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異世界ライフ加護が熊 〜転生したら神の熊がついてきた〜  作者: マーたん


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43/51

エピソード0

ここからはじまった

**『異世界ライフ加護が熊


〜転生したら神の熊がついてきた〜』

エピソード0「神熊は見ていた」**



 夜の森は静かだった。

 ――いや、“静かなようで、静かではない”と言ったほうが正しい。


 木々は風のないのに揺れ、

 足元の落ち葉は誰も踏んでいないのに沈む。

 そして、そのすべてを見下ろすように、

 一頭の巨大な影が月を背負って佇んでいた。


 神熊――《クマル=オルド》。


 世界がまだ若く、

 精霊と獣と神が混ざり合って生きていたころから存在する、

 この大陸最古の守護獣。


 彼は何千年にも渡り、

 この森、この大地、この空を見てきた。


 だがその目は、

 ただの獣のものではない。


 **“選ぶ者の目”**だった。


 「……また、ひとつ魂が落ちてきおったか」


 白い息が月明かりに溶ける。

 神熊は、森の上空に漂う小さな光点をじっと見つめていた。


 まだ形を持たぬ魂――

 ひどく疲れて、ボロボロに擦り切れた魂だ。


 まるで、長い長い人生を終えた直後のように。


 ――その魂には、何かがあった。


 諦め、憔悴、後悔。

 それでもなお、最後の瞬間にかすかな願いを抱いた痕跡。


 「ふむ……“もう一度やり直したい”とな」


 神熊は静かにうなった。


 滅多にないことだ。

 異世界から落ちてくる魂のほとんどは、

 自れを失った欠片のようなもの。

 だが、この魂は違う。


 意志がある。

 忘れまいと足掻く、強い芯がある。


 そして何より――


 「この匂い。面白い。獣とも精霊とも違う。人とも違う……」


 神熊はその魂に前足を伸ばし、

 まるで優しく抱き上げるように触れた。


 光が神熊の爪に吸い込まれる。

 その瞬間、森中に圧が走った。


 ――祝福(加護)の授与。


 「我が名を与える。

  クマル=オルドの加護を持つ者よ。

  次の生で、己の道を見つけるがいい」


 だが神熊は知っていた。


 この加護は、

 “人の村では忌み嫌われる”。


 粗暴、蛮勇、巨大な力。

 熊加護は危険を呼ぶとされ、

 時に村から追放される者もいた。


 しかし――それでも与えた。


 「強い力ほど、扱う者の心を映す。

  この魂ならば、いずれ正しく振るえる」


 神熊は背を向けながら、

 ふと思い出した。


 この魂の最後の記憶――

 疲れ果てた会社員、42歳。

 名は「ユウ」。


 誰にも頼られず、誰も守れなかった人生。

 だが、それでも捨てきれない優しさを抱えた男。


 「次は、守りたいものを守るがよい」


 そう呟いた時、

 神熊の足元に小さな風が渦を巻いた。


 魂が消え、新たな旅へ出たのだ。


 神熊は最後に一度だけ空を見上げた。


 「……また、会うことになりそうだな。ユウよ」

ココカラ

 ハジマッタでアルYO!!

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