緩降下
ゆっくりと落ちる。
落ちる。
ゆっくりで、周りには心配されない。
心は焦り、手は震える。
どうしてこんな、
こんな。
掴みやすくするための手の汗が、私に刃向かう。
寒い。
熱い。
いや、寒い。
私は何だ?
分からない。
私は誰だ?
分からない。
私はどこだ?
分からない。
だけど足元が泥濘んで、前に進めないことが分かる。
息が苦しい。
身体が重い。
目の前は暗い。
何もかもが痛い。
せめて、薄くとも長く輝けるのなら。
せめて、短くとも世を瞬かせることができるなら。
嗚呼、せめて。