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第九話 兵器

お読みいただきありがとうございます。

下記HPにネタバレ込みのあらすじ(約一万字)を掲載しています。

興味を持っていただけましたら、是非一度お目通しいただければ幸いです。


https://ncode.syosetu.com/n9080jj/

「……あそこに出ろってことだよな?」

「だろうね。折角のお招きだし行ってみる?」

「ああ、ここまでされたら行くしかないよな。そもそもここからどうやって戻れば外に出られるのかもさっぱりわからんし」

「外への出口、あるといいんだけどねぇ」


 バルが他人事のような台詞を口にする。


「おいおい。ここから出られる自信があるから、お前先に入るって言ったんじゃなかったのかよ?」

「そんな自信あるわけないよ。君をほっとくと一人で先に入っちゃいそうだから、それなら僕が先に行くよって言っただけだってば」

「マジかよ。俺たち二人してお互いに先に行かれるぐらいならと思い込んで、我先に駆け込んだってのか」

「……そうみたいだね」


 自分たちのあまりの無鉄砲さに俺は天を仰いだ。

 こうなったら壁に開いた穴の先に出口に繋がる道があることを祈るしかない。

 覚悟を決めて穴を潜り先に進むと、昇降機があった部屋よりも遥かに広い空間が広がっていた。

 剣に付与した明かりだけでは、全てを照らしだすことができないほどの広さだ。


「なんだここは……。随分広い場所だな」


 剣を掲げて歩みを進めると、段々とこの広大な空間の様子が見えてきた。


「これはまた広い場所だな……」

「まるで基地か戦艦の中にあるハンガーデッキっぽい場所だね」

「だな。となると、ここは兵器か何か格納されている可能性があるな」


 ハンガーデッキとはエンジェルなどの巨大な兵器を格納し、整備を行う場所のことを指す。

 整備用のリフトなどの機器にエンジェルが扱うことを想定した巨大な剣や銃などの兵装が、壁にずらりと格納されている。

 中はしんと静まり返り不気味なほどの静寂が支配している。

 ここにはしばらく誰も人が訪れていない雰囲気があるが、それにしては設備の環境が綺麗に整っているように見える。

 まるでついさっきまでメンテナンスが行われており、いつでも稼働できるよほどに全てが整えられている。

 謎は深まるばかりだが、答えに繋がりそうな手がかりがまったく見当たらない。

 俺たちを、いや俺を、だろうか。

 ここに導いたなにかがいるとするなら、その目的は一体何なのか俺には皆目見当もつかないがそろそろ手がかりの一つでも見つけたいものだ。

 この空間の探索に俺が少し飽き始めた時、視力のいいバルが何かを見つけたようで声を上げた。


「見てアーベル、あそこにエンジェルみたいなものが立っているよ」


 バルの指さす先には、謎めいたハンガーデッキの奥に格納されているエンジェルらしき影があった。


「お、確かにそれっぽいな」


 そこに駆け寄り明かりを近づけてみると、確かにそれは人型起動兵器だった。

 金属製の躯体にそれを包む装甲、人体を模した関節部分の構造、カメラセンサーが搭載されている頭部には細い角のような突起がついている。


「……エンジェルっぽいがどうにも華奢な造りしているな。こんなやわな装甲、エンジェルとガチでやりあったらすぐ壊れちまうんじゃないか?」

「そうだねぇ。こんな薄い装甲じゃエンジェルの武器ですぐ壊されてしまいそうだけど、どうなんだろう」


 エンジェルの攻撃手段は、剣や槍など白兵戦用の武器がメインだ。

 魔法や機関砲など魔力を用いる遠隔武器はエンジェルの体を覆う厚い装甲を打ち破るには破壊力が不足しており、補助兵装として用いられることが多い。

 これはエンジェルの素材となる鉱物には抗魔力と呼ばれる魔力への耐性が備わっており、弱い魔力であればその効果が打ち消されてしまうという特性があるからだ。

 高濃度の魔力を圧縮してつくり出される閃光のごとき弾丸、通常“ビーム”と呼ばれるもののみが唯一遠隔攻撃で抵魔力を打ち破ることができる。

 しかしビームを運用するには高い出力の魔力を運用できる戦艦や、アークエンジェルなどの桁違いの出力をもつ機体が必要となるため一般的な攻撃手段にはならない。

 金属の塊というべき剣などの武器による物理的な攻撃こそが、エンジェルの耐魔装甲を打ち砕く事への最適解とされている。

 そのため機動力を犠牲にしてでも防御力を高めるため、エンジェルは分厚い装甲で覆われている。

 だというのに、目の前のあるエンジェルらしき機体はとても装甲が薄いのだ。

 軽量化を図った回避優先型の機体、とでもいうのだろうか、なんとも頼りない華奢な造りに見えてしまう。


「背中に羽みたいな装甲が取り付けてあるね。内部にスラスターが内臓されているみたいだけど、飛行を補助するパーツかな?」


 バルが指摘したのは機体の肩に取り付けられた長大な装甲だった。

 肩当というよりはバルの言う通り、肩から生えた翼という表現がしっくりくるデザインだ。


「背部にもスラスターがあるから、肩部二か所と合計で上半身に三つもスラスターを持っているのか。空中戦を想定した高機動型のエンジェルっぽいな。とりあえずコクピットに入れるかどうか確認してみるか」


 エンジェルを操縦するための席、つまりコクピットは大概、胸部装甲の中にある。

 ここがエンジェルの中で一番防御力が高く安全な場所とされているためだ。

 俺たちの目の前にあるエンジェルは直立状態なので、コクピットのある胸部の高さは凡そ十メートルほどの高さにあるようだ。

 そこまで向かうには魔法で飛ぶ必要がある。

 風を体に纏って空に飛ぼうとしたその時、上からポトリと俺の顔に何かが落ちてきた。

 黒い液体のようだ。

 俺が素早く顔を引っ込めて躱したそれは、金属製の床に触れるとジュッという音を立てて煙を立ち昇らせた。

お読みいただきありがとうございました。

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