二話./レポートの続き/もう一人の部活メンバー/
「どうだ知茶子部長は凄いだろ?俺達が出来ない事を平然とやってのける」
俺がレポート1のファイルを読み終わり閉じると、縣がそう話しかけて来た
「縣君、褒め過ぎだよ、でも私だからこそ出来たんだろうね!」
「そうそうあの時の情報提供者に対しての全力の土下座はやばかったぞ!」
「土下座?」
「情報提供者がな、用が無いのに行くなんてと渋ってな、まあずっと会って
無かった人会うんだ、気まずいものが有ったんだろう、そこを知茶子部長が
土下座したんだ、そしてそれだけの誠意を見せられた相手は
渋々承諾してくれたんだ」
「そこまでするのか?」
「いやいや、それ以前にも他校の生徒や教師にぐいぐい聞きまくって
居たぞ、土下座くらい何とも無いんだろうな」
「凄い熱意だな、そこまでして」
「行きたい!亜夢君!私はどうしても異世界転移したいんだ!
そして魔王を倒し英雄になりたい!」
俺は改めて本当にやばい所へ入部したと思った
その後俺はレポート2を読み始めた
――――――――――――――――――――
ある学校にバレーボールの強いチームが有った、全国的に有名で厳しい
練習模様がテレビにも取り上げられていた、そしてその厳しい練習を乗り
越えて行く姿に周りは魅了されていた、そんなチームが最近最弱チーム
と言う噂になっている
この噂を持って来たのは部活内の同志の氷坂 天下だ
彼女の話はこうだ、強かったチームが突然弱くなった
これは強かった選手が異世界転移して
チームが弱くなった、と、天下推測したのだ
でも縣君はそれに反論する、もしその選手が異世界転移していれば
存在自体が消え、強かったチーム何て最初から無かった
と言う事になる、でも世界はこのチームを最近まで強かった、と言う認識を
共通認識している、だからこれは異世界転移とは関係ないんじゃないか?
多分その日腹でも下して調子でも悪かったんじゃね?、と言うのが
縣君の意見だ
縣君の言う事は最もだった、でも可能性は在ると私は思い
この件を調べる事を決行した、どんな小さな謎だったとしても
異世界転移に繋がる可能性があるなら調べてみる価値はある
それから私達はその学校へ潜入した、そして選手たちの練習風景を見た
するとテレビで見た時の様に壮絶な練習をしていた、汗をだらだら流し
練習していた
でも私は、何かが足りないようにも見えた、それが何なのかは
分からなかったが、調査を進めた、もしこの学校から生徒が居なくなって
いれば、教室内に不自然な空席があるはずだ
だから私達は生徒達に聞き込みをした、調べて数日後、不自然な空席を発見した
でも正直私は、これはただの空席では無いかと思った、何故なら
バレーボール部の練習量は凄まじく、この練習量で
最弱チームの筈がない、縣君の言う通りその日、本当に調子が
良くなかったのだろう
だが彼女らの練習試合を見て考えを改めさせられた、チームの連携が
全然取れてなかった
一人一人のポテンシャルは有るが、連携が素人目に見ても全然なってなかった
私はその時に思った、異世界転移した人物はチームのムードメーカー的な
存在だったのではないか?、そう思った私は俄然やる気が出た
それから数週間聞き込みをした、でも該当する者は見つからなかった
やはり私の勘違いだったのかと思い始めた頃、一つのテレビニュースを見た
それはローカルのニュースで、とんでもなく強い少年バレーボールチームの
特集だった、少年たちは言う、上手くなった理由は、コーチの厳しい
教えが有ったから此処まで強くなれたと、そして
そのコーチは世界的に有名な人でオリンピックでも活躍した選手だそうだ
そんな人がコーチをしていたら上達するのも頷ける、私はそう思った
でもニュースを見て行くと、オリンピックコーチはそこでずっとコーチを
していたと言う、だったらもっと有名になっている筈、此処に居る選手たちも
もっと注目されている筈、これは不自然と私は思った、話を聞いていた
取材班も不思議そうな声を洩らしていた、こんな有名な人が近くに居たのに
今まで知らなかったのかと、腑に落ちない様子だった
それから私は今まであった事を整理した、そして理解した
オリンピックコーチは元々強い高校のバレーボールチームのコーチをしていた
コーチをしていた理由は娘がバレーボールをやって居たのではないか
応援したい気持ちがあったからコーチを引き受けたのだ
でも娘と言う存在が無くなればその理由も無くなってしまう
でも此処で疑問が出てくる、学校のバレーボールチームの能力と練習量だ
あれはオリンピックコーチの教えだろう、学校のコーチになると
言う理由がないのに、接点が無いと言うのに、存在が消えた後も
それらは残っている
私は困惑した、でも此処で以外にも縣君が確信に近い事を言った
人の存在や記憶を消せるのは神様って奴だろ?でもそんな神様でも
簡単に消せるものと、中々消すのが難しいものが在るんじゃないか?
例えば多くの人に影響を与えた人とか?
それを聞いて私は一つの仮説に辿り着いた、存在や記憶を消せる範囲と
消せない範囲があるのではないかと、コーチの娘の存在や記憶を全て抹消すると
全世界で大変な影響が出てしまう、それこそ歴史が崩れてしまうほどの
影響が有るのかもしれない
だから学校の選手たちの能力は変わらなかった、練習量は恐らく無意識
日課にしていた程だから、あれが普通の練習量と思っているのだろう
我々はそれらの事が本当なのかを確かめるべく異世界転移したであろう
コーチの娘の家、それはコーチの家でも有る
我々はコーチのファンと言う理由で家に上がらせてもらった
そして家の中を探すと空き部屋を発見した
レポート1の時と同じ状況だ、コーチにこの部屋は何なのかと聞いた
コーチは少しの沈黙の後「なんだろ?」と首を傾げていた
次に子供は居ないのかと聞くと「子供?そう言えば作って来なかったな?
何でだろ?、子供好きなんだけどな?、今晩嫁に相談してみようかな……」
と話した、やはり不思議そうに首を傾げていた、そしてアルバムも
見させてもらった
そして不自然な写真たちがまた見つかった、これにもコーチは首を傾げていた
そうして今回も異世界転移した人物の痕跡を知る事が出来た
そして異世界転移した人の存在と記憶は消せない範囲が存在する事を
我々は知った
俺はレポート2のファイルを閉じた、そして不思議な気持ちになった
本当に異世界転移は実在するのではないか?と思わせる内容だった
そして俺はそのままレポート3のファイルを開いた
――――――――――――――――――――
ある墓地に不審な男性が現れると言う噂が有った
墓石も無い所で男性が呆然と立ち尽くしているそうだ
これはネットで拾った噂だ、この手の話はホラースポットのような物だ
ド定番で夜のお墓に、出る、と言う物だ、でもこの話は、朝方に現れ
夜になると居なくなると言う物だ、これは何か謎が有ると私は読み
調査を開始した
我々はそのお墓へ向かった、するとそこには男性が立って居た
墓石も無い所にだ、私は話しかけるのに少し躊躇した、でも
話しかけてみる事にした
すると男性はゆっくりとこちらに振り向き、こう聞いて来た
「……僕は此処で何をしているんだ?」
男性はそう言うと、向き直り元の場所を見た
私は少し怖くなってしまった、もしかしたらこの男性はこの世の物では
無いのでは?、と思った、でも私の好奇心はさらなる質問を求めていた
私は聞いた、貴方は何をしていると思っているんですか?と
すると男性は、今度は振り向かないで言った
「此処には大切な人が居た気がするんだ、この場所を見ていると
胸に……痛みが走るんだ、でもそれが何で起こるか……分からない
……分からないんだ……」
私はそれを聞き、異世界転移が関わっているかも知れないと真っ先に思った
でも記憶が無いまま苦しんでいると言うのが疑問だった
異世界転移した者が居れば、その人自身の記憶は消える、その筈だった
でも男性は今も苦しんでいた、これは初めてのケースだ
我々は苦しんでいる男性に、我々のこれまで経験した事を聞かせた方が
良いかも知れないと思った、信じて貰えるか分からないが、少しでも
感情の整理が出来たら、と言う思いがあったからだ
それから我々は男性の家に向かう事になった、男性は2LDKのマンションで
一人暮らしだった、そこで私はこれまでの活動を話した、男性は最初こそ
ぼんやりと聞いていたが、最後には真剣な顔になっていた
そして話を聞き終わった男性は、立ち上がり一つの部屋へ向かった
そこは空き部屋だった、男性は言う「僕には家族が居た可能性があるのか……
道理で一人暮らしで2LDK広すぎるって思ってたよ」
男性は涙声で言った、そして少し経った後こう切り出した
協力させて欲しいとの事だ、此処からは男性の名前を伏せずに書く
彼の名は冷染 儀礼
儀礼君も異世界転移したいと真剣に言った、異世界転移して大切な家族に
もう一度会いたいと、我々は快く儀礼君を仲間に入れた、でも儀礼君は社会人
な為、協力出来る時と出来ない時がある、でも出来るだけ協力してくれる
ことになった、遠出する時は車を出すと言ってくれた
そうして今回はこれで終わりだ、でもまだ謎は残っている
儀礼君の大切な人の記憶だ、居ないのにも拘らず感情だけは残っていた
此処からは推測だが
これまでの二つと違う点は、儀礼君の大切な人は亡くなったと言う事だ
だから儀礼君は毎日お墓参りをしていた、その後記憶が消えても
無意識に足が墓地に向かってしまうほどだ、習慣の様に染み込んだ
行動でもあったのだろう
これまでの二つと違うのは異世界転移方法の違いでは
無いだろうか、これまでの二つの恐らく異世界転移者の足元に突然魔法陣が
出現し異世界転移された、でも今回は一度亡くなって、異世界で
また生き返った、そうした場合の異世界転移だろう
方法は推測出来た、でも儀礼君の記憶は何故突然失ったのか?
神様側に何かしらの事情が有ったのだろうか?
こうして亜夢全てのレポートを読み終わった
「亜夢君!どうだい!良く書けていただろう!」
「……ああ……なんと言うか……凄い内容だった」
亜夢の内心では今、様々な感情が渦を巻いていた、最初、この部活は
相当にぶっ飛んだ部活だと思っていたが、真面目かつ真剣に部活動していた
異世界転移の理由はどうあれ此処に所属している人たちは全員真剣に
異世界転移したいと思っているのだ、でも亜夢はそんな大層な理由は無く
異世界に行きたいとはあまり思って居ない
そしてそこまで思考を重ねた亜夢はこう切り出した
「俺には荷が重い部活な気がする」
「いやいやそこまで深刻に悩まなくていいんだぞ?」
亜夢がそう切り出すと縣がそう言って来た
「けど俺、そこまで異世界転移とか興味ないし」
「いやそこまで本気にしなくても良いんだよ、俺も本当に異世界転移できる
何て、あんま思ってないしさ」
「ッ!?」
「なに!?」
「あ、縣そうだったのか!?」
上から蜜葉、知茶子、天下の順で各々驚いていた
「一般常識の有る奴は異世界転移出来るとか思って無いって
な!亜夢も俺と同じ志を持つ同士なら異世界転移なんて、ほぼほぼ無い
事くらい分かって居るだろう?、でも亜夢にはぜひ!異世界転移部に入部して
欲しい!、こんなイロモノ連中に囲まれている俺を一人にしないでくれ!
頼む!お願いだ!」
「縣!あたい達の事そんな風に思ってたのか!?、それに異世界転移が
無いって思ってるなら何でこの部活に所属してるんだ!?」
「それは知茶子部長に……今!部員は女子しか居ないんだ!
今!君のような男子が入ればきっとモテモテだぞ!って話を聞いて」
「なにそれ!?あたい達を狙ってるって事!?変態!」
「変態って?イロモノ女子に言われたくないなぁ、それに所属して直ぐに
狙うのはやめたよ、だってヤバい女子しか居なかったし」
「ならどうしてここに居るんだ?」
亜夢はそう質問した
「そうだな、学校生活の思い出作りみたいなものだな、こんな部活に
入っていればずっと、忘れない思い出になりそうだろ?それが理由だぜ!
だから亜夢もそんな重く感じないで楽しく燥ごうぜ!」
亜夢は縣からそう言われ、少しの沈黙の後、こう口にした
「……そうだな、学校の楽しい日常生活は終わったが、部活内での楽しい
思いで作りはまだ終わってないな、知茶子部長、俺をメンバーに
加えてくれないか?」
「何を言っているんだい?もう亜夢君はこの部活内のメンバーだよ!」
「そうだったな、じゃあ改めてよろしくな」
亜夢はそう挨拶した
「それにしても、よくこんな滅茶苦茶な部活を学校が認めてくれたな
反対はされなかったのか?」
「反対?反対はされなかったよ、だって申請はしていないからね!」
「ええ!?してないのか?それは大丈夫なのか?」
「いや大丈夫じゃないだろうな、でも知茶子部長ならこう」
「待て!私から言おう!もし見つかって追い出されたとしても!
部活メンバーが集まればその場が部室だ、それがもし外であっても
それは変わらない!だから心配する事は一切ない!」
滅茶苦茶な理屈だと亜夢は思ったが嫌いではなかった
それから亜夢と部活メンバーは調べものに時間を費やし
夕日が沈みそうになった頃、部活を終えた
調べた物は知茶子が選別し、次回何を調査するか発表してくれるそうだ
その後亜夢は帰り道を歩き家路に着いた
そして適当に出前を頼んで夕食を食べた、その時にふと昔の
記憶を呼び起こした
「……そう言えば、前の家で、二階の俺の部屋の隣って空き部屋
だったっけ……?……もしかしたら……」
亜夢はそうな事を思いながら夕食を食べ終えるのだった