“闇ルートジョブ”おぢさんと、ダブルクォーテーション。
《日時? 早朝 ルイの部屋》
――ほんっと……“ぶっ狂った夜”を過ごした。
夜明けまで俺とルイは――“壮絶な戦い”を繰り返した。
一歩違えば、“多分死んでるレベルの戦い”だ。
ルイ
「はぁ……もう――朝が来ちゃうね?」
総司
「あぁ……もう、大分――外が青白いな……」
ルイ
「ふぅ……“もう少しこうして居たい”……」
総司
「でも、そろそろ日銭稼ぎに外に出ないと……」
ルイ
「分かってる――でも、どうするの? アナタは?」
総司
「どうすっかな……“マヂで筋肉痛でヤバい”――」
ルイ
「うふふっ……本当にちゃんと、“朝まで付き合って貰ったしね”」
総司
「あぁ……マヂで死ぬかと思った――いや、一回くらい多分、死んでる」
冗談抜きで多分、それくらいの事は起きていた。
ルイ
「それじゃ……“一緒に森の中行く”?」
総司
「いいね、こんな様子じゃ多分、肉体労働無理だし」
……ギッ――ギギっッ――。
体が鉛の様に重くて、まるで昔のロボットとの様だった。
スムーズに体が動かせなくて、大分……重症だった。
ルイ
「森まで行けば魔法使えるし、治してあげる」
総司
「イイって……痛みをそんなんで消したくねぇ」
鎮痛剤ならまだしも、魔法で無かった事にする?
それだけは許されない――。
この痛みこそ、“生きている証拠”なのだから。
ルイ
「でも……耐えられなくなったら、言ってね?」
総司
「そん時は頼むけど、なるべく頼りたくないんだ」
ルイ
「ふふっ……まぁ、“私もそうかも”――」
総司
「魔法って便利だろうけど、“多用すれば毒”でしかない」
ルイ
「そうね、“あまりにも簡単に治癒出来るもの”……」
総司
「あぁ……んな簡単に治って貰ったら困る」
それに……“どんな代償”があるのかも知らない。
魔法を使った場合、身体的なダメージは無いのか?
ゼロって事は無いだろう、きっと――。
総司
「まぁ……とりあえず、飯食ってシャワー浴びよう」
ルイ
「スンスン……ふふっ――そうね、“駄目な匂いしてる し”」
総司
「……あぁ、“本当に駄目な匂いしてる”」
ナニがとは言わないが、本当にダメにする魅惑で蠱惑的な、叡智な匂いが充満しているのだ……。
ルイ
「そうね……早く行きましょう? ダメになる前に」
総司
「あぁ……そう――だな」
一刻も早く俺達は飯を食い、シャワーを浴びる必要があった。
じゃないと……“モタない”のだ――色々と。
ルイ
「うっふふっ――ずっと、“このままでもイイけど”」
総司
「馬鹿言うな……“本当に死んぢまうよ”――」
ルイ
「ふぅ……ハイハイ――それじゃ仕度しましょう?」
総司
「あぁ……“本当は名残惜しい”けどな――ハハッ?」
ルイ
「ふふっ……ドッチなのよもう――うふふっ?」
総司
「複雑だが――ドッチもだよ……全くよ――」
ずっとこうして居たい気持ちと、早く外に出て、日銭を稼ぎに行かなくてはならない。
その二つの気持ちが戦っているのだ。
きっと――何も制限が無いのなら俺達は……。
本当に、“ブチ壊れるまで”――一緒に居るだろう。
ルイ
「さっ……行こ? お金を稼ぎに行かなきゃ」
総司
「あぁ……んっ――しょっ――と……ってて――」
ルイ
「ほら、頑張って? 魔法で治さないんでしょ?」
総司
「あぁ……動き始めりゃ何とかなる」
ルイ
「分かった。それじゃ、すぐに朝ご飯の準備する」
総司
「ワリぃ……頼む、その合間に体ほぐしとくわ」
ルイ
「うん。それじゃ今日も頑張りましょう」
総司
「あぁ……本当は休みてぇけどな――」
ルイ
「駄目よ? 食材が枯渇しちゃうし」
総司
「いや……“既に俺が枯れてるんだよ”――」
ルイ
「うふふっ……“夜になったらまた補充しないとね”」
総司
「ふぅ……もう少し――“優しくちてね”……?」
ルイ
「う〜〜ん……ふふっ? “その時に考えるわ”?」
総司
「……分かった」
ルイ
「さて、話してる場合じゃない――朝ご飯作ろう」
総司
「…………」
これが、小説だったならきっと……。
“文字強調”の“ダブルクォーテーション”の連発だ。
“”“”“”“”“””“”“”“”“””“”“”“”――“こんな事”になる。
しかし――“本当にそうなのだから”仕方が無い。
総司
「――っと……ん〜〜っッ――」
――バキバキッッ――ポキっッ――ピキッッ――。
総司
「あだだだっッ?! か……体がバッキバキだ……」
“ルイとの生活は”……正直――“過酷”だ。
“愛が重い”――? いいや――“それ以上”だ。
総司
「ハハッ――ふぅ……“タバコ”――吸いてぇ……」
ストレッチをしながら、ふと……そんな事を思った。
何となく――タバコをふかし、一人でボーッとする時間も欲しかった。
――カタッ……。
ルイ
「“タバコ”? “この世界にもあるけど”……」
総司
「なんだ、聴いてたのか?」
ルイは朝食作りを一時中断し、食い付いてきた。
ルイ
「とてもじゃないけど……“買えないわ”?」
総司
「……“いくらだ”?」
ルイ
「――“2万円”」
……ガタッッ――!!
総司
「に……に――二萬……円??」
ルイ
「うん……つって?! あぁ――焦げちゃう!!」
――シャカシャカッッ!! ザザザザッ――。
総司
「冗談じゃねぇよ……“超絶高級品”じゃねぇか」
現世でも、“超絶タバコ税”は掛かっていた。
一番安いタバコでも2千円くらいで、高いモノになると……一箱4千円とかのモノもあるらしい。
アッチもコッチも……3〜4倍は当たり前の世界だ。
ただ……モノによっては、“法外なレート”に思える。
ルイ
「ふぅ……出来たわ? ちょっと焦げたけど……」
総司
「大丈夫だ。飯が食えるだけありがたいよ」
ルイ
「そうね。それに意外と価格って、メチャクチャなのよ」
総司
「メチャクチャって言うか……“希少”なんだろ?」
ルイ
「多分、そうだと思う。タバコに関しては知らないけど……」
総司
「まぁ……一応、“禁煙してるから大丈夫”だ」
……コトっ――スッ――。
目の前に食パンと、焼いた肉が現れた。
ルイ
「ナニその……“一応”って?」
総司
「ふぅ……基本は吸ってねぇがな――」
総司
「時折――ふと……“吸いたくなる時がある”」
ルイ
「へぇ……そうなんだ?」
ルイ
「まぁ……吸った事ないから、分かんないけど」
総司
「タバコなんて吸うもんじゃねぇよ――」
総司
「“葉っぱ吸ってるんじゃなく”……“税金吸ってる”」
ルイ
「ははっ……そりゃ“最高”ね?」
総司
「あぁ――本当に……“最高だよ”」
ルイ
「さて……まずはご飯食べて、元気出しましょ?」
総司
「あぁ……そうする。いただきます」
ルイ
「いただきます」
俺達は食事を始めた。
タバコは嗜好品だ。ただ、それだけ。
空腹や飢えは補えない――。
本来、雨風凌げて――飯が食えりゃ上等なのだ。
総司
「あぁ……ウメェ……焦げてるけど――最高だ」
ルイ
「見た目は悪いけど……香ばしくて良いわね?」
総司
「あぁ……本当にな?」
――でも……きっと、食べ終わった頃には……。
“チョッピリ”――タバコが吸いたくなるのだ。
これが禁煙者の苦悩と葛藤だ。
タバコと過ごして来た日々は、そう簡単に忘れられない……。
時折、思い出しては消えて行く。
タバコとは、“本当に危険なモノ”なのだ……。
ガキの頃は――学校の外に先生がわざわざ出て……。
“タバコ何て吸うもんじゃない”――。
そんな事を言っていた記憶がある。
総司
「ふふっ……」
ルイ
「んっ……? どうしたの? 急に微笑んで?」
総司
「いや――“昔の記憶が甦ってさ”……?」
ルイ
「ふふっ……? 何それ? 変なの」
総司
「いや――何でもねぇ」
ルイ
「まっ――悠長にしてる場合じゃないわ?」
総司
「あぁ……さっさと仕度しよう」
ルイ
「ご飯食べたら、すぐにシャワー浴びて行こう」
総司
「そうだな」
こうして俺達は、朝の仕度をバタバタと行う。
とにかく朝は忙しいのだ……まるでそれは――。
“時間が2倍速で進んでいる”様に思える程だ。
そして……。
《日時? 早朝 家の外》
――何とか俺達は仕度を済ませ、仕事に出掛ける。
ルイ
「今日も暑くなりそうね?」
総司
「あぁ……朝早いのに――もう蒸しアチィ……」
日が昇って間もないってのに――既に暑かった。
ほんっと――“現世と変わらない”。
本当に暑い夏場は、朝から最高潮な気温で、ぶっ飛ばしてくるのだ。
ルイ
「ふぅ……それに――ジメジメして汗が出るわね」
総司
「うっ……お――あぁ……そうだな?」
ルイ
「ふふっ……? ナニ? 急に目を逸らして」
総司
「いや……“汗を浮かべるルイ”も――良いなって」
相変わらず、服装はボロ切れだ。
でも……汗を浮かべる褐色エルフの姿は――。
とても美しくて、叡智だった。
ルイ
「うふふっ……“夜”――“沢山見てる”じゃない……」
総司
「い――いや……それはそうだけど――う〜〜ん」
確かに俺は……沢山――ドコロじゃなく……。
“超絶見ていた”。
現実的な事を言えば――“見せられ”、“魅せられた”。
ルイ
「んっ……? “ナニか思うトコロ”があるの?」
トコトコ二人で歩きながら、馬鹿話を続ける。
でも……伝えなきゃならないコトが俺にはあった。
総司
「……“それは故意か”――“故意じゃないか”」
ルイ
「ん……? “何その哲学的なナニか”?」
総司
「あぁ……“アッチの恋”じゃないぞ?」
ルイ
「分かってるわよ? ふふっ……それで?」
総司
「う〜〜ん……“コッチの世界”にあるかな?」
ルイ
「ん? “ナニが”?」
総司
「……“映画”」
ある訳がないと思いつつ、ルイに聞いてみた。
この世界には、ナニがあって何が無いのか。
まずはソレを知りたかった。
ルイ
「……“あるよ”」
総司
「……えっ? 嘘――マヂで?」
ルイ
「うん……“大昔の”――“モノ”? だけど」
総司
「……なら――“叡智なビデオ”は?」
ルイ
「――“今もある”」
……グラッ――ゴッッ!!
総司
「んなっ――何だってぇ〜〜〜〜んっッ!!!!」
俺は膝から崩れ落ちていた。
まさか――こんな異種族しか居ない。
こんな異世界で……叡智なビデオが――????
これがアニメだったら、この叫びは地球を映し、宇宙まで届く様な演出が走るであろう。
それくらい衝撃だった……。
ルイ
「まぁ……“闇ルート”だけどね?」
総司
「まっ――“こんな世界”だもんな……うん」
闇バイトならぬ……闇ルートだ。
また――この単語が出て来た。
怪しい異世界な事に、変わりはナイ……。
ルイ
「あぁ……“そう言うコト”?」
総司
「何だよ……理解したのかよ?」
ルイは自分の顎に手を添えて、上を向いていた。
何となく、察したのだろう。
俺の言っている、故意なのか――故意じゃないのか。
……この“壮大な意味”を。
ルイ
「つまり、“叡智なビデオと映画の場面”じゃ……」
ルイ
「――“伝わり方が”……“違う”」
ルイ
「アナタはそう言いたいのでしょう?」
総司
「あぁ……そうだ。“不意打ち”なのか――」
総司
「“そうじゃないのか”……」
ルイ
「ふむ……ふふっ――確かにそれは分かるかも」
総司
「ふむじゃないよ……全く」
……スッ――。
ルイ
「さっ――立ち上がって?」
俺はルイの差し出した手を握り――。
ザッ――カタッ――。
総司
「ありがとう。ふぅ……全く――“綺麗だよお前は”」
褐色エルフで……とても紅い瞳をし――。
とても長い黒髪を風にさらし……微笑むルイ。
本当に愛おしく思えてならない――。
ルイ
「ちょっと……“外でそんなコト言わないで”……」
総司
「なんだ……“照れてんのか”?」
ルイ
「むぅ……そうよ――これこそ“不意打ちよ”」
総司
「そうか――ふふっ……」
全く、女心は分からない――。
ただ、照れくさそうに目を逸らすルイもまた……。
とても可愛らしくて、とっても良かった。
――そのまま俺達は、手を繋いだまま歩いて……。
《日時? 朝 不気味な森》
――“未知のゾーン”に俺達は辿り着いた。
総司
「オイオイオイ……“何だココ”……?」
ルイ
「うん……“いつもの狩場”かな?」
総司
「分かってるけどよ……何て言えば良いか……」
ルイ
「うふっ? “想像していた森”と違った?」
総司
「あぁ……“こんな鬱蒼としていない”――」
俺が想像していた森とは、こんな場所だ。
木漏れ日が差し込み、少し涼しい、そんな緑林だ。
それに……見た事がない――“触手系のナニか”。
ルイ
「ふふっ……“アナタが想像した森はドコにもない”」
総司
「あぁ……何か――薄暗くて……空気も重い」
ルイ
「えぇ……これが――“この世界の森”」
総司
「……それにおまっ――アイツ動いてるンですけど」
――ピシッッ!!
俺は森の入り口から、“速攻見えたアレ”を指差す。
ルイ
「あぁ……“アレ”?」
……ザザッ――。
総司
「おっ――おう? あ……“アレな”?」
何か……ウネウネして――グネグネして……。
ピンク色で……ぶっとい――触手みてぇなヤツだ。
思わず俺は後退りしながら、ソレを見続けていた。
ルイ
「うん、アレはね? “ウネグヂュの木だよ”」
……ガクッッ!!
総司
「“そのまんま”じゃねぇか!! 何だよもう……」
俺は大きく肩を下ろした。
ルイ
「大丈夫だよ? “基本襲って来ないから”」
……ぬぢゃァ〜〜グッパァ〜〜ぎゅぎゅぎゅ〜〜!!
総司
「ひぇっッ――?! こ……こわひっッ!!」
どう考えても……俺達をアレは狙っていた。
何か……ドロドロな液も出てるし、触手の先端が……。
口みたいに開いて……ウネウネグネグネしてるのだ。
総司
「それに……何だよ“基本”って……」
今にも俺達は襲われそうだった――。
ルイ
「う〜〜ん……“自分で近付かない限り”?」
総司
「何だそれ……アレに近付くヤツいんの?」
ルイ
「“居るよ”? “たまにエルフ達が遊んでる”」
総司
「おほ〜〜っほほ――“そう言うコト”ね……」
ルイ
「うん……分かるでしょ――“この匂いとヌメり”」
総司
「……うん――まぁ……うん――まぁ?」
ルイ
「“何その薄い反応”? あんまり分からないか……」
総司
「まぁ……ね? ほら――“俺達”……さ? ねっ?」
ナニがとは言わないが――ツマリそう言うコトだ。
ルイ
「ふふっ……“ソレもそうね”」
総司
「あぁ……“大したコトねぇわ”――」
ルイ
「えぇ……これじゃ――“◯◯ない”……」
総司
「ふぅ……さっ――森の中探索しますか」
ルイの言葉は間違いなかった。
足りない……物足りないのだこんなモノ。
ルイ
「分かったわ? じゃあ今日はイッパイ手伝ってね」
総司
「あぁ……体痛てぇから、あんまり無理出来ねぇけど」
ルイ
「大丈夫でしょ、瓦礫撤去に比べたら遥かに楽よ」
総司
「まぁ……内容によるわな?」
そんなわけで、鬱蒼とした森の中へ進むと――。
《日時? 朝? 森の中腹?》
――俺達は丁度、山の中腹に来ていた。
詳しくは分からないがルイ曰く、ココら辺が丁度山の真ん中に、位置するのだとか。
ナニよりも、この世界のマップ……いや、地図が無いのだ。
どう言う構造になっているのかも――いまだ、分かっていない。
一つ分かる事は……“メッチャクチャ大量の”――。
ルイ
「ほ〜〜ら、おいで? “パンだよ”〜〜」
……チュ――チュチュチュチュ!!
総司
「……ちょ――うわっッ――?!」
――ゾゾゾゾゾッッ……ザザザザザザザザッッ!!
ドスンッッ――!!
ルイ
「ふふっ……“今日はやけに多いなぁ”……凄いや」
俺はあまりの光景に尻もちをついた。
だってソレはもう……。
ルイ
「ほら……“集まった”――それも……“数日分”」
ゾゾゾゾゾ……ザクザクザク――チューーチュチュ!!
総司
「……“ネズミ”――か」
謎の神社で……ルイは“ナニかを捕獲”していた。
そう言っていた筈だ。
そして……お礼に、“赤い色をしたアンプル”――。
“全てが”――“そこで繋がっていた”。
総司
「……コイツらは――“媚薬の材料”なのか」
ルイ
「えぇ……“可愛いでしょ”――でも……“材料なの”」
色とりどりなネズミ達は、パンに夢中だ。
実験用のモルモットみたいなヤツもいれば、茶色やグレーなネズミも……。
ただ――“コイツらはこれから材料”になる。
そう――“嗜好品として生まれ変わる”のだ。
総司
「ふぅ……で、どうすりゃいい? 麻袋に入れる?」
ルイ
「ちょっと待って? 掴んで入れたら効率悪い」
ルイ
「さて……“魔法を見た事がない”んだよね?」
総司
「あぁ……そんなもん――“アッチの世界には無い”」
ここで遂に俺は、魔法とやらを見れるらしい。
正直……実感が湧かないので、あまりワクワクはしていない。
ソレが今の感想だった。
ルイ
「そっか……なら、実際に見てみて? 行くよ?」
総司
「あぁ……頼む」
そして、ソレは始まった。
ルイ
「ゴメンね? “私達も生きる為なの”――」
――ビヂヂッッ――!! ブワッ――バチッッ!!
ピタッ――プルプル……プルプルッッ――。
一瞬――ルイの体から黒と紫の……電撃が走った。
なんとも禍々しい色をした魔法だろうか……。
そのままネズミ達にそれは当たり――。
ネズミ達は……“身動きを取れなくなっていた”。
総司
「……“時が止まったワケじゃなく”――動きを?」
ルイ
「そう……時は止まってない。“動きを止めた”」
総司
「つまり……“束縛系”――“魔法”……か」
ルイ
「うん……まっ――“そんなトコロ”かな?」
若干、ルイの口調に違和感を覚えたが、あまり気にしなかった。
それよりも、俺は手を動かす事にした。
急いでネズミ達を手ですくい上げ、麻袋に詰めるだけ詰めていく。
なんとも……単純作業で――“そして残酷”だった。
そのまま俺達は、黙々と麻袋にネズミ達を入れ続けて……。
《日時? 朝 数十分後 山の中腹》
――辺り一面、“全てのネズミを捕獲”していた。
アレだけ居たネズミは……全て麻袋の中にいる。
ルイ
「お疲れ様でした。まさか、“6袋も手に入る”なんてね?」
総司
「あぁ……大分ズッシリしてらぁ――ハハッ……」
ルイ
「さて……大収穫出来たし、売りに行きましょ?」
総司
「それはイイけど……“こんなに取って大丈夫”?」
誰がどう見ても……“乱獲だ”。
麻袋パンッパンッになるまで、詰め込むくらいネズミを捕獲したのだ。
ナニか後で問題にならないか、心配だった。
ルイ
「大丈夫よ……“明日になったら勝手に湧いてくる”」
総司
「なんか……“ゲームのバグ”みたいだな」
無限にアイテムやモンスターが湧くバグ……。
昔のゲームとかで、よくあったモノだ。
ルイ
「昔はそんな事、無かったんだけどね……?」
総司
「で……“原因は何だと思う”?」
ルイ
「さぁ……“分からないわ”?」
総司
「だよな……まぁ――大丈夫か」
これが自然発生なのか、それとも――。
“意図しないバグ”なのか……。
または――“意図があるモノ”なのか……。
ルイが分からないなら、俺も分かる筈が無いのだ。
ルイ
「後は……“この子達を闇ルートで捌くだけ”」
総司
「言い方よ……こぇ〜〜よ」
ルイ
「実際そうなんだから、仕方が無いでしょ?」
総司
「まぁ……そうだな。そんじゃ、4袋俺が持つよ」
ルイ
「あら……“筋肉痛は大丈夫”なの?」
総司
「なんか……“気が付いたら回復”してた?」
ほんっと……気が付いたら、体の痛みは和らいでいた。
この鬱蒼としたヤバい森の効果なのか、何なのか。
薄暗さや不気味さを感じ続け、過度な緊張のおかげか、痛みは嘘の様に引いていた。
ルイ
「そう……助かるわ? 結構ズッシリするからね」
総司
「全部持ってやりてぇけど、本調子じゃない」
ルイ
「いいの、これくらいは持てるわ?」
総司
「それじゃ――んっしょっと――行こうぜ?」
ルイ
「うん、行こう」
俺達は大量のネズミ達を抱え、森を後にする。
森を出る最中――ふと気になった。
総司
「なぁ……このネズミ達、“大人しい”んだな?」
ルイ
「うん……“今は眠ってる”からね?」
総司
「そう……“夢でも見てんのかな”――」
ルイ
「うん……そうかも」
総司
「ははっ……何言ってんだろ俺」
ルイ
「まぁ……その方が良いでしょうね――“夢なら”」
……ゾゾッッ――ゾクッッ――。
心底寒気がしていた。
夢ならどれだけ良い事か。
“夢から覚めた後”――“ネズミ達は”……。
総司
「……ブルるるるっッ!! よし、急ごう――」
ルイ
「うん……重いから手が痺れてきちゃったし」
総司
「全く……厭なコト思って、ブルッちまったわ」
ルイ
「仕方が無いわ? “生きるって事はね”――」
ルイ
「“間接的”にも、“直接的”にも……」
ルイ
「“命を狩り取り”――“摘むって事と同義”なの」
総司
「ソコには……“善悪の判断”なんて――“無い”か」
ルイ
「そう……“生きる為に摘むだけ”よ」
分かっちゃいた。分かっちゃいたんだ――。
でも、人々はソレを……見て見ぬ振りしてきた。
スーパーに並ぶ、綺麗なお肉や野菜――。
ソレら全ては――“誰かが命を摘んでくれた後”だ。
ソコに善悪なんてありゃしない――。
“食わなきゃ死ぬだけ”で、“働かなきゃ死ぬだけ”だ。
総司
「でも……“悲しいな”――“これが現実”だなんて」
ルイ
「……“そんなモノ”よ。気にし過ぎると良くない」
ルイ
「“コレから沢山の命を摘む事になる”――」
ルイ
「ネズミだけじゃない――“数が減れば別のモノを”」
総司
「あぁ……分かってる。でも……“一つだけ”」
総司
「――ネズミ達よ……“恨みっこ無しだぜ”?」
総司
「お前らが、草を食べる様に……」
総司
「――“俺達もナニかを摘まなきゃ”、生きられない」
ルイ
「それでいい――後は深く考えないで?」
ルイ
「そんな事を考えたら、“何も出来ない”」
総司
「あぁ……でも、“後ろめたさは感じながら生きる”」
ルイ
「えぇ……ずっと私達は、“ソレを背負い続ける”」
ルイ
「でも……“善悪の判断はつけない”」
総司
「あぁ……」
悲しいが、現実とはそう言うモノだ。
食う為に金を稼ぎ、生きる為に命を摘む。
単純な話だ……じゃないと――生きられない。
それに……“生き延びられない”。
こうして生き延びられたのは、“沢山の命”。
いや……“屍の山の上に立っている”からだ。
もし――全ての場面に自分達が居たのならば……。
それはもう――“血の海”だ。
ルイ
「さっ――もう少し歩いたら、着くわ?」
総司
「ふぅ……もうひと踏ん張りしますかっと」
後は単調だ。二人とも疲れて、口数が減り――。
《日時? 昼前? 闇ルートの本拠地?》
――森を出て、ちょっとだけ歩くとそれはあった。
外装はボロボロだが、居たって普通の2階建ての民家が。
総司
「……ここが――“受け渡し場所”?」
ルイ
「えぇ……そうよ? ふふっ――“普通”でしょ?」
総司
「あ……あぁ――まぁ……“ガラクタは多いけど”」
ブロック塀の奥に見えたのは、金属類や朽ち果てた家具類だった。
ゴミ屋敷ではなく、何でも屋さんなのだろうか?
うまい具合に材料をバラして、再利用でもするのだろう。
ルイ
「まぁ……ココは“何でも屋さん”だからね?」
総司
「そうだよな? 何となく分かる」
ゴチャゴチャしている様で、実はそうじゃない。
ちゃんと素材ごとに分かれているし、ゴチャゴチャしていると言うより、モノが単純に多いのだ。
そのままボーッとしていると、ルイは家の門扉を開き、ズカズカと敷地内に入って行く。
慌てて、俺も敷地内に入って行くと……。
――ガチャ……。
家のドアが開き――その中から……。
闇ルートのオーク
「おぉ……いらっしゃい。“今日もネズミかい”?」
ルイ
「えぇ……“今日は超大量”なの」
闇ルートのオーク
「おほほほ……それは助かるわね……?」
闇ルートのオーク
「って……ソレ――“人間”……?!」
光の速さで俺の存在がバレた……。
総司
「……ういっす――ども」
軽く挨拶を交わし、俺はオークの近くにネズミが入った袋を置いた。
ルイ
「“売り物じゃない”わよ? ふふっ……珍しいケド」
闇ルートのオーク
「い……いや――本当驚いたわぁ……人間だなんて」
総司
「まぁ……俺も驚いてるよ――“アンタに”……」
だって……馬鹿デカいオークが――その……あの?
…………。
ルイ
「あぁ……“裸エプロンね”――ははっ……」
闇ルートのオーク
「ナニよ? “人の趣味”にケチつけて? 全く……」
闇ルートのオーク
「それに、“アンタ達も似た様なモン”よ?」
総司
「あぁ……うん――まぁ……ハァ……おん」
そうだった……俺達はいまだ――“ボロ切れ姿”だ。
方やオークはと言うと……何と言うか――。
とてもぷりちーなピンク色して、ハートマークも入っちゃったエプロン姿だ。
どっちもどっちだった。
???
「ちょっとちょっと、どうしたんです?」
???
「玄関前で騒いで――って? “お前”――?!」
オークの後ろから小さいヤツが出て来た。
ソイツは……。
総司
「よう……? また会ったな――“近所のゴブリン”」
近所のゴブリン
「何だよ……“何の用だ”――こんな場所に」
総司
「何って……仕事で寄っただけだよ」
闇ルートのオーク
「なになに? 知り合いなの? アナタ達……?」
総司
「知らねぇよ……“街中で見掛けただけ”だ」
ルイ
「えぇ……“二人に接点は無い”わ?」
総司
「なのに……なにピリピリしてんだテメェは?」
近所のゴブリン
「だってお前――“店主見てただろ”……」
総司
「あぁ……“猫耳お姉さん”な?」
近所のゴブリン
「あぁ……そうだ!! 狙ってんだろお前!!」
闇ルートのオーク
「なになに? “三角関係”ってヤツ?」
オークはやだぁ〜〜ん♡ と、でも言いたげそうに、体をくねらす。
本当におぞましい光景だった……。
ルイ
「あ〜〜それは大丈夫よ? ほらコレ?」
――スッ……キラッ――ギラッッ――。
薬指にはめた、禍々しい赤いリングを魅せつけるルイ。
いつ見ても……禍々しいリングだった。
総司
「……ふぅ――ほら? “これで文句ねぇな”?」
俺も、ルイと同じ様にゴブリンに見せてやった。
ゴブリン
「んなっ――?! そ……それは――??」
ルイ
「“名前を貰ったの”……だから大丈夫なの」
総司
「とって食いやしねぇよ……“お前の猫耳お姉さん”」
猫耳お姉さんが、オッケーを出すかも分からないが、きっとゴブリンは本気で口説くつもりだろう。
そこに茶々を入れるツモリは毛頭ない。
ゴブリン
「……そっか――すまねぇ……本当に」
総司
「イイって事よ。とにかく頑張れよ?」
ルイ
「うん、私も応援してるわ」
ゴブリン
「本当にすまない……勘違いしてた」
総司
「んな事より、仕事に戻れよお前は」
ゴブリン
「ななっ――?! つ……冷たい――」
ルイ
「言ったでしょ? 仕事で寄っただけだって」
オーク
「うんうん……それじゃ、続き頼むわね?」
ゴブリン
「へ……へい!! さて、お仕事お仕事っと……」
総司
「…………」
ルイ
「行ったわね――それじゃお金貰ってもいい?」
闇ルートのオーク
「えぇ……ちょっと待ってね? おほほほ……!!」
……ドタバタ――ドンドンドンドン!!
総司
「……こ――怖い……おほほほほ――マヂで」
ルイ
「あ〜〜うん……あのオーク多分――“凄いよ”……」
総司
「うん……“色んな意味”と、“色んなトコロ”でな」
ルイ
「アナタの想像通りよ……“多分死ぬわねアレ”」
総司
「あぁ……間違いねぇ――“壊れちまうよ”……」
6袋全て抱え、ドタバタ家の中に消えたオーク。
そのまま玄関前で俺達は、下世話な会話をしていた。
ルイ
「“あまり刺激しないでね”……マヂで」
総司
「……あぁ――うん……いや、マヂでな……」
俺達は大いにビビっていた。いや、ガチで。
……ドンドンドンドン――ドッ――。
闇ルートのオーク
「いやぁ〜〜お待たせ!! “凄い量”だったわ……」
ルイ
「そう、それは良かったわ」
闇ルートのオーク
「はいこれ。少しだけ色つけたわ」
ルイ
「良いの? “千円もオマケ”してくれて?」
闇ルートのオーク
「うふふっ――イイのよ。それに“人間も見れたし”」
総司
「は……はぁ――ありがとうございます」
闇ルートのオーク
「暫くはこれで足りるわ。また今度お願いね?」
ルイ
「えぇ……森に行く時があれば、ココに寄るわ」
闇ルートのオーク
「えぇ……それでよろしく」
オークはドカドカと、家の中に向かおうとしていた。
俺はそこにすかさず介入した。
総司
「なぁ……“ちょっとだけ良い”か?」
ちょっとだけ、疑問に思っていたコトがある。
闇ルートのオーク
「ん……なに?」
総司
「なんかさ――“街中で俺”……“避けられてんだ”」
総司
「“アンタなら”……知ってるかなって? その理由」
闇ルートのオーク
「……ふぅ――“これは私の独り言”」
闇ルートのオーク
「“どっかの誰かさんが”――“箝口令を敷いた”」
総司
「かんこ――う……れい? ふふっ――ありがと」
闇ルートのオーク
「さぁて……お仕事に戻るわ? それじゃあね?」
闇ルートのオーク
「それと――“いや”……いいや? またね?」
……ガチャッッ――。
総司
「……“まだ闇の中か”――」
ルイ
「でも……“少しだけ光が差した”でしょ」
総司
「あぁ……“超デカい話”が聞けたしな」
どっかの誰かさんが、人間に触れるなとでも言ったのだろうか?
それに……“まるで俺が居ない様な扱い”だ。
まだ、何かがありそうな気がした。
ルイ
「少なくとも、危害は今の所、少なそうよ?」
総司
「ただし……“街中のみ”だ」
総司
「それ以外は――“未知数のまま”」
ルイ
「えぇ……それより、お腹空かない?」
総司
「あぁ……そう言えばもうすぐ昼か?」
ルイ
「多分ね? ササッと買い物済まして戻ろう」
総司
「それで? なんぼになったんだ?」
ルイ
「あぁ……“3万1千円”だったわ」
総司
「うげ……マヂかよ――“超高い”じゃん……」
ルイ
「闇ルートだしね? それに森にあまり行かないの」
ルイ
「ほら……“結界”の――件とかあるし……さ?」
総司
「あぁ……触れたヤツは――“切り刻まれるヤツね”」
ただでさえ、鬱蒼としたヤバい森だ。
すれ違う異種族のヤツらは、恐ろしく少なかった。
ルイ
「もう行こ? お腹空いちゃったし……」
……ぐぅ〜〜ぐぐ〜〜。
総司
「分かった。本当にお腹空いてるみたいだしな」
ルイ
「えぇ……もう、お腹ぺったんこよ――ふぅ……」
総司
「それ以上へっこんだら、無くなっちまうぜ……」
ただでさえ華奢で小柄なのだ……。
身長も恐らく……145cm程度しかない。
それでも、俺より少し年上なのだから怖い話だ。
ルイ
「えぇ……だから早く行きましょう?」
総司
「なら、街へ急ごう」
――こうして俺達は、街まで駆け出す。
ただ、お腹が空いたって理由だけで。
だが、実に現実的で良かった。
便利過ぎた世界は、次第にありがたみを失う。
“利便性を得た代わりに”。
どちらが良いか? 勿論どっちも良い。
でも――“少し不便な世の中”の方がきっと……。
充実していて、ずっと――“ありがたみ”を感じていた。
――ダッダッダッ……。
総司
「なぁ……ルイ……ハァ――ハァ……キツイ……」
ルイ
「はっはっ――何? どうしたの?」
総司
「いま――ふっ……ふっふっ――“幸せかって”」
俺は走りながら、ルイに問い掛けた。
ルイ
「えぇ……ふっふっ――はぁ――“幸せよ”」
総司
「はぁ――ハァ……そっか? ならいい――」
それだけ聞けりゃ上等だ。
確かに不便な世の中で、自らの足で手に入れに行かなきゃならない世界だ。
でも――きっと、そんな世界の方が幸福度は高い。
“現世に生きる人々に足りないモノ”だ。
当たり前に思えるコトが、実は物凄くありがたいモノ。
それに気が付かないまま、生きるのか――。
“それを感じ生きる”のか――。
そう言う話だ。




