クリスタルキングダムのご説明
「言っておくが、リリカ。お前と私の結婚は市井の恋愛ごとではない。国を揺るがす政略結婚だ。可愛くないから婚約解消で済む話ではない」
私はドキッパリと正論をかますギルバート王子を見つめ納得した。
確かに貴族でも1、2位を争う力を持つロレーヌ公爵家と王族の完璧なる政略結婚なのだ。
好きだ。
嫌いだ。
などと感情恋愛論で終わる話ではない。
「確かに」
と私は至極納得と頷きかけてハッとした。
「でも、私……一行ップのリリカ・フォン・ロレーヌは貴方の切り捨て御免で殺されちゃうじゃん!? もうそれって感情恋愛論の方がマシな展開だよね?」
しっかりしろ! 転生に気付いて人生エンドは避けたい。
私は周囲のメイドたちが誰も口出しできないと蒼褪めながら凍り付いている中で懸命に計算をしまくった。
「これならお手打ち御免のエンドの理由をもっと詳しく知っていれば良かった!!」
理由が分かっていればそれを回避すれば終わるのに。
その理由が一行っプにはないのだ。
クリスタルキングダムの主人公は一行っプの私リリカ・フォン・ロレーヌでもなければ、ギルバート第一王子でもない。
彼の弟の第二王子であるアレクサンダー王子である。
王位を継いだギルバート王の国民への圧政に対抗しアレクサンダー王子が王位を簒奪し彼の妻であり聖王妃と言われるようになるメアリ・フォン・フローレンスが国を立て直すというストーリーだ。
ただメアリ・フォン・フローレンスが攻略対象を公式のアレクサンダー王子にした場合の公式ストーリーである。他にも騎士団長のキルギスや宰相になるジェイムズなど攻略対象は多い。
しかし、ギルバート第一王子は攻略対象にはなっていないのだ。
私はそれを思い出してハッとした。
「待って! 私は一行っプだけど……ギルバート王子は考えなくてもラスボス! 悪役令嬢ならぬ悪役王子だわ!」
それに気付いた。
つまり、私と彼は一蓮托生……ではなく。どっちも死エンドだということだ。
「聞いているのか? リリア」
私は目の前にドーンと現れたギルバート王子の顔に思わず後退った。
「あ、すみません」
「いや、言っておくが俺がお前以外の誰かを娶るつもりはない」
「はい、わかりました」
私は気付いてしまった事実にギルバート王子の言葉が耳にあまり入ってこなかった。
自分たちカップルの末路はどちらにしても『切り捨て』『断罪』死エンドなのだ。
そぉぉれはないだろ。
私はジッと見つめてくるギルバート王子を見つめ返し心を決めた。
「死エンド回避……というか、一行っプ令嬢を返上させてもらいます!」