先ずやっぱり自分の死エンドを回避しないとね
「分かればいい」
私はギルバート王子の言葉に小さく頷いて彼の顔を見た。
ゲームの攻略対象ではないがラスボスらしく美形である。銀糸の髪に氷を思わせるような澄んだ青の瞳。
何より造詣が完璧である。
だが……ラスボス死エンドなのだ。
私はそれ以前の一行ップだけど。
問題はこの一行ップ回避が最大の問題なのだ。時間もない。理由も分からない。ないない尽くしの死エンドをどう回避するか。
「ギルバート王子、その……私はお飾りの王子の正妃で良いです。もし、愛する人が出来たら私のことは気にせず……」
どうぞ。どうぞ。ラブストーリーを綴ってください。と言おうと思った。
多くの断罪エンドや死エンドは相手への執着、若しくは、相手が執着されているという感覚から生まれるのだ。
ならば最初から私は飾りでいいと明言している方が生存確率が上がると思ったのである。が、「せず……その人を大切にしてください」と言いかけたその言葉に被さるようにギルバート王子の声が響いた。
「言っておくが、俺はリリカ、お前が他の男を望むことを許さない。俺も側室を入れるつもりはない! お前は何もわかってない!」
私は怒っているギルバート王子の顔を見つめた。公爵家に対する気遣いや立場上の言い繕いか。そう思ったけど、マジで真剣に怒っている気がするわ。
そもそも播磨るりだった時もそうだけど、リリカもそうだけど、ここまで太っちゃうと全然見てもらえないのよ。
心さえ美しければ姿なんて……というのはぜーんぜん現実的じゃないのよね。
私は小さく息を吐き出した。
「ギルバート王子、私はギルバート王子が他に好きな人が出来て……」
言いかけて涙がポロリと落ちた。いやいや、胸が痛んでいないしギルバート王子を好きなわけでもないのに涙がポロポロと落ちた。
ギルバート王子がじっと私を見つめている。
何か、これこそ涙で訴える女の手腕的な状況。やばいやばい。
だけど。
これはきっと私の忘れているリリカの心の涙なのかもしれない。
もしかしたら。
いや、そうね。ギルバート王子にお手打ちされるんだから本当はリリカは王子が好きなのかもしれない。
でも、だから。切り捨て御免死エンドなのかも。
思った瞬間にフワリと温もりが私を包んだ。
え?
ええ??
私は目を見開いて顔を上げた。
真剣で優しい瞳が私を見ている。
「リリカ、ずっと言っている。俺は側室は設けない。お前だけだ」
フワリと笑ってギルバート王子が告げた。
優しい微笑だ。
私はジーと彼を見つめた。
どうもお手打ち御免をするような人間に見えない。
理由があるのかもしれない。
「ギルバート王子、実は……溺れて気を失っている時に恐ろしい夢を見たんです」
私は私の死エンドを避けるためにギルバート王子に一歩踏み込もうと決めた。何故、リリカ・フォン・ロレーヌが一行ップになったのか。
先ずそこから知ることが必要だと思ったからだ。
「私が殺される夢だったんです。その相手が王子だったかもしれない……だから私が王子に執着しすぎてそんなことになったのかもしれないと思ったんです」




