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1章 35話「解決策」




「やめなさい!」


 その声に、グリーゼオはハッと我に返った。彼らを囲う水も弾けるように消え、床に落とされた男子たちは一気に酸素を吸い込みながら咳き込んでいた。


「一体何事ですか!?」


 誰かが呼んだのか、数名の先生たちが階段の上で倒れる男子たちへと駆け寄った。

 だがグリーゼオには彼らの安否などどうでもよかった。


「先生! ノアを、ノアを早く助けてください!」

「ノアールさん……どうしたんですか!?」


 グリーゼオはノアールが強い光を間近で見たせいで目を負傷していること、階段から落ちたことを話した。

 先生は急いでノアールを抱きかかえ、グリーゼオと共に医務室へと向かった。


――――

――



「事情は分かりました」


 応急処置を済ませ、ベッドで眠るノアール。その目には包帯が巻かれ、その姿は見ているだけで痛々しい。

 グリーゼオと、別室で処置を受ける男子二人、そして周囲で様子を見ていた生徒たちから話を聞き、大体のことを把握できた。

 先生はノアールの手を握ったまま動かないグリーゼオの肩にそっと手を置く。


「グリーゼオ君。今回のこと、確かに彼らのしたことは間違っています。ですが、君もやりすぎでした。あれでは、彼らの命を奪っていたかもしれないんですよ」

「……おれは、それでもいいと思いました」

「なっ……」

「今でも、少し残念だったなって……ノアはこんなに傷付いてるのに、アイツらだけ無傷なんておかしいじゃないですか……」


 何の迷いも、震えもない声でそう言うグリーゼオに、先生は背筋が震えた。

 ここでどんな言葉を掛けるのが正しいのか、分からない。先生として彼の行いを注意しなければいけないのに、いま彼に何を言っても無意味だと、頭が勝手に諦めてしまう。


「失礼します」


 先生が言葉に詰まっていると、トントンとドアがノックされた。

 どうぞ、と声を掛けると、カイラスと共にノアールの父、ルーフスが医務室へとやってきた。


「ディセンヴィオ公爵……!」

「息子から連絡を受けまして……事情の方は大体把握しています」

「そうでしたか……今回は、誠に申し訳ございません……娘さんをお守りすることが出来ず……」

「いえ、先生方を責める気はありません。先生が守らなければいけないのは、ノアール一人ではありませんからね」


 頭を下げる先生に、ルーフスは冷静に答えた。

 先生にとって、ノアールは生徒の一人だ。事情があるとはいえ、彼女ばかり特別扱いする訳にはいかない。


「……ですが、もうノアールをこの学園に通わせることはできません」

「そ、それは……」

「私は親として、娘を守らなければいけない。先生も、生徒たちを守らなければいけない。だったら、もう解決策は一つでしょう」


 他に出せる提案もない。先生は申し訳なさそうに首を縦に振ることしか出来なかった。


「ノアールは転校させます」




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