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異世界ライフ加護が熊 〜転生したら神の熊がついてきた〜  作者: マーたん


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第7話 王の血と森の誓い

テーマは「加護の真実と裏切り」「王族と神の因果」。

リクが“熊の加護”の真名に触れ、

学院を超える王都の闇と向き合う転換回となります。




第7話 王の血と森の誓い


 闇の森試験から三日後。

 学院の鐘楼がゆっくりと朝日を受け、王都の空に鈍く光っていた。

 しかし、その平穏な朝に似つかわしくない重苦しい空気が、学院の一角を満たしていた。


 ――“加護観測室”。

 王都の魔導技師たちが管理する特別区画で、学生たちの加護の波動を測定・記録する場所だ。


 リクは、そこに呼び出されていた。


「また“検査”か……」


 袖をまくると、腕の熊の紋が微かに光った。

 戦闘時の暴走の影響が残っているのか、時折、熊の咆哮が心の奥で響く。


 やがて扉が開き、王族特任官・グレイス卿が現れた。

 白金の外套に、蒼い印章を胸に掲げている。

 学院においても“王直属の加護監察官”という異例の地位を持つ男だ。


「リク・エルド。お前の加護について、王家から正式な照会が来ている」


「……王家が? なぜ、俺なんかの加護を」


「お前の中に宿る存在――“熊神クマガミバル・オルド”は、古王朝時代に封印された神獣の一柱だ。

 本来、人の加護として降りるはずのない存在だ」


 リクの喉が詰まった。

 熊の加護は、ただの力ではなかった。

 “神”そのもの――。


「俺は……神に選ばれたってことか?」


「選ばれた、のではない。“取り憑かれた”のだ」


 グレイスの瞳が冷たく光る。

 リクの背筋を、ぞわりとした悪寒が走った。


「封印が解けかけている。暴走すれば、王都そのものが呑まれる。

 ゆえに、王は命じられた。――“熊の加護の宿主を監視し、必要とあらば処断せよ”」


「……俺を、殺すつもりか」


「まだその段階ではない。ただし、お前の存在が危険であることは確かだ」


 リクの拳が震える。

 心の中で、何かがうねるように怒りを吐き出した。

 それは、自分ではない“何か”――熊神の声。


 『我を否定するか、人の子よ――』


「やめろ! 出てくるな!」

 リクは頭を押さえ、床に膝をついた。

 その瞬間、室内の光水晶が割れ、観測装置が爆ぜる。


「リク、制御しろッ!」


 怒号が響くが、もう遅い。

 熊神の影が背後に立ち上がり、巨大な金色の眼が開いた。

 空気が圧し潰されるような重圧。

 それはまるで、古代の神獣が再び現世に姿を現す瞬間のようだった。


 『我は古き誓約の守護者――“バル・オルド”。

  血の誓いにより、王の血脈を見届けし者なり』


「……王の血脈? どういう意味だ!」

 リクが叫ぶ。


 熊神の視線が、グレイス卿へと向いた。

 そして低く響いた。


 『そやつの血にも、古き誓約の印がある。王族の末、裏切りの子孫よ――』


「黙れッ!」

 グレイスの目が怒りに燃えた瞬間、光の剣が生まれ、リクの足元に突き立つ。

 バル・オルドの影が霧散するが、リクの体からはなお黒い光が滲み出ていた。


「……今の言葉、どういうことだ」

「知らん。だが、貴様の加護は王家にとって“禁忌”だ。

 これ以上、表に出れば学院もお前を庇いきれぬ」


 その言葉を最後に、グレイスは立ち去った。



 夕刻。

 学院の中庭で、ユリシアとエルヴァンがリクを待っていた。

 顔には疲れが滲んでいる。


「また検査、だったのね」

「ああ……でも、どうやら俺の加護、ただの熊じゃなかったみたいだ」


「知ってたさ」

 エルヴァンが淡々と言った。

「“闇の森”でお前が見せた力、あれは神格級。

 俺の父――王も、そんな存在を放っておくわけがない」


 リクが顔を上げる。

 エルヴァンの瞳はどこか哀しげだった。


「お前……知ってたのか? 王家の命令を」


「知ってた。けど、俺はお前を敵にしたくない」


 ユリシアが二人の間に入った。

「だったら、誓いを立てましょう。

 加護がどうであれ、私たちは仲間。

 互いを裏切らないって」


 リクは思わず笑った。

 だがその笑みの裏で、熊の声がまた響く。


 『王の血、再び巡る時……誓いの森は炎に包まれよう。

  その時、お前は“人”か“神”か、選ばねばならぬ』


 森の風がざわめく。

 夕陽が、三人の影を長く伸ばしていった。

第7話は、“神熊バル・オルド”という存在の正体が明らかになる転換点。

 リクの加護は、ただの力ではなく――かつて王家と誓約を交わした古代の神そのものだった。


 学院での平穏は終わり、

 次回からは王族の陰謀と、加護の継承戦争へと物語が踏み込む。

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