疑惑のお茶会対策
父も少し考えていた。
そりゃそうよね。私がフェルミナ伯爵家のお茶会で溺れて大変だった時に本当なら直ぐに連絡を入れて来なければならないはずのエレーヌ・フォン・フェルミナが全く音信不通の上に母の手紙にも応答していなかったのに今になって突然お茶会に誘ってくるとなると勘繰ってしまう。
何かよくないことを考えているのではないか、と。
母はそれでも行くつもりがあるようだった。
「お姉さまのことも心配だし、行こうと思うのよ」
私はそれに顔を上げた。
「だったら、私も行くわ。フェルミナ伯爵家のお茶会で溺れて騒ぎになってしまったんだもの伯母様に謝りたいわ」
「……私も行きたいところだが奥方のお茶会に出席するのは難しいからな」
確かにそれは難しい。貴族社会はそれこそ噂社会なのだ。
とにかく母は私が付いていくことは許してくれた。
私は食事を終えると勉強部屋に入り魔法本を開いた。
「黒魔術、魔呪具……お茶会に行くまでにそれに対抗する方法を手に入れておいた方が良いわね」
お茶会は5日後。
私は翌日の魔法の勉強の時にハミルトン男爵家の人間だけれどフレデリック・フォン・ハミルトンを信用することに決めた。
何時ものようにマラソンとミュラー・フォン・アームストロングの指導の下で剣の練習を行い、午後からフレデリック・フォン・ハミルトンの魔法の勉強となった。
私はギルバートと共に応接室という名の勉強室でフレデリックから魔法陣と魔力の講義を受けようとしていた。が、私は手を上げると質問を先に投げかけた。
そうしなければ講義で終わってしまうし、何よりも時間がなかったからだ。
「ハミルトン先生、黒魔術や魔呪具を退ける魔法ってあるんでしょうか?」
私の質問にギルバートとフレデリックは顔を向けた。
確かに見え見えの質問だけどこれは死活問題なので仕方がない。母が万一の時は助けなければいけないからその手法を手に入れておきたかった。
ギルバートが最初に唇を開いた。
「もしかしてフェルミナ伯爵家へ行くのか?」
「え? どうして」
「アレクからコッソリと忠告されたんだ。アレクはメアリから注意するように言われていたらしいんだけどフェルミナ伯爵家へリリカが行った時に噴水で溺れたのには疑惑があるから注意して欲しいって」
私は改めて親友でヒロインのメアリ・フォン・フローレンスに感謝した。彼女は本当に心が優しいしとても知的なのだ。
「実は私が溺れた時に音信がなかった伯母様から母に5日後にお茶会に来てほしいって連絡があったの。私も何かあるかもしれないと思っていくことにしたの」
ギルバートは顔を顰めて拳を作った。
「俺は行くのは危険だと思う。母の部屋で魔呪具を発見したのはフェルミナ伯爵家と繋がりがあるコーラル男爵家で仕えていた騎士だった。その魔呪具が何時どんな形で母の部屋にあったのかは分からないけれど母が処刑されて……マリベル妃が……俺を生かすことを嘆願してくれたからアレクやマリベル王妃を疑ってはいないけどフェルミナ伯爵家が王にマリベル妃を正妃につけるように勧めたことは有名な話だ」
そう言ってチラリとフレデリックを見た。
フレデリックはどちらかというとフェルミナ伯爵家やマリベル妃側なのだ。それでもギルバートがこの話をするということはそれだけ信頼があるということなのだろう。
フレデリックは冷静に私とギルバートに唇を開いた。
「二人には黒魔術と魔呪具について話しておいた方がいいですね」
……黒魔術やそれを利用した魔呪具は失敗すれば使った人間に揺り返しを与える諸刃の魔法なのです……




