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第二十一話 市街戦

お読みいただきありがとうございます。

下記HPにネタバレ込みのあらすじ(約一万字)を掲載しています。

興味を持っていただけましたら、是非一度お目通しいただければ幸いです。


https://ncode.syosetu.com/n9080jj/

 コクピットの中にさえ響く大声を上げてヴローム砦のエンジェル工房長セムが怒鳴り返してきた。

 頑固一徹、エンジェルを傷つけて帰投しようものなら「未熟者が!」と怒鳴り散らしながら拳骨を振り下ろしてくるようなパワハラ親父である。

 俺も自機エンジェルを手荒に扱ってどれだけ叱られたことか。


「またけったいな代物に乗りやがってるな。どこでそんなエンジェル見つけやがったんだ?」

「あー話せば長いんだが、そいつはとりあえず置いておいて今は状況を知りたい。戦況はどうなんだ?」

「なんだお前、通信で聞いてないのか。1時間ほど前に帝国から夜襲を受けてな。東門と防衛設備、エンジェルの大半がやられちまったよ。俺たちは司令官殿の指示に従って住民たちをシューデルデイッヒに退避させているところだ」


 状況は俺たちのほぼ想定どおりだったようだ。

 不意を突かれた砦の駐留軍は壊滅し、もはやこちらの立て直しは不可能といっていいだろう。


「了解した。では俺たちも皆の退避の手伝いに……」

「アーベル、四時方向から敵機の接近を感知。……この速度だと凡そ百秒後に接敵。数は十…十一、いや十二だ」


 俺の言葉はバルの緊迫した声に遮られた。

 どうやら砦に入ったナフタリが帝国側に感知されたらしい。

 今度は先ほどの小隊の倍以上の数のエンジェルが向かってくるようだ。


「敵機は俺たちがひきつけるから、おやっさんたちは早くここから離れてくれ」

「お、おい、お前さん一機で相手をするつもりか。いくらなんでも無茶が過ぎるぞ……」

「いいから早く!」


 工房長たちはこいつの性能を見ていないから分からないだろうが、先ほどの手ごたえからして十機程度が相手ならナフタリ一機で十二分に対応できる。

 むしろ困るのはここで非戦闘員が残られて、万が一にも巻き添えを食わせないよう俺たちが気を配らなければならない事態だ。

 レーダーの反応からして、帝国のエンジェルたちは砦の東から市街地を抜けてこちらに向かってきているのだろう。

 人がいない市街地ならば建物を障害物として使うこともできる。

 俺は市街地を戦場として利用する案をバルに告げた。


「バル、市街地で連中を迎え撃つ。何か策とか案あるか?」

「……いきなりだね。でも、選択は悪くないと思う。門の外みたいに開けた場所で大勢を相手にすると袋叩きに合うからね。市街地なら障害物を利用することで一体少数を狙うことも不可能じゃない。さっき説明できなかったナフタリに内蔵されている武装がもう一つあるんだけど、ここで使ってみるかい?」

「手段を選んでる状況じゃないからな。使えるものは全部使う。どんなのがあるんだ?」


 彼我兵力差は現時点で一対十二以上。

 しかも敵はまだまだ全戦力ではない。

 ある程度の数を蹴散らして砦の非戦闘員が全員離脱したら、俺たちもなるはやでここから離れるべきだろう。

 それまではとれる手段を全て使って、この場を乗り切るしかない。

 西門から市街地に向けてナフタリを移動させる俺にバルは予想外な答えを伝えてきた。


「ビーム砲」

「はぁ!? んな便利なものがあるならさっさと教えろよ。楽できたじゃねぇか!」

「いや、ちょっとこのビームは変わった使い方をするから、実戦でいきなり投入するのはきついかなぁと思っていたんだよ。でもアーベルは操縦センスあるから、なんとかできるかもしれないね」

「おだてても何もでねぇぞ」


 世辞でもなんでも相棒から褒めてもらえるのは悪くない気分だ。

 バルの奴、俺を乗せるのまで上手くなってやがる。


「まさか。君にお追従なんて必要ないだろ。偽らざる僕の本心だよ。……よし、お誂え向きに三時方向からシールドとカップが接近してきるからそれをターゲットにしよう」

「了解。で、どこの部位にビーム砲がついてるんだ?」

「肩だよ。正確にいえば肩部にとりつけられているアクティブアーマー。可動式の翼がビーム砲も兼ねているんだって」

「これ高速移動時のバランサー用の翼じゃないのかよ?」

「飛行時はスラスターの安定用に、戦闘時は武器として取り扱うらしい。とりあえず翼を動かして敵の方向に先端を向けるイメージをして。あとはビーム砲を放てばいいらしい」

「ビーム砲を放つイメージってどんなのだよ!?」


 ビームは最近開発された、使用者の魔力を純粋な破壊力に置換し、閃光という形状に具現化して放つ魔法攻撃だ。

 装甲など物理的な防御力を無視して標的を破壊する強力な攻撃方法だが、使用するのに必要な魔力出量が半端でなく高いため、高出力のジェネレイターを搭載した機体のみが使用できる。

 当然一般的なエンジェルしか操縦したことのない俺がそのような特殊な兵装を取り扱ったことなどあるはずもない。

 さすがに一度も見たこともないものをイメージするのは無理がある。


「さっき見たアークエンジェルのビームをイメージしてみるのはどう?」

「ああ、あれかぁ。あれなら、まぁなんとか……なるか? とりあえずやってみる」


 結構な無茶ぶりのようにも思えるが、とりあえずやってみるしかない。

 市街地に入ったナフタリに、まずはシールドとカップが迫ってくる。

 俺がイメージを伝えるとナフタリの右肩のアクティブアーマーがグルリと九十度前方に回転し、エネルギーの力場を発生させた。

 それはあのアークエンジェルが放っていたビームよりも、はるかに大きな光だった。

 射出された魔力は文字通り閃光となってシールドが構えていた盾を直撃し、それを融解させてシールドの本体ごと貫くと、その後ろに控えていたカップの機体も貫いていった。

 圧倒的な火力である。

お読みいただきありがとうございました。

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