ひと時の幸せな時間。
《日時? 夜 ルイの家》
――あれから俺達は、街中に出向いた。
食材を買わないと、今晩の夕飯にありつけないのだ。
外食をする手も考えたが、昼間の値段を想像すれば、恐ろしくて外食なんて出来やしない……。
手元に残された現金は、シワクチャな6千円だ。
総司
「ってコトで……食パンの束4袋と、肉3つだ」
ルイ
「なんとか数日、これで過ごせるわね」
総司
「本当は、米食いてぇけど――絶望するくらい高い」
ルイ
「えぇ……“10キロで4万円”程するのよ……」
総司
「ふぅ……俺達は暫く食パンで耐えよっか――」
ルイ
「うん、でもお肉あるだけ、本当にありがたいわ?」
総司
「あぁ……何とか稼いだお金も余ったしな」
内訳はザックリこうだ。
食パンが4つ、1束が400円の為、1600円。
お肉は紙袋3つ、一袋が1200円の為、3600円。
それらをガッチャンコすると……都合5200円だ。
昔と比べたら約4倍くらいの物価だ――。
食パン1束で400円は震えてくるが、仕方が無い。
お肉に関しても、1パック300円くらいで売ってたモノが、今じゃ……1200円だ。
ここら辺も、現世とあまり変わらないのかも知れない。
若干、現世の方が安い程度の話だ。
総司
「とりあえず、ルイの方で稼いだお金は使うな」
ルイ
「別に良いのに……私も出すから」
総司
「いや、何があるか分からねぇ以上、ある程度お金は貯めておこう」
ルイ
「ふふっ……結構堅実なのね? アナタって」
総司
「物価が高すぎんだよ……体調崩して、働けない時どうすんだ?」
ルイ
「まぁ……確かにね?」
総司
「この世界はムカつく程、“現世と似てんだよ”……」
総司
「“悪い部分はソックリそのままな”――」
ルイ
「世の中って非情なのね――どこ行っても一緒って」
総司
「あぁ……いまだに信じらんねぇよマヂで」
ルイ
「さっ――暗い話は終わり!! すぐ調理するね?」
総司
「そうしてくれると助かる。体がバッキバキなんだ」
ルイ
「ふふっ……確かに動きが悪いわね」
総司
「あぁ……超肉体労働したからな――」
ルイ
「ご苦労さま。ちょっと待ってて? お肉焼くから」
総司
「すまん、頼むわ……少しだけテーブルで寝る」
ルイ
「えぇ……ごゆっくり」
――ゴトッ……シュリシュリ――。
総司
「はぁ……若干テーブルが冷たくて良いぜ……」
テーブルで顔を伏せるなんて、いつ振りだろう?
学生時代振りだろうか?
何となくそれが懐かしくて、ジーンと来ていた。
総司
「……いい匂い――はぁ……眠い――」
……ジュ〜〜と、お肉が焼けるイイ音。
それに、香ばしいお肉が焼けるイイ匂い――。
そんな食欲をソソる匂いを堪能しながら、俺は少しだけ目を閉じた。
《日時? 夜 ルイの家》
……コトッ――スッ――。
ルイ
「ふふっ……ガッツリ寝てたのね? 出来たわ」
総司
「……んっ――んぁ? あっはっは――ごめん」
総司
「ふぁ……あっ――普通に寝ちまったわ……わりっ」
目の前には焼かれた食パン2枚と、焼肉が少々。
ルイ
「さぁ、食べましょう?」
総司
「あぁ……食べよう。頂きます」
ルイ
「頂きます。お腹ペコペコだから、きっと美味しいわ」
そのまま俺達は、夕飯にありつく。
肝心のお味はと言えば……。
総司
「もぐもぐ……んっ――なんか……“普通だな”?」
ルイ
「んっ――うん……“普通”――だね?」
大して美味くもなければ、不味くもない――。
言ってしまえば普通……なのだろう。
味付けはシンプルな塩胡椒ってトコロだが、正直物足りなかった。
総司
「パンも――う〜〜ん……パッサパサで“微妙”――」
ルイ
「まぁ……確かに言われてみればそうね?」
総司
「ふぅ……やってくれるなぁ!! この世界!!」
ルイ
「まぁ……食べられるだけマシよ?」
総司
「だとしてもなぁ……調味料を今度買おうか?」
ルイ
「調味料? お醤油とかお味噌とか、焼肉のタレとか?」
総司
「そう。大抵、調味料で何とかなるもんよ?」
ルイ
「あ〜〜うん……“ビックリするくらい高いよ”」
総司
「え"ッッ――?! そんなに高いの……?」
ルイ
「うん……例えば“お醤油1本”――“1万円”くらい?」
――ガタッ……!!
総司
「んなっ――?! 醤油が――1万円……??」
ルイ
「お味噌もそのくらいで、焼肉のタレも高いよ」
総司
「焼肉のタレはちなみに……?」
ルイ
「あ〜〜うん……“小瓶で”――“5千円”くらい?」
――ゴッッ!!
総司
「終わってる……この世界――いやマヂで……」
俺は驚きのあまり椅子を揺らし、そのまま自分の頭を軽く殴った。
しかし――何も変わらない……。
夢ではなく、“これが現実”なのだから――。
ルイ
「そんな事をしても、夢から覚めないわよ?」
総司
「あぁ……“恐ろしく現実だ”――」
ルイ
「夢の中みたいな話だけど……本当に高いのよ」
総司
「参ったな……本当に、食って行くだけでやっとだ」
ルイ
「だから、噛み締めて食べましょう?」
総司
「あぁ……一瞬で無くなるけどな――トホホ……」
噛み締めて食べたいが、もう――殆ど食べてしまった。
ルイ
「それはそうと、今日はシャワーどうする?」
総司
「あぁ……その分じゃ――“水だな”?」
ルイ
「ふふっ――鋭いじゃない……正解よ」
総司
「まぁ……夏場だし、冷水シャワーで全然いいよ」
ルイ
「“高いからね”……“光熱費も”」
想像したくないレベルの話だった。
大して使わなくても、物価が4倍換算するならば……。
……ブルブルっッ!! ブルッ――。
総司
「ルイ……お前――“よく一人で暮らしてきたな”?」
ルイ
「えぇ……まぁ――なんとか?」
総司
「想像しただけでブルッちまったわ……マヂで」
ルイも俺もだが、本当にボロ切れ姿なのだ――。
マトモな衣服を持っていない事が、まず異常だ。
ルイ
「まぁ……他もそうよ? “街中を良く見てみて”?」
総司
「まぁ……“俺達と似た様なモンか”――ははっ……」
ルイ
「こんなにも物価高いんじゃ、服もマトモに買えない」
総司
「ったく――酷い世の中だな……生きづらいぜ」
ルイ
「ふふっ……でもいいの。“アナタが居るんだもの”」
……カチッ――ズッ――タッタッタッ……。
お互い食事が終わり、ルイは俺の方へ向かって来た。
ルイ
「“どんなに貧しくても良いわ”……アナタが居れば」
――ギュッ……。
総司
「ふぅ……“俺もだ”」
ルイは椅子に座る俺の背後から、手を回す。
顔を寄せ合って、暫くお互いボーッとして――。
……バッッ――。
ルイ
「さて……冷水シャワーだけど、お風呂行きましょっか?」
総司
「あぁ……汗流したいしな」
ルイ
「ふふっ……火照りが取れて、きっと気持ちイイわ」
総司
「んじゃ、行きますか……」
ルイ
「ふふっ……“イキましょう”?」
総司
「…………」
そのまま俺達は風呂場へ向かって行く。
ナニか起きないと言えば、“起きない訳がない”。
ただ……もう、こればかりは慣れる以外無いのだ。
《日時? 夜 ルイの部屋》
――体がもう……“本当に動かない”。
お風呂場で……色々とその――あの、えっと……。
“大変なコトが起きて”、ヘトヘトになってしまった。
何時間、お風呂場に居たのかは分からない……。
ただもう――半分以上思考は停止し、体はもう限界を迎えていた。
俺はベッドの上でただ――“文鎮化”していた。
ルイ
「はぁ……疲れたね? “ただのお風呂のツモリが”」
総司
「あぁ……もうマヂ無理――ガチ死んぢゃう……」
“ナニがとは言わない”。
――強いて言うならば……“ナニモカモ”だ。
ナニモカモ絞り取られて……もう――動けない。
ルイ
「ふふっ……“楽しめた”?」
総司
「あぁ……まるで“アトラクション”だ」
ルイ
「アトラクション……? 何それ?」
総司
「う〜〜ん……“楽しい催しモノ”? 的な?」
ルイ
「ふ〜〜ん? まぁ……イイわ」
総司
「あぁ……お陰で楽しみ過ぎて動けねぇよ……うん」
全身が筋肉痛で、もう……体バッキバキで痛いのだ。
心の幸福度は増して、体はボロボロだった。
ルイ
「うっふふっ……なら、“これから癒さなきゃ”……」
総司
「待って――十分癒されたからダイヂョブよ?」
ルイ
「大丈夫……そのままアナタは寝ていて?」
総司
「まっ――?!」
――ガバッッ!! ガッ――!!
ルイ
「ほ〜〜ら……“捕まえた”――ぢゅるッ……ふふっ」
総司
「嘘でしょ……? え"ッ――? “まだお楽しみ”?」
ルイ
「大丈夫――“優しく”、“ゆ〜〜くり癒すから”」
総司
「ホント……“優しくしてね”? もう体が辛いの」
ルイ
「えぇ……ふふっ? たぁ〜〜くさん、癒してあげる……」
総司
「分かった。“好きにしてくれ”――」
ルイ
「ふふっ? 言われなくても――“好きにするわ”」
……スゥ――ボソ……。
ルイ
「ふぅ〜〜」
総司
「うぐっ――?!」
ルイ
「それじゃ……“朝まで”――“楽しもっか”?」
総司
「……好きにしてください――おほほっ……うぅ」
お風呂に続き、ルイの部屋でもお楽しみは続く。
相変わらずルイは元気で、ほんっと――ピンピンしている。
あり得ない程、“色々あったのに”……ルイは――。
ルイ
「はぁ……アナタ――“好きよ”? “大好きよ”……」
ルイ
「“愛してる”……“愛してるの”――“狂おしい程”」
総司
「あぁ……“俺もだよ”――“ルイ”」
ルイ
「うっふふっ――こうして抱き合ってるだけで……」
ルイ
「ふぅ……“凄く安心する”……はぁ――暖かい……」
総司
「ルイ……“満足するまで”、好きにしていいからな?」
ルイ
「うん……“全然足りないもん”――もっと欲しいの」
総司
「そっか――なら、好きにしてくれ」
ルイ
「うん……“本当は数日間”、こうしていたいよ……」
総司
「す……数日――間?」
ルイ
「うん……“ずっと一緒にこうしていたいの”……」
総司
「そんな事したら……“多分死ぬぜ”……?」
ルイ
「ふふっ……“大丈夫よ”――“きっと耐えられる”」
総司
「いやいやいや……“ソッチはね”?」
ルイ
「大丈夫――“アナタも耐えられるわ”?」
総司
「“今でもキツイのに”……?」
ルイ
「うん……きっと大丈夫。“徐々に慣れて行くから”」
耳許でずっとこんな、イチャコラした会話が続く。
ひと時の幸せな時間って、こう言う事を言うのだろう。
総司
「ルイが辛くなければ……いつまでも付き合うさ」
ルイ
「うん……“気の済むまで付き合って”?」
ルイ
「うっふふっ……私――本当……“駄目な子なの”」
総司
「……それくらいが可愛くていい」
……ギュッ――ぎゅっ――。
俺はバッキバキな体で、ルイを抱き締めた。
華奢で小柄なルイを抱き締めながら、ルイの温もりや、叡智な匂いを感じる。
総司
「あぁ……ヤベェわ――ルイ……お前――マヂで」
ルイ
「うふふっ……“ナニが”?」
総司
「ふぅ……“ナニって”――“色々全部だよ”……」
ルイ
「そう……“褒めてくれてありがと”――えへへっ?」
総司
「ふぅ……“もう無理だ”――イイぜ……もう?」
ルイ
「えぇ……もう限界よ――はぁ……それじゃ――」
ルイ
「……んっ――ちゅっ……ふふっ――始めましょ?」
総司
「あぁ……んっ――」
限界に限界を重ね、限界に至るのです。
まるで、ナントカ構文みたいだった。
もう……とっくの昔に限界なのに――。
俺達は……“色々と戦い始める”のだから。
俺はただ……底が見えないルイに付き合うだけ。
ルイが楽しくて、満足出来るならば……。
俺はただ、それに付き合ってやるだけなのだ。
ルイ
「あぁ……大変――うっふふっ?」
ルイ
「もう……“止められないわ”――ゴメンね?」
総司
「イイよ……“好きに暴れてくれ”」
ルイ
「うん……!! ゴメン――本当に……んっ――」
総司
「……んっ」
もうここまで来たら止まらない――。
ルイはもう……きっと止められない。
お互いが止まるその時まで――戦いは終わらない。
これから……毎日の様に、戦いが続くと思うと――。
ほんっと……怖くて堪らない。
でも――戦い続けるしか無いのだ。
この幸せな時間をお互い、失いたく無いのだから。
失わない為に、戦い続けるのだ。
“必死に”――。




