光属性の適性
私たちは剣の練習で使っている花園の中にある広間へと移動した。
フレデリック・フォン・ハミルトンは笑みを浮かべて魔法陣を描いて手を翳した。
瞬間に魔法陣から淡い光の膜が広がり彼を包み込んだ。
「黒魔法のみならず魔法攻撃から身を守る防御の魔法です。但しこれは極狭い空間だけしか守りませんが個人の場合はこれで十分でしょう。もう一つ少し変化を加えたものがあったと思いますがそれが範囲防御です。そちらは魔力消耗は激しいですが魔力の量によって範囲が決まる強力な防御魔法です。戦争などでも使われますよ」
私はウヒッと声を上げそうになった。戦争でもって……って思いつつ、個人を守る防御魔法の陣を描いて手を翳した。陣が魔力を吸い込むのを感じた瞬間に淡い光の膜が私を包み込んだ。
「先生、上手く行ったみたいです」
フレデリック・フォン・ハミルトンは目を細めて口角を上げると笑みを浮かべた。思っていた通りという表情であった。
「上手く行きましたね。ではギルバート王子もお願いします」
ギルバートも陣を描くと手を当てた。同じように淡い光の膜が広がり包み込んだ。
「ハミルトン男爵、もしかして私もリリカも光属性の適性があるということですか?」
「そう言うことですね。多くの人は陣を描けても発動はしないんですよ。これはある程度想定の範囲内でしたが……思った以上に相性がいいみたいですね。特にリリカ様は」
私はもしかしてゲームの補正かも、と思いながら次の魔法陣をフレデリック・フォン・ハミルトンに勧められて描いた。そして手を当てた。
温かい何かが周囲に広がり身体が軽くなった気がした。
「これは回復魔法です。治癒に使うことが出来ます。やはり光属性の魔法と相性がいいですね。もう一つ似た陣を教えておきましたがそれが範囲です。それも戦争で使われるものです」
フレデリック・フォン・ハミルトンの言葉に私はもしやという気持ちが起きた。フレデリック・フォン・ハミルトンはこの先大きな動乱が起きると予測しているのかもしれないということだ。
ゲームでは大きな動乱はギルバートが一方的に貴族……特にはマリベル妃に関係している派閥を粉砕し強力な圧政を敷いたことと、アレクサンダー第二王子とメアリ・フォン・フローレンスが立ち上がって大きな内乱になること以外はなかった。
その時には既にリリカ・フォン・ロレーヌは死んでいて、今の時点とは違っている。ゲームでは14歳でギルバート王子のお手打ちにあうはずだった私は無事に15歳を迎え魔法学校入学は目の前だ。
だけど。
だからこそ。
油断は出来ないのかもしれない。
フレデリック・フォン・ハミルトンは私とギルバートに今度は光属性の攻撃魔法の陣を描かせた。私は陣を描き木に向かって放った。
瞬間に木は光の矢を受けて粉砕し、それにはフレデリック・フォン・ハミルトンもギルバートも目を見張った。
ドーンと音がして木が弾け……マジか、と腰が抜けた。
いやいや、何て危険な陣を先生覚えさせるんですか!? である。
ギルバートも同じ陣を描いたものの光の小さな矢が木に刺さり傷を作った程度だったのだ。
フレデリック・フォン・ハミルトンは息を吐き出すと私とギルバートに目を向けた。
「思っていた以上の適性ですね。リリカさまは……聖者の素養あります。幾つかの高度な魔法陣を知っておられたので、もしやとは思いましたが思っていた以上です」
ギルバートは私を見つめ少し視線を下げて直ぐにフレデリック・フォン・ハミルトンを見た。
「ハミルトン男爵、できればリリカのことは内密にお願いしたい。もしそうなるとリリカは国の魔法協会の管理下に入らなければならなくなるが……俺はそこを信用していない」
え? 王子なのに?? と私はギルバートを見た。
フレデリック・フォン・ハミルトンも少し表情を曇らせた。
「魔法協会の協会長はフェルミナ伯爵家と姻戚関係のあるアーロ・フォン・ファーマス伯爵だからですか? 副協会長は私の父フレディー・フォン・ハミルトンですが……確かに王子のお気持ちはわかりますし……そうですね、暫く内密にしておきましょう」
どうやらフレデリック・フォン・ハミルトンもマリベル妃の背後にいる貴族たちに何かを思っているみたい。
私の力は三人の秘密ということで翌日、フレデリック・フォン・ハミルトンは私と母に聖魔具をプレゼントしてくれた。
それは綺麗な花の形をした聖魔石のブローチだった。
母も私の話を聞いてブローチをつけて二人で三日後、母の姉が催したお茶会に参加するためにフェルミナ伯爵家へと出向いた。
青く晴れた空が広がり、心地よい温かな風が流れた午前のことだった。




