第17話 風と紅の誓い
こ????
第17話 風と紅の誓い ― 静寂の先の鼓動 ―
――森の奥、夜明け前の静寂。
リクとセリアは、スパーキング・バードの加護を背に、一夜を明かしていた。
焚き火の揺らめきが二人の影を長く伸ばす。森はまだ冷たく、風が木々を揺らす音が心地よく響いた。
「……もう、怖くない」
セリアの声は柔らかく、けれど微かに震えていた。
リクは焚き火に手をかざしながら、じっと彼女を見つめる。
「……俺もだ」
紅い加護がわずかに脈打つ。
それは、彼自身の心の鼓動ともリンクしているかのようだった。
互いに目を合わせ、長い沈黙が流れる。
戦場を越え、神界の混乱を経て、ようやく二人は静かに隣り合うことができた。
「リク……私、ずっと思ってた」
セリアの言葉に、リクの胸が高鳴る。
「俺も……お前と同じ気持ちだ」
声が途切れ、焚き火のパチパチという音だけが森に響く。
紅き獣の加護は、まだ眠っているが、二人の間で静かに息づく。
セリアの風の加護とリクの熊の加護が、互いに触れ合い、微かに光を帯びる。
火の向こう側で、夜露が葉を濡らし、静かに滴る。
二人の距離は少しずつ縮まり、肩が触れ合う。
互いの体温を感じることで、戦いの記憶と孤独が和らいでいく。
「……このまま、ずっと一緒にいていいのかな」
セリアが目を伏せる。
「……ああ、俺が守る」
リクの声は、低く、力強い。
言葉以上の想いが、静かに二人の間に流れた。
その時、森の風が囁く。
葉の間から差し込む月明かりに、二人の影が一つになって揺れる。
初めての戦場を越えた先に見つけた、静かな絆――。
焚き火が赤く揺れ、夜が明け始める。
二人は互いに微笑み、初めて言葉にせずとも心の距離を感じ合った。
これまでの喪失と戦いの中で、ようやく芽生えた、確かな“信頼と想い”。
紅の誓いは、静かに風の精霊と共鳴し、森の奥に優しく響いた。
――二人の未来への小さな灯火が、ここに生まれた瞬間だった。
続き ― 静寂の森での共鳴
焚き火の赤い光が、リクとセリアの顔を柔らかく照らす。森の奥深く、周囲には微かな動物の気配と風の音だけが残る。
リクはそっと手を伸ばし、セリアの手に触れる。温かい。これまで孤独と戦いに押し潰されそうだった自分が、初めて安心できる瞬間だった。
「リク……」
セリアの声は小さく、けれど確かに震えていた。彼女の心が迷いや不安を抱えていることが、手の感触から伝わる。
「ずっと守るって、俺……言ったよな」
リクは微笑みを抑え、力強く手を握り返す。
熊の加護が微かに赤く光り、二人の間に共鳴するような温かさを生む。
森の風が、二人を包む。セリアの風の加護と、リクの熊の加護が触れ合い、まるで一つの鼓動のように森に広がる。
不思議な静けさ。森そのものが、二人の気持ちを祝福しているかのようだった。
「……リク、私……あなたと一緒にいたい」
セリアの瞳が真っ直ぐにリクを見つめる。
その瞳に、長い旅路で培った信頼と、少しずつ芽生えた愛情が映し出される。
「俺もだ、セリア」
リクの言葉に、紅い加護が胸で脈打つ。
戦場でも神界でも、互いを信じてきた日々が、今、静かに結実する瞬間だった。
二人の間に言葉は必要なかった。手の温もりと目線だけで、すべてが伝わる。
森の闇が少しずつ明け始め、焚き火の赤が朝の光と溶け合う。
戦いの疲れ、孤独、加護の重圧……すべてを超え、二人は互いに寄り添うことで安心を得たのだった。
紅の誓いと風の加護が、二人の心をそっと結びつける。森の奥に、静かに響く鼓動――
リクとセリアの新たな絆の始まりだった。
こめんがんす??




