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1章 30話「古代魔法」




「付きましたよ」


 御者が馬を止め、二人は荷台から降りる。

 二時間程度で迎えに来ると約束し、御者は一度屋敷へと戻った。


「さてと、じゃあ父さんの部屋行くか」

「うん」

「先に部屋行っててくれ。おれ、着替えちゃうからさ」

「わかった。奥の部屋だったよね」

「おう」


 家に入り、ノアールはグリーゼオの父の部屋へと向かった。

 遅くまでグリーゼオが本を読んでいたこともあって少しだけ散らかっているが、それでもノアールの部屋よりずっと片付いている。


「……たくさん調べてくれているんだな……」


 床に置かれた本を手に取り、ノアールは口元を緩ませた。

 分からない文字を調べるためにずっと手に持っていたと思われる辞書は何度も捲っていたせいか紙の端が所々縒れている。


「これは、古い魔法のことが書かれてるのかな」

「ああ、それはこの間掃除したときに奥の方から出てきたんだ」

「うわっ! もう着替え終わったの?」

「なんだよ、そんな驚くことか。それより、おれここが気になったんだよ」


 グリーゼオはノアールの持つ本を取って、パラパラとページを捲った。


「ああ、これ」

「……古代魔法?」

「そう。昔は呪文……詠唱魔法を使ってたみたいなんだよ」

「詠唱……言葉、詩を唱えて使う魔法だよね」

「そう。今は自分の意志で魔力を操って魔法を使用するけど、昔は呪文を用いていたんだ。そうすることで魔力を制御してた。まぁ呪文を覚えたり色々と制約もあるけど、呪文を使う方が安定するっぽいんだよ」

「……うん、うん。確かに今の魔法よりも制限は増えるけど、呪文、言霊によって魔力を引き出すのは難しいことじゃないかも」


 ノアールもグリーゼオと同じページを見ながら、首を振った。

 現代魔法は昔よりもずっと魔法を使う人口が増えたことで研究も進み、呪文を使用しなくても魔法を使うことが出来るようになった。

 それにより詠唱魔法は古いものとして誰も使わなくなってしまった。詠唱魔法は呪文を使用するには普通に魔法を使うよりも強い精神力と想像力が必要になり、呪文に使用する言葉の意味を深く理解しなければいけない。しかしノアールなら、前世のこともあり知識は十分にある。自分で発動するよりも、言葉によって引き出す詠唱魔法であれば、今の状態でも魔法を使うことが出来るかもしれない。


「色々と調べて、実際に使えるかどうかやってみないことには分からないけど……どうだ?」

「うん、私ももっと調べてみるよ。面白そうだし!」

「よかった。あの黒い炎に関して調べてたら、このこと見つけてさ……もう少し詳しく調べてから話そうと思ってたんだけど、おれ一人じゃ分からないことの方が多くてさ」

「ううん、十分だよ! 私、嬉しいよ!」

「ノア……」


 ノアールはグリーゼオの手を握り締めた。

 こんなにも自分のことに熱心になってくれる相手が、家族以外にいてくれることに感謝以外の言葉が出てこない。


「あ、あのねゼオ」

「うん?」

「その、嬉しいけど無理はしないでね? 私、ゼオに何かあったら嫌だよ」

「はは、大丈夫だよ。むしろ無茶するのはお前だろ」

「で、でも……前みたいに大怪我するようなことがあったら……」

「あれは、お前のせいじゃないだろ。てゆうか、ああいうことがなにように調べてるんだって。おれもお前も、普通に平和に暮らせるようにさ」

「うん……そうだね、ありがとう、ゼオ」

「おう。じゃあ迎えが来るまで、もう少し調べるか」

「うん!」


 二人は同じ本を一緒に読みながら、互いに色々と意見をぶつけ合った。




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