俺が居ないもの”として素通りしていくのだから。
???
「ナニしてるの……?」
総司
「……は?」
そんな世知辛い状況に震えていた俺に、誰かが声を掛けてくれた。
ゆっくりと顔を上げると、そこには――。
???
「そんなところで倒れてると、“ヤケド”するよ?」
総司
「……ん? ハッ――?! あ"ッぢぃいぃ゙ッ!!」
ガッ――!! バサッ――ゴロゴロゴロゴロッッ!!
俺はハッ――とし、思い出す。
そう言えば……熱々のアスファルトで座り込んでいた事を。
当然、俺は地べたで転げ回って慌てふためくだけ。
目の前には見知らぬ美少女褐色エルフの姿、その目の前には、ただただ熱さで転げ回るオッサンの姿――。
???
「ほら……立って!! 本当にヤケドしちゃう」
――ガッ!! グイッ――ズズズッ――!!
総司
「ちょ――あづっッ!! 引っ張んないでよぉ!!」
総司
「いや――マヂで!! あっつぅいのぉおぉ゙!!」
倒れ込む俺を助けようとする美少女褐色エルフと、アスファルトに擦り付けられ、急にオネェみたいになる俺の姿――。
真夏の様なジリジリと体を焼く感覚と、アスファルトから伝わる灼熱感。
妙に現実味を帯びて、一気に目が覚めていく。
あぁ……ココはやっぱり“異世界”なのだと。
《日時? 場所? 夕方?》
――場所は変わり、俺達は街中から寂れたエリアに来ていた。
なんだか……全体的に寂れて、廃墟みたいな住宅が立ち並び、路面はアスファルトですらない――。
固められた砂みたいな道路の中に、廃墟と化した住宅が立ち並らんで、まるで退廃した世界だった。
美少女褐色エルフの家? の縁側にある、今にも朽ち果てそうな木製のベンチに二人で座り、ただただ、悠久の時を過ごす。
美少女褐色エルフ
「どう……? ヤケドしてない?」
総司
「……え? あ――あぁ、大丈夫っぽい?」
美少女褐色エルフ
「ふふっ……ナニソレ? まぁ……良かった」
少し、真夏の様な暑さは和らぎ、夕焼けに染まる空の下、時折吹く爽やかな風を浴びながら、とても良い時間が流れて行く。
正気を取り戻した俺は、手を頬にあてながら、美少女褐色エルフの方へと顔を向ける。
すると、とても美しくて綺麗な紅い瞳が俺を射抜いて――。
総司
「おっと――ふぅ……何だか知らねぇが……」
美少女褐色エルフ
「ふふっ……ナニ? 急に目を逸らして」
総司
「い……いや、なんか――“綺麗”だなって?」
現実世界では、絶対に言わないセリフだった。だけど……本当に不意にそんなセリフが飛び出して――。
美少女褐色エルフ
「そう……ありがと」
美少女褐色エルフは俺とは違い、なんだか素っ気なく目を逸らした。
暫くそのまま、気まずい時が過ぎて――。
総司
「なぁ……聞かないのか? “俺が何者”なのかを」
その気まずい沈黙をぶち破ったのは俺だった。
美少女褐色エルフ
「アナタもでしょう? “私がなんなのか”……」
お互い聞きたい事は合っている筈だった。
でも……何だか意味が違って見えた。
総司
「そう……だよな。聞きたい事なんて山程あるよな」
美少女褐色エルフ
「……さて、そろそろ暗くなる。中に入りましょ?」
総司
「う……あ、あぁ、分かった」
何だか、厭な予感が脳裏を過って一瞬躊躇った。
ただ、きっとこの世界は自分が住んでいた世界よりも、ずっと治安が悪そうでそんな事は言ってられない。
美少女褐色エルフ
「時間もタップリある事だし、色々聞かせてね?」
総司
「……分かった」
何と言えばいいのか、“色々な間違いが起きそう”な気がして、ならない……。
平然を装っているが、正直こんなに落ち着いている方がオカシイのだ。
だって――彼女はとても魅力的でドストライクだった。
ギャルゲか、美少女ゲームの中に出てくるヒロイン。
そのまんまな容姿と、美しさと可愛さだったのだか ら。
――ギュッ!! ガタッ――ッ!!
美少女褐色エルフ
「ほら、ボーッとしてない!! 行くよ?」
総司
「お……おう!!」
美少女褐色エルフは俺の手を引き、家の中へと誘おうとする。
そのまま、とても綺麗で長い黒髪を眺めて……。
美少女褐色エルフ
「ふふっ……」
流れ流されて――行くだけ。




