38 亜麻奈との戦い_1年目5月18日
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いきなり戦えと言われても素人の俺には何もできない。
現実逃避ではないが、試験環境の設計を唯留美と一緒に行っている。
最近、西砂さんから色々な資料を見させられ意見を求めらることも
増え、戦いのことなどすっかり忘れて週末を迎えた。
亜麻奈さんも試験勉強を必死にしており戦いどころでなかったことも要因に
あるだろう。姫美に赤点を取るなと言われたことがかなり堪えているようだ。
土曜日、姫美が準備したのは立川市の泉市民体育館。
かなり昔からある設備だが、何度かリニューアルされており
綺麗な体育館だ。昔はよく姫美とプールにきたな。
そんな体育館だが、丸ごと一日借り切っているみたいだ。
『姫美、終日全館丸ごと借りなくてもよかったんじゃないか?』
『いいのよ。またリニューアルするそうだがら、その費用を
寄付すると言ったら向こうから借りてくださいと頼んできたわ』
やはり規模が違うな。俺だけでなく姫美も立川市が好きなため、
定期的に寄付を行っている。
ジャージに着替えた俺は第一体育室で準備体操をしていた。
そこに巫女服を着た亜麻奈さんがやってきた。手にはいつもの木刀を
持っている。
『巫女服似合ってるな。それが正装なのか?』
『はい。神威と戦うときはこの姿で戦います。この巫女服には神威の攻撃を
和らげる効力があります』
若葉家はかなり本気のようだ。そんなに俺に神鉄を使った武器を持たせたく
ないみたいだ。
『チョット、亜麻奈さん。先輩は丸腰にジャージなんだから。あなとも
英蘭のジャージに着替えてきなさい。破れたら私が新しいのを買ってあげる』
今日のギャラリーは先日決起会をしたメンバーだ。
その他にも姫美が用意した医者や看護師が数人と、八王子や青梅のような
雰囲気をまとった男がカメラを撮影している。
『唯留美、いいんだ。丸腰なのは俺の愛用の金属バットで亜麻奈さんの木刀で
うちあうと切断されてしまうからな。あのバットはそれなりに愛着があるから
今回持ってこなかった。服装は動きやすい服装はジャージしかないからな』
俺は準備体操を続けながら、唯留美に答えた。
『立川さん、ホントに丸腰で妹と戦うのですか?妹は一般人よりかなり
鍛えてます。それに神木刀を使用します。怪我をする前に負けを認めて
いただけませんか?』
『心配してくれてありがとう。でも大丈夫だ。本当にヤバかったら
棄権するよ』
『では、これから達人と亜麻奈さんの試合を始めます。殺し合いではないので
致命傷になるような攻撃をしたら負けとします。審判は八王子がします。
ではお互い準備してください』
『ショワ、危ないから姫美の近くにいろ』
『あんな小娘に負けたら許さないんだから』
ショワはそう言って、姫美に向かって飛んでいった。
俺と亜麻奈さんは、第一体育館の真ん中で向かい合った。
180cmある俺と向かい合っても少し低いぐらいだ。亜麻奈さんの身長は170cmを
超えているだろう。だから生足が目立ってたんだよ。
俺は試合前にそんな事を考えていた。十分余裕があるな。
『では開始してください』
八王子の合図後、亜麻奈さんが突っ込んできた。
どうやら短期決戦を狙っているようだ。
俺は防御と念じ、両手を顔の前に構えた。
亜麻奈さんの攻撃はかなり早いが目で追えないことはない。
神木刀の攻撃を俺は構えた腕で受け止めた。
「カキンッ」
腕で受け止めたとは思えない乾いた音が響いた。
攻撃をした亜麻奈さんだけでなく、姫美とショワ以外の見ている
みんな驚いているようだ。
そうだよな。普通に剣道経験者に木刀で叩かれたら腕なんですぐに
折れるよな。
気を取り直した亜麻奈さんは、ダンゴムシにしたように
連続攻撃を行ってきた。俺はそれを全て腕で受け止めた。
「カキンッ、カキンッ、カキンッ・・・」
『どうなっているの?立川さんは腕に何か仕込んでいるの?』
『達人は何も仕込んでいないわ。自分の腕で亜麻奈さんの攻撃を
受け止めているのよ』
『そんな信じられない。妹の神木刀の攻撃は鉄だって切断します。
それを腕で何度も受けるなんて』
これにはカラクリがある。俺はダンゴムシを倒してスキルと
ステータスを奪った。ダンゴムシは丸まった状態なら
亜麻奈さんの攻撃を防ぎきっていたので俺も同じ事ができると
考えたのた。ただし、この防御スキルだがスキル発動中には
どうやら攻撃ができないようだ。
そのため、ダンゴムシと同じように攻撃を受け、亜麻奈さんが
疲れるのを待っている。
「はぁ、はぁ、はぁ」
5分以上全力で攻撃した亜麻奈さんはダンゴムシ戦と同じように
肩で息を始めた。
いまだ、俺は防御スキルを解除して亜麻奈さんにタックルをした。
対応できず亜麻奈さんは俺の下敷きになるように倒れた。
まるで押し倒しているような格好になっている。
『八王子、試合を止めなさい』
『八王子さん、試合を止めてください』
姫美と唯留美の両方の声が同時に第一体育館に響いた。
『えー、お嬢様の指示によりこの試合引き分けとします』
どうやら試合は引き分けで終わったようだ。