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第五話 合流

お読みいただきありがとうございます。

下記HPにネタバレ込みのあらすじ(約一万字)を掲載しています。

興味を持っていただけましたら、是非一度お目通しいただければ幸いです。


https://ncode.syosetu.com/n9080jj/

 音がする方向に走り続けると、すぐにその正体を確認することができた。

 背が高くやや細身の赤毛の男とそれを取り囲む数体の人型生物。

 その体は獣のようなゴワゴワした毛で覆われ、頭部はハイエナのような肉食獣のそれだ。

 知性ある魔物の一種ノールである。

 辺境地域や開拓地の集落を襲撃し、住民を虐殺してその血肉を喰らう残虐な生物だ。

 どうやら森に潜んでいたノールの一群が、先ほどのエンジェル同士の戦闘の影響で戦闘本能が刺激され襲い掛かってきたようだ。

 ノールの一体が叫び声を上げながら赤毛の男、実はまぁバルなんだが、に飛び掛かるが、その口に光り輝く矢が打ち込まれると血しぶきを上げて地面に倒れ伏した。

 これなら一人でなんとかなりそうだと俺がのんびり腕を組んで眺めていると、バルが俺の方を向いて怒鳴ってきた。


「アーベル、そんなところで突っ立てないで助けてよ!」

「なんだバル、情けねぇ声あげて。一人でそれくらいのノール倒しきれるだろ」

「ちょ……! 僕の武器が遠隔だって知ってて放置するつもりかよ!」


 本名バルトロメオ=ディオス。

 俺の親友にして乳兄弟、形式上俺の従者という立場にあるが、そういうものは一切関係のない五分の友である。

 その耳は先端が少し尖っており、バルが人間とエルフ両者の血を引く混血種族ハーフエルフであることを意味している。

 エルフ特有の線の細さに整った容姿をもちながら人間の頑強さも併せ持つ、まさに両者のいいとこどりをした種族なのだが、アルデンフォーフェン王国、いやアルトナ大陸全土では人間から謂れのない差別を受けている。

 これはエルフという種族がかつて人間を支配していた事に起因するのだが、もはや太古の昔ことでありそのような事で差別するのはナンセンスな事だと俺は思っている。

 そんなバルが手にしている武器は、一見すると弦の張られていない弓幹だけに見える“魔法弓”だ。

 弓という割には、矢筒を下げておらず矢も手にしていないが魔法弓にそれらの物は必要ない。

 所有者が魔法弓の弓把を掴み魔力を流せば、魔力が弦と矢を形成する。

 腕力より魔力の扱いに優れた種族であるエルフたちが、自分たちのために創り出したという魔法弓は魔力の扱いに長けたものにとって剣や弓よりもはるかに扱いやすく殺傷力の高い武器となる。

 ハーフエルフであるバルも当然魔力の扱いに長けており、あらゆる属性の魔法をどれも中級クラスまで扱うことができる。

 風属性以外は初級の魔法すら扱うことが苦手な俺からすれば、なんとも羨ましい才能だ。

 バルの足元には今射殺したノールを含めて、既に四体に死体が転がっている。

 俺が手を貸さなくても十分殲滅できそうな勢いなのだが、確かにバルの言う通り遠隔武器である魔法弓は敵に接近されるとつらい。

 今残っているノールが一斉に襲い掛かってくるようであれば確かに厳しい状況に陥るだろう。


「しょうがねぇなぁ、貸し一だぞ」

「何が貸し一だよ、いつもこっちを振り回してばかりなのに……」


 俺が軽口をたたくとバルは口を尖らせてぶつくさと文句を言ういつものやり取り。

 どうやらバルは大丈夫そうだ。

 さてじゃれ合いはここまでにして目の前の敵を排除することに集中することにしよう。

 残るノールは三体。

 バルを取り囲むように展開しているがその後ろに俺が回り込み、挟み込んでいる状況だ。

 ノールたちはうなり声を上げながら牽制し、攻撃を仕掛けるタイミングを窺っている。

 獲物だと思っていたバルが想定外な抵抗を示したため慎重になっているようだ。

 緊張で萎縮している相手を背後から攻撃するほど楽なものはない。

 俺は腰に下げた長剣を抜刀し、正面にいるノールの背中を袈裟懸けに斬りつけた。

 右から左に剣が深くノールの肉を切り裂く。

 斬りつけたノールが倒れるのを確認した俺は、次に右側にいるノールの心臓を狙う。

 剣がノールの左胸を突き刺さり心臓を貫いた。

 ゴブりと口から血を吐き出し絶命するノール。

 遅まきながら左にいたノールが雄たけびを上げて俺に飛び掛かってくるが、意味のない行為だ。

 その背中に光り輝く数本の光の矢が突き刺さり、ノールの口から悲鳴が上がる。

 俺がノールに攻撃している間にバルが遊んでいるわけがなく、自分に対して注意が逸れたノールに対し魔法の矢を打ち込んでいたのだ。

 苦痛に悲鳴をあげるノールの口に剣を刺し込んで後頭部まで一気に貫く。

 そいつが絶命したのを確認した後、剣を引き抜き、邪魔な体を蹴り飛ばす。

 そして最後に肩から背中まで切り裂かれながらも、まだ手足をジタバタと動かしているノールの首目掛けて剣を振り下ろす。

 ノールはしばらくの間手足を動かしていたが、やがて力尽きて静かになった。

 一応他のノールの体にも全て剣を突き刺し確実に死んでいるかどうか確認する。

 魔物は人間とは比べ物にならない体力をもっているため、これぐらい念を入れておかないといきなり起き上がって襲い掛かってくることがあるのだ。

 周囲に気配は感じられない。

 とりあえずの危機からは脱せたようだ。

 やれやれ剣も服もノールの返り血でどす黒い赤色に染まってしまったが、仕方ない。

 そこらに生えている草を使って剣についた血糊を拭いながら、俺はバルに話しかけた。


「なんだよ、やっぱり一人でやれてんじゃん。主人の俺が血まみれになる必要あったわけ?」

「あのねぇ……。訳のわからない指示出されてそれに可能な限り応えた上で、何とかエンジェルを脱出したら今度はノールの群れに取り囲まれて、それでも何とか戦っていた家臣に対する態度がそれなわけ?」

「無事だったんだからいいじゃん」

「よくないよ! お陰で僕のエンジェルも……」


バルの話を遮るように激しい爆発音が響き渡り、目印にしていた大きなモミの樹が爆炎に包まれた。


「自爆させたよ。さすがにあのままエンジェルを放置しておくわけにはいかないからね」

「ナイス判断」


 エンジェルには動力である精霊石を暴発させる自爆装置が搭載されている。

 軍用兵器であるエンジェルには様々な軍事技術や情報が記録されているため、敵に鹵獲されて情報が渡らない用、脱出する際は自爆することが推奨される。

 装置を起動させてから自爆するまである程度の時間があるため、一応はその間にコクピットから脱出するというのがこの装置の本来の使い方なのだが、敵味方入り乱れての激しい戦闘が行われている場所では、エンジェルから安全に降りるというのはかなり難しい。

お読みいただきありがとうございました。

感想をいただけますと今後の励みになります。

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