第一話 急襲
お読みいただきありがとうございます。
下記HPにネタバレ込みのあらすじ(約一万字)を掲載しています。
興味を持っていただけましたら、是非一度お目通しいただければ幸いです。
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「くそ、振り切れない……!」
俺はコクピットの中で舌打ちをした。
砦まであと少しだというのに、追跡してきているエンジェルの飛行速度が速すぎて振り切れない。
砦に向けて敗走する俺たちの機体を後から追跡しているエンジェルは、こちらより確実に飛行速度が速い。
振り切ることは難しい。
それにしてもこの速度。
新型のエンジェルと見るべきか、あるいは……。
「アークエンジェルかもしれないね、あの性能は」
「……マジかよ! 通常のエンジェルじゃどうしようもないぞ」
通信機から流れてきた親友にして家臣バルトロメオ・ディアス、通称バルの言葉を聞いて、俺は愕然とした。
「その通りだよね、アーベル。アークエンジェル級が出張っているとしたら僕たちに勝ち目はない。とにかく全力で逃げるしかないよね。……飛ばそう!」
「無茶言うなよバル。もう速度が限界だぜ……うわぁ!」
右後方より激しい爆音が上がり、俺の機体が激しい衝撃で揺らされた。
闇夜を切り裂く閃光が走り、僚機が四散する姿がモニターに映し出される。
「五番機大破! アハズがやられた……!」
「くそったれ! 馬鹿げた火力してやがる!」
通信機から隊の仲間たちの悲鳴が聞こえてくる。
後方から俺たちの機体を追っている機体から極太の閃光、魔力を圧縮したビームだろう、が打ち出されているがその威力が半端ない。
高さ十八メートル、武装等を入れた全重量は二十二トンに及ぶ人型起動兵器“エンジェル”がたったの一撃で消し飛ばされる威力など、俺の記憶の中では戦艦に搭載されているビーム砲以外にない。
エンジェルが扱える携帯火器を遥かに凌ぐ威力の武器を連発できるのだから、敵はバルの指摘どおりエンジェルの数倍の出力を誇る“アークエンジェル“と見て間違いないだろう。
そんな化け物クラスの機体に追跡され、後方から狙い撃ちにされているこの状況はまさに絶体絶命といっていいだろう。
しかし抵抗もせずに受け入れるつもりはない。
「各機散れ! 固まっていると狙い撃ちにされるぞ!! 一機でもいい、生きてこの事を砦に伝えるんだ!!」
「「「了解!」」」
小隊長の命令を受けて散会しながら、俺たちは絶望的な逃避行が始まった。
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