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異世界ライフ加護が熊 〜転生したら神の熊がついてきた〜  作者: マーたん


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45/51

異端の共闘

…。

異端の共闘 ― 闇の森再現試験 ―


 影王封印核との対面から数日後。


 学院の空気は張り詰めていた。

 王族魔導院《アルセリア学院》は、明日行われる“最重要試験”の準備に追われている。


 ――闇の森再現試験。


 魔力障壁を利用して、かつて世界を覆った“闇の森”を再構成するという、

 実戦さながらの巨大試験場。


 そこで、魔獣討伐、陣形構築、救助、敵判断――

 あらゆるスキルが試される。


 なのに、だ。


 俺とセリアは試験前日、呼び出されていた。


 担当教官の部屋に入った途端、

 教官・バルドの眉間が深く寄った。


 「……リク・モトシバ、おまえだ。問題は」


 「は?」


 「先日の封印核の騒動……原因の七割は、お前の“加護の暴走”と報告されている」


 「いや待て、俺は――!」


 隣のセリアがすかさず前に出た。


 「違います! 暴走じゃありません!

  リクはむしろ“封印核が起動したのを抑えた”側です!」


 バルドはため息をついた。


 「分かっている。だが、お前の熊加護は“規格外”だ。

  上層部は、お前を試験から外すべきか討議している」


 試験から……外す?


 ここまで努力してきて、今さら?


 俺が怒りで口を開こうとした瞬間――

 セリアが俺の手を握り、静かに言った。


 「……一緒に受けるよ。

  だって、あなたを1人にしたら本当に暴走するでしょ?」


 「誰が暴走だよ……」


 「ほら、そういうとこ」


 その笑みに、胸の中がすっと軽くなった。


 バルドが咳払いをして告げる。


 「そこでだ。今回の試験は、ペアでの参加と決まった」


 「ペア?」


 「そうだ。

  リク・モトシバ、セリア・ウィンドレイ。

  お前たち二人で組め。」


 空気が止まった。


 セリアが目をぱちくりさせる。


 「わ、私たちが……?」


 「文句があるなら影王に言ってこい。

  今回の試験は“加護の相性”を測る実験も兼ねている。

  お前ら二人の相性は……異端だ。だが完璧でもある」


 相性?

 俺とセリアの?


 セリアは少し赤くなり、そっぽを向いた。


 「……そ、そんなの、気にしなくていいのよ。

  試験よ、試験」


 教官室を出たあと、

 学院の廊下に夜風が流れる。


 俺が口を開いた。


 「……なあ、セリア。ほんとに大丈夫なのか?

  俺の加護、危なすぎるだろ」


 セリアは笑って、俺の胸を軽く指でつついた。


 「大丈夫。

  だってリクは、暴走したこと……一度もないもの」


 「いや、あの熊影とか――」


 「暴走じゃなくて“守ろうとした”だけ。

  私は知ってるよ」


 風が彼女の髪を揺らす。

 その横顔は不思議なほど温かい光を帯びていた。


 ――守ろうとしただけ。


 その言葉に、胸が熱くなる。


 でも、その穏やかな時間は長く続かなかった。


◆◇◆


 翌日。


 学院中央訓練場に集まった数百人の生徒がざわめく中、

 巨大な闇のゲートが形成されていた。


 黒い木々。霧に包まれた大地。

 そして遥か奥から響く魔獣の咆哮。


 まさに――地獄。


 リクとセリアの前に、バルド教官が立つ。


 「お前ら、聞いておけ。

  再現試験とはいえ、死者が出てもおかしくない。

  だがペアで動けば生存率は跳ね上がる」


 セリアが軽やかに構える。


 「さて、リク。行きましょうか」


 俺は深呼吸して、拳を握った。


 ――影王の封印核が俺を“神殺し”と呼んだ真意を知るためにも。

 ――神熊の本当の力を知るためにも。


 闇の森へ踏み込むしかない。


 セリアが小さく呟いた。


 「……一緒に、帰ってこようね」


 俺はうなずき、手を前に差し出した。


 「もちろんだ」


 セリアは少し照れた顔で、その手を握り返す。


 その瞬間――


 風と熊の加護が同時に脈動した。


 空気が震え、魔力が渦を巻く。


 周囲の生徒たちがざわついた。


 「な、なんだ……!?」

 「あれが問題児ペアか……」


 バルドが驚愕で目を見開く。


 「……本当に“相性”が合ってやがる……!」


 そして。


 二人の影が重なった瞬間、

 闇の森のゲートが開いた。


 黒い風が吹き荒れ、森の奥から何かが咆哮する。


 闇の森――再現試験が、始まった。

 …。

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