001:日常
異能───。この世の理から外れたチカラ。一般人...いや、健常者には関連のないものである。その異能を表現に使う者、その異能を悪事に使う者...、それに抗う者...。そしてこの学園でも、異能によってある少年が巻き込まれる。実際は既に巻き込まれていたのやもしれない...。
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⁇「...?!」
⁇「会長??」
⁇「今の彼...私の能力で...」
⁇「まさか....」
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朝8時頃、晴れ間がのぞく涼しい気候。多くの制服が風と歩行に揺れている。
「よっ覇月ちゃーん、おはよっーー」
肩を掴まれる。
「...おぅ、おはよーっ......」
今日は、入学から一ヶ月が経つ、第三・八曜日。俺、こと覇月ちゃーん…の日常が───、始まった───。
第一話[日常]
「んだよォ、ムスッとしてぇー」
同級生の荒々しい手がむちむちッ、と白い肌を摘む。
「...むちむち触んなっ、手!指!皮脂がッ──」
「コノコノーーおらぁーー」
「っ、だから手の皮脂ッ。とか汗がもう気持ち悪ィ!!」
こいつとは特別親しいとか、まだ一ヶ月だしないけど...。ばかな"気のいいやつ"として絡むことにした。で、こいつの名前は────
「ソレ〜!!!」
彼が覇月ちゃーん(?)の頭を掴み、わしゃわしゃと掻き乱す。足を巻きつける猛攻が始まり、周りの生徒が水たまりのように彼らを避けて行く。
「だからやめっ、やめろって!なんだって朝からこんな...」
身体を捩ってセクハラな触手から逃れようとする。
「いいじゃねーかーー!」
「「覇月ちゃん」」
わかっていたというように覇月ちゃんはそれを制した。
「ってやつ。ハァ....それお前やめろっ、キモいっ。」
(ソワソワする、ソワソワ。)とジェスチャーで伝える。こいつにも伝わったようで、手を合わせて悪そうにしている。
わかったならいいと歩き出す俺に、こいつはニヤリと笑って言った。それもかなり悪そうな含み笑いで。
「んーわるかったーー、悪気ないっ、はづき…ちゃ──」
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1ノ1クラス───
「教室到着!!!」
「え?あいつ顔どうした」
「(ざわざわ)」
覇月達はいつも通り教室に着く。ただ、クラスメイトは、横にいる彼の様子が気になるようだ。
「はー…なんか面白ーくなることー…、無ェかなー」
「いまアンタの顔が1番よ」
こいつのボコボコにされた顔を見てクラスの奴らが話しかける。気になった他の奴らも集まってくる。
「やだーちょっとっ、何?あれ」
「おもしろー」
「顔ヤバッ、写真撮ろーっ」
パシャパシャ──
問題を起こしたアイドル、もしくは囚人のマグショット並にフラッシュが瞬いている。なぜか本人は揚々と撮られている。
「ははーこりゃ面白いわー」
「あっ、もしかして彼女と喧嘩したーー⁇」
犯人らしき男に女子が聞くも、すかさず覇月が反論する。
「いやオイ、女じゃ違うだろ!」
(氏でも、ねえし)
「どしたん…気ノ好...。」
「気ノ好、かおボッコボコじゃーん!」
気ノ好「あぁだいじょぶ、軽く殴らせてみたッ」
俺の肩を掴む。意味のわからない自慢げな姿にため息を吐く女子群。
「はあ────」
「コイツ、いいパンチ持ってるなーーっ、ハハーッ」
「へぇ────」
(引くわー…)と言わんばかりの顔をして、ゾロゾロと集まっていた群衆が散る。
「乙宮…」
「大変だね────乙ちん」
と同情するように俺の肩に手を置いて去ってった。勘違いされてないといいけど…。
というのも、俺はこの(中性的な)見た目からなのか、女子いじり、もといこいつの彼女扱いなどなど、散々な被害を受けていて...。
(はぁ...勘違いされてないといいけど...)
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「はぁーー…なんか楽しいコトないかなー…」
「気ノ好、お前どうした」
席に着いた気ノ好は珍しく気分を下げていた。
「いや、なんかフツーだなー。ってさ......」
と、覇月の机に顔を突っ伏している。
(お前は顔がフツーじゃないが...)
そう言いかけたが、こいつの話していることはわかる。
確かに、入学ってなんかこうもっと、ヌワーー!とかキャッ、ウフフッ!ってなって...って、期待してたし、残念だ、少し───少しだけ───。
「なんかこう、もっとぬわーー!とかっキャワーーとか、なりてぇよなぁ、とは思──」
「ッ、お前エスパーかッ!?」
考えていたことを当てられ、思わず出た言葉だった。
「いやーーさぁ、お前も感じてたか?いやー分かるっ、おれもさー乙宮さァ、分かっちまうんだぁなァー────」
「っ…。」
気のいい彼と高まりつつある教室のクラスらしさは、日常を安心と退屈の最中に彷徨わせる───。
「たしかに、...は...女子......ってな......思うわけさ!......」
覇月を、深い記憶の底から這い出す手助けをするように、そっと…蓋をする────。
「────さぁ...あっ先生来た、じゃな!また話す‼︎」
適当に返事をした。きっと女子だの歳下だのと話していたし、年頃らしい会話に華を咲かせていたのだろう、と自分と話していたことを忘れたまま窓の外を見つめる。
「エスパー…」
「エスパー…か────」
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覇月の脳裏に数分前の会話が少しよぎる。
『なんか、フツーだなってさ────』
『ッ、お前エスパーかッ!?』
「8曜日の日直ー、誰だー⁇」
(そうだ...)
「だっ誰もいない...?!」
(そう、フツーで良い...)
『だっ!誰も…いない...』
『たっ、助けてっ...』
「...ふぅー...」
「せ、先生、消すからなー」
(フツー、それで)
「ほ、ほんとに消すぞっ」
それでいい......。ふとよぎる。思い出す。
『誰も...助けには...』
『 コ ナ イ ッ ッ 』
ビクッ───。
「(ガタッ。)」
体のびくつきで机が動く、俺はふと我に帰る。
「...んーと、大丈夫...?」
「あぁ...うん...いや、大丈...夫──。」
クラスメイトに声をかけられ、溜めたため息を吐く。
「けっ、消したー...消したぞー(消したなー)」
気怠げな顔で窓の中を見つめる。
「よし、じゃあホームルームをはじめますっ。起立。」




